スイミングの原理3:速く泳げるようになるための原理に基づいたトレーニング TIスイム創設者 テリー・ラクリン

 2016年11月10日
今回は、速く泳げるようになるための原理に基づいたアプローチの第3弾です。今回の投稿では、私が自分自身のトレーニングで使用した思考過程を紹介します。スピードは私の最優先事項ではありませんが、効率を図るために頻繁に取り入れています。

速さに関する5つの事実
原理に基づいたアプローチを理解するには、掘り下げて重要な事実を見極めることが大事です。そして、それを練習のガイドラインとします。TI泳法を導いた速さに関する重要な5つの事実は以下の通りです。

  1. 速さは次の方程式で求めることができます。速度=ストロークの長さ×ストローク率またはV = SL x SR (ストローク数とテンポからストロークの長さと率を割り出してください。)
  2. ストロークの長さは、この方程式の因数で、速度と証明された相関関係があるので、ここから始めるのが理想的です。(TIのグリーンゾーン表で、自分の身長に最も効率の良いストローク数が分かります。)
  3. ほとんどの人のストローク数は多過ぎるのですが、最も効率の良いストローク数で泳ぐには、かなりのスキルが必要になります。特に、抵抗力を最低限に抑える技術が必要です。
  4. 速く泳ぐために簡単で確実な方法は、ストローク数を維持しながら徐々にペースを上げていくことです。(テンポトレーナー を使うと正確に行えます。)
  5. 速度が上がるに伴い、抵抗も急激に増えます。(2倍の速さで泳ぐと、抵抗は4倍になります。)そこで、ストリームラインがとても重要になってきます。

シリーズの最初の投稿、スイミングの原理:もっと速く楽に泳ぐでは、速く泳ぐためにまずやるべきことは、今のペースのままでもっと楽に泳ぐことであると話しました。波や乱流を最低限に抑え、無駄なエネルギーと抵抗を減らして、ストローク数とペースをコントロールできるようにすることが大事です。

2回目の投稿、あなたもケイティ・レデッキーの様に泳げる!では、 習得可能なスキルは、スイミング史上における卓越したパフォーマンスのほとんどで重要であると話しました。ここでもう一度、レデッキー選手の抜きんでたスキルを紹介します。

  • 高効率のストローク数を保つ。フルスピードでもグリーンゾーン表の下端のストローク数を保っています。
  • 広範の距離や速度で一定のストローク数を保つ。
  • 高効率のストローク数を保ちながら、ストローク率/テンポを上げる。

テリーの研究トレーニング
私がスイミングのトレーニングで最優先に考えているのは、次の3つです。

  1. 心身共に健康である。
  2. スイミング以外のその日にやるべきことに対して心身共に元気である。
  3. 私のトレーニングを実験として使い、技術とトレーニングの両方において何が効果的かを見極める。

「テリーの研究トレーニング」という名前は、常に改善を目指すスイマーで、熱心なIronmanトライアスロン選手でもあるマイク・ブライアントさんが、自身の練習を「水の研究」と呼んでいるのに影響されて名付けたものです。このトレーニングで、私は常に上記3つを満たしています。

私は6か月後65歳になります。50年以上スイミングを続けていますが、自己ベストを出すことは現実的ではありません。しかし、年に数回改善プロジェクトを行うことによって、改善に対する情熱を保っています。(これもTIに熱心な、イギリス人のアンディ・ミラーさんから刺激を受けて始めたものです。)

改善プロジェクトには、以下の要素が含まれています。

  1. 明確な期間:私の場合は、30日から12週間でした。集中力が増すので、短い方が良いでしょう。期間は、練習の回数、練習の時間、またはカレンダーに沿って決めることができます。
  2. 計測可能な目標:目標は、初めのテスト、評価、泳ぎ、またはセットから設定します。その際、少なくとも、時間、ストローク数、テンポの中から2つの測定基準を使います。このテストスイミングを繰り返して(または、時々インターバルを使って)、プロジェクトを終了します。
  3. 改善プラン:テストセットからの情報を使って、練習の計画を立てます。各練習では、前に行ったテストスイムまたは練習での1つか2つの測定基準から、わずかに改善するように重点的に取り組みます。

