あなたもケイティ・レデッキーのように泳げる! TIスイム創設者 テリー・ラクリン

 2016年10月10日
6週間前からスイミングの原理をシリーズで紹介してきました。そして、毎週の投稿で、原理に基づいたスイミングの利点について説明してきました。 Paypal社、テスラ社、スペースX社の設立者であるエロン・ムスク氏がこう言っています。「原理に基づく考えの核となる概念は、従来の常識や枠組みに固執するのではなく、新しい目で問題の根幹を突き止めるものであるべきだ。」

従来の常識は大きい欠陥のある次の2つの考えに基づいているので、原理に基づく思考はスイミングでは特に大事です。

1.スイミングの基本動作は、水をかくこととキックをすることである。しかし、 船形をつくることの方が、有益で基礎的であることが証明されています。まず船型を習得してから、ほとんど全ての状況でさらに船型を意識します。そして、船型は原始的本能と私たちが直面するほとんどの影響に反していることを常に意識します。

2.自分のスイミングを上達させるには、一生懸命頑張るしかない。 しかし、実際がむしゃらに頑張ることは、無駄なエネルギー消費なのです。最も賢く効果的な方法は、無駄なエネルギーを減らすことなのです。ほとんどの平均的なスイマーは、これができていません。

今回と前回の投稿は、原理に基づくアプローチが最も重要である「速く泳ぐ」という、スイミングの側面の質問に答えたものです。コメントに記入されたこの質問を簡潔に要約すると、「速く泳ぎたかったら、疲れる覚悟が必要だ。汗一つかかずに速く泳げるようになるというのは、考えられない。」というものです。

従来の考えと私たちの本能によって、速く泳ぐには速く水をかくと思ってしまいます。ストロークを速くしたら、疲れが増し、辛くなります。つまり、速く泳ぐための従来の方法は、次の通りです。

  1. ストロークを速くする。
  2. トレーニング量を増やし、より努力して、疲労に対する抵抗力を強化する。
  3. 苦痛に耐える、または無視しながら頑張り続ける。

前回の投稿「もっと速く楽に泳ぐ 」 で、速く泳ぐための減法をいくつか紹介しました。無駄なエネルギーと抵抗を減らす、波や水しぶきを最小限に抑える、不規則なストローク数(ペース)を取り除く等です。

このポストでは、さらに掘り下げて、これらの減法を行った上で、さらにスピードを上達させる方法を紹介します。さらに、ストローク率の向上、心拍数の増加、酸素消費量の増加など、あなたのスイミングの代謝要求を増加させるスキルを習得する方法も紹介します。
大事なのは、「スピードトレーニングは汗をかくことを重視するのか?」あるいは、「速く泳ぐための基礎を深く探求し、重要なスキルを見極め、根気よくそれらを習得するか?」です。

これを理解するには、先月ロシアのカザンで行われたFINA世界選手権でのケイティ・レデッキーの歴史的パフォーマンスを例に挙げるのが最適です。彼女は、世界選手権で200、400、800、1500mの自由形で優勝した世界初のスイマーとなりました。世界記録も3つ樹立し、過去2年で10回世界記録を更新したことになります。

ある雑誌では、上記の世界選手権を終えた彼女を「現在世界一のアスリート」と呼んでいます。人間能力のエキスパートであるメイヨクリニックのマイケル・ジョイナー医師は、レデッキー選手の前例のない距離幅(200〜1500m)と世界記録の更新数を「最も卓越したパフォーマンスである」と言っています。

レデッキー選手が世界レベルの有酸素エンジンを持ち合わせているのは、疑いの余地はありません。しかし、泳いでいる時に酸素消費量を測るのはとても困難なので、彼女のフィットネスレベルを彼女のライバル達と比べて予測します。一方で、ストローク効率は正確に測定することができます。彼女のそれは、ライバル達よりはるかに上回っていました。

彼女の身体能力は得ることはできなくても、ストローク効率は誰にでも習得可能です。以下はレデッキー選手の勝利の要因です。

1.著しく少ないストローク数 1500mレースでの彼女の50mあたりのストローク数は38回でした。決勝に残った他の誰よりも少ない数で、準優勝のジェシカ・アッシュウッド選手より7回も少ないのです。身長はストロークの長さにおいて重要な要因ですが、もし2人が同じ効率で泳いでいた場合、172.5mのアッシュウッド選手の50mあたりのストローク数は、180pのレデッキー選手より1回だけ多い計算になります。