アカウンタビリティ これはオプションですが、重要な要素です。アンディ・ミラーさんが、プロジェクト(21回の練習)で400mの自己ベストをどれだけ更新したかを、経過報告を含め、フォーラムで公表しました。自分の目標を公表すると、たとえそれが1人にでも、またはTIフォーラムのような場所で何千人が見るかもしれない場合でも、公表しない場合と比べて、気合いが入るものです。

私は自分の改善プロジェクトを、TI フォーラムの「Favorite Practices and Sets」という題目の所に毎回載せています。毎回最初のテストセットで5〜10%改善しています。歳や50年のスイミング経験、そしてこれらプロジェクトでの比較的少ないトレーニング量を考えても、この改善度は著しいものです。

私が得た一番大きな利益は、プロジェクト中に経験した「心が奮い立たされる感覚」です。プールや湖に行く度、私は練習の明確な目標と成功の評価基準を判っていました。私は一貫して目標を達成していたので、泳ぐ度に期待と興奮を感じていました。この達成感と満足感は、上に記した「速さに関する事実」に導かれた、原理に基づいたトレーニングから生じるものでした。

以下は、私の過去最近2回の改善プロジェクトの要約です。

テリーのスプリングプロジェクト
4月20日に、私は550ヤードx3(インターバル10分)のテストセットを始めました。550ヤードx3を選んだ理由は、合計が1650ヤードで、約1500mになるからです。この時私は、スイミングを7か月も中断していました。こんなに長く休んだことは、ここ何年もありませんでした。なので、この改善プロジェクトは、6月か7月の夏のオープンウォーターレースに向けて、いい準備になると思いました。

4月20日のテストセット
#1 テンポ 1.20秒/ストローク タイム8:31
#2 テンポ 1.17秒 タイム8:27
#3 テンポ 1.15秒 タイム8:25

3回の合計1650ヤードのタイムは25.23でした。

長い休みの後だったので、比較的ゆったりしたペースで泳ぎました。この程度のペースで泳げば、私の25ヤードグリーンゾーン表の上端であるストローク数16回を超えないだろうと予測しました。

タイムは予想通りでした。ストローク数14回を楽に保つことができました。その代わり、16回を超えないようにするために、かなりの集中力と自制心が必要でした。

その後2か月間、私は週に3回練習をしました。1回の平均距離は2000ヤードでした。わずかではありますが、毎回ストローク数またはテンポを、テストセットや前回の練習に比べて確実に改善するようにしました。

6月22日に、テストセットの550ヤードx3(インターバル10分)を行って、スプリングトレーニングを終了しました。このトレーニングで、私は初めてテンポトレーナーを使用しませんでした。その代わりに、ストローク数を比較の制御基準として使い、2か月前の基準テストと同様に、14回から始めて16回で終わるようにしました。

最終テストセット
#1 ストローク数 14〜15 タイム8:04
#2 ストローク数 15〜16 タイム7:46
#3 ストローク数 16 タイム7:45  (この550ヤードでは、足が攣るのを堪えていました。)

3回の合計1650ヤードのタイムは23.35まで縮みました。これは4月20日のタイムより7%速くなったことになり、それほどきついトレーニングではなかったにもかかわらず、とてもいい結果を得られたと思います。

テリーのサマープロジェクト
3日後、私はサマープロジェクトを始めました。50mのプールでの練習とミネワスカ湖でのオープンウォータースイムを組み合わせて行いました。この時は、スプリングプロジェクトとの一貫性を保つだめに、300m×5(インターバル6分)の1500mでの基準テストを選びました。短いセットを選んだのは、プロジェクトを始める時点で既にストロークも体調も整っていたのと、短い距離の方が早い進歩が見込めると思ったからです。

最初の300m×5セットでは、ストローク数40回で始め、(グリーンゾーン表での私の50mのストローク数は36〜44回です。)41回、42回へと増やすことにしました。同時に、ストロークの圧力も、羽の様に軽い力から、しっかりした力へと増やしていきました。

その日の私のタイムは、5:06、4:59、4:56、4:52、4:52で、合計の1500mで24:45でした。このセットでの平均テンポは1.13秒/ストロークでした。

平均ストローク数と1500mの合計タイムの2つの測定基準から、3つ目の主要基準であるテンポを、ある程度正確に計算することができました。この3つの基準を基に、プールとオープンウォーターでの練習を計画することにしました。

プールと湖の両方でのトレーニングは、スプリングプロジェクトのプールだけより、少し工夫を加えることができました。10〜14日おきに300m×5を繰り返して、間に6回のプールまたは湖での練習を入れるよう計画しました。私は経験から、プールでよりもオープンウォーターでの方が、速いテンポに調整しやすいことが判っていたので、1〜2週間後のプールで同じテンポで楽に効率よく泳げるように、湖でのテンポを上げることにしました。私の目標は、初めのストローク数に近い数を保ちながら、どれだけテンポを上げられるかというものでした。

プロジェクトの途中で、300m×5の主要基準を、ストローク数からテンポに変更しました。その理由は、私の最初の300mと最後の300mのタイムの差が大き過ぎたからです。300m毎にテンポを0.01秒ずつだけ上げて、最初と最後の差を縮め、1500mの合計タイムも速くするべきだと考えました。

この変更を行ってからも、300m毎の私のタイムは縮みましたが、一番速いタイムと一番遅いタイムの差の平均は、14秒から7秒になりました。これを行う上で大事なのは、テンポが上がるにつれて、ストローク数が増えるのを制御するということです。これは、かなりの集中力を要します。

9月6日、私は最後の300m×5(インターバル6分)のテストセットを行いました。最初は1.04秒/ストロークのテンポで始め、タイムは4:47でした。初めのテストでのどの300mよりも5秒以上速い結果でした。そして、最後の300mは0.98秒のテンポで4:39でした。

1500mの合計タイムは23:41で、10週間前より1:04秒(5%)速くなりました。この10週間、私の1回の練習の平均は、たったの2000mでした。
明確な調節をすることで、平均のテンポを1.13から1.00/ストロークに上げることができました。そして、平均ストローク数は41回から43回へと、2回増えただけでした。 テンポは13%上がった一方で、ストローク数は5%のみに抑えることができました。

つまり、スピードを数学の問題を解くようにして、私は1500mのペースを1分以上縮めたのです。

要約
両方の改善プロジェクトで、私が使用した原理に基づいたアプローチは以下の通りです。

  1. ストロークの長さ/ストローク数を主要基準として開始した。
  2. スピード改善のためにストローク数とペースを計算し、1m1m集中して泳いだ。そして、その日の自分のコンディションが1m1mに明確に現れた。
  3. コンディショニングのことは一切考えはしないが、フィットネスレベルは着実に上がった。私の神経系がさらに複雑なストローク数とテンポの組み合わせに適応するに従い、速くなると同時に、その瞬間に必要とすることに身体が適応した。
  4. 短い距離のトレーニングで、高度に集中し、正確に行うことによって、タイムをかなり縮めることができた。
  5. 毎回練習の後は、他の活動をするのに心身共に十分元気だった。
  6. 今回の投稿で紹介したように、高効率なトレーニングに関する、計り知れない教訓を得ることができた。

これらのフォーラムスレッドでは、私がどのように計画して、アプローチを調節したかの詳しいメモ、それに対する他のメンバーからの反応、質問、コメントをご覧いただけます。

 ©Easy Swimming Corporation