2.驚くほど一定したストローク数 1500mでは、 レース中90%が50mで38回と一定していました。200mでの平均ストローク数は39回で、1500mより1回多いのですが、100mあたりのペースは4秒も速かったのです。

3.プレッシャーの中でストロークを長くする 200mのレースでは、レデッキー選手は苦しい状況に追い込まれていました。最後の50mまで他の選手にリードされていたのです。一気に追い込むために、レデッキー選手はストローク数を直前の50mより2回減らしたのです。一方、銀メダリストのフェデリカ・ペレグリニ 選手(同じく180p)は、ストローク数が42から45に増え、銅メダリストのミッシー・フランクリン選手(185p)は40から43に増えました。

これらをあなたのスイミングにも適用することができます。

ステップ1:自分に最適のストローク数を知り、それを目標に練習する。
1500mでレデッキー選手は、各ストロークで自分の身長の65%の距離を進んでいます。(孫 楊選手が2012年オリンピックで、男子1500mの世界記録を破った時は、身長196pの70%の距離を各ストロークで進んでいました。)私たちのグリーンゾーン表(オンラインストアからフリーダウンロードできます。:米国TI )では、非エリートスイマーの、身長別の効率的なストローク数の範囲を表しています。身長の50%から始まっています。自分のストローク数と比べてみてください。

ストローク数が自分の身長の回数より上回っている場合は、エネルギーを「自分を前に動かすこと」ではなく、「水を動かすことに」使っていると考えられます。ストローク数を減らすには、次の事を試してみてください。

  • 抵抗を最低限に抑える 頭と背骨を一直線にします。腕の役目は、ボディラインを伸ばすことです。(さらに、水しぶきや泡を取り除きます。)脚の役目は、胴体の後ろに流すようにすることです。キックを減らして失敗することはありません。
  • テンポを遅くする テンポトレーナーを使って、自分の身長のストローク数範囲の最高数かそれ以下で25mを繰り返し泳げるようになるまでテンポを遅くします。次に、テンポをさらに0.05秒遅くして50mを泳ぎます。そのテンポ範囲内で、自分のグリーンゾーンの最低数で25mが泳げるようになるまで練習します。そして、100mから200mのセットを最高数かそれ以下で泳げるようにします。

ステップ2:ストローク数の一貫性を向上させる。
50mx4+100mx3+150mx2+200mx1を泳ぐ。1本泳いだら10〜30秒休む。ストローク数を数え、以下を評価する。

  1. 自分のグリーンゾーン以内のストローク数を保てたか。
  2. 50mx4から200mに伸ばした時のストローク数は、+3以内に抑えることができたか。(50mが18回だった場合、200mは21回以内)これができてないようであれば、ほとんどセットで両方できるようになるまでペースを落として練習します。これを習得すれば、一定のペースで泳ぐ感覚を身につけることができ、楽に速く泳ぐことへとつながります。

ステップ3:ストローク率を上げる。
ステップ1と2が上手くできるようになったら、テンポトレーナーを使って、ストローク数を保ちながらテンポを上げます。以下の例は、25ヤードでのグリーンゾーンが16〜19ストロークと想定しています。

25ヤードを16ストロークで楽に泳げるテンポを使います。25ヤード毎に0.01秒ずつテンポを上げていきます。16回を保ちながら、何回25ヤードを泳げるか試します。4回できればまあまあです。8回できたら素晴らしいです。自分のグリーンゾーン内のストローク数でこの練習を繰り返します。

ストローク数が上がれば、テンポも上がります。例えば、1.3〜1.24秒のテンポでストローク数を16回に保てれば、1.23〜1.18秒で17回を保てる可能性があります。
これらの練習は、レデッキー選手を世界一にしたスピードのスキルを向上させるのに役立ちます。


次回の投稿では、50mのプールとミネワスカ湖の400mのコースを使った10週間のサマートレーニングの紹介と、原理に基づいたトレーニングをどの様に使ってレデッキー選手のような技術を習得するかについて話します。

さらに、私がいつもセットの初めに、一番楽に目標を達成する方法を見つけようとしていた理由も説明させていただきます。

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