速度の公式によって目標を達成 TIスイム創設者 テリー・ラクリン

 2016年7月10日
今回は、実際にある女性が、どのようにTI原理アプローチを使って、スピードを向上することができるかを紹介します。

今月私はイギリスで、ワークショップとコーチトレーニングを2週間行う予定です。その間に、「220トライアスロンマガジン」の編集をされているヘレン・ウェブスターさんにも、TIコーチのトレーシー・バウマンさんのエンドレスプールを使用させてもらい、2時間ほどTI泳法を指導する予定です。

メダルを手に笑顔を見せるヘレンさん

私はヘレンさんに彼女のスイム歴について聞き、彼女の目標に合わせた必要項目または優先事項を確認しました。以下は彼女からの返事です。

「2年前『220マガジン』で働くことになる前は、泳いだことがなく、全くの初心者です。 数回レッスンを受けて自由形は泳げるようになり、今まで10回ほどトライアスロンに参加し、オープンウォーターで1500mまでは泳いでいます。ロクリンさんからアドバイスと指導を受けるのをとても楽しみにしています。私はそんなに速くはないかもしれませんが、スイミングが大好きで、熱意は十分にあります。

持久力には自信がありますが、最近伸び悩んでいます。2000mを大体55分で泳ぎますが、それ以上速く泳げるようにならないのです。週に4回、1時間泳いでますが、計画的なプランはなく、主に距離を泳いでいるだけなのです。

コーチから取り組みが必要な点についてフィードバックをいただいたのですが、どこから優先的に取り組んでいくべきか判らないのです。私の今の目標は、速く泳げるようになること、そして、夏に行われるディストリクト湖5kmレースを好タイムで泳ぎ切ることです。」

ヘレンさんは、数日前に彼女が参加した、Gabriel Lombriserさん指導によるトレーニングキャンプでの動画のリンクも送ってくれました。

私の返信
「あなたの水泳に対する熱意を、私も嬉しく思います。その熱意がもっと深まるように、私もお手伝いさせていただきます。リンクしていただいたあなたの動画を観て、あなたのフォームと横ばいになっている速度の公式を含む、貴重な情報と洞察を得ることができました。ここでの「公式」とは、1ストロークで進む距離とストロークの頻度が、あなたのペースを決めているということです。

動画では、全体の距離は映っていませんでしたが、25メートルでストローク36回と予測しました。2か所で10ストロークを計り、ストロークの頻度を割り出しました。両方とも0.83秒/ストロークでした。(ちなみに、オープンウォーター1500mレースでの 私のペースは、約10%遅い、0.95〜1.0秒/ストロークです。しかし、効率的なストロークを保つためのスキルを得るのに、何年もかかりました。)

動画を観る限りでは、あなたは風車のように腕を回しています。もう一度自分で動画を観てください。あなたの腕は、入水直後に伸びきっています。そして、直ぐに後ろに向かって水をかいています。あなたのストロークには、「伸び」の要素が見られません。 これは、初心者によくある傾向です。

理想的なストロークの長さは、TIのグリーンゾーン表で、25mでの効率的なストローク数を身長別に表示しているので、そこから長さを割り出すことができます。

TIの技術では、腕の一番大事な役割は、ボディラインを伸ばすこと、そして、先のとがったジェット機や新幹線のように、自分の前にある分子を分離させることです。これによって、著しく抵抗を減らすことができます。

すべての人間のスイマーに言えることですが、推進力の増加には限りがありますが、抵抗を減らすことのによる利点は限りなくあると言っても過言ではありません。

従って、「伸び」と「分離」を加えることによって、著しくストロークの効率性を高めることに焦点を当てていきましょう。まず、長くて、はるかに楽なストロークを実現するために不可欠な、バランスから取り組みましょう。」

ヘレンさんの返事
「今朝25mプールでストローク数を数えたのですが、あなたのおっしゃった通り、33〜36回でした。私の身長は1m70pなので、送っていただいたグリーンゾーン表によると、17〜21回のストローク数で25mを泳ぐのが理想的となっています。今の私と随分差があるのに驚きました。

私は風車のように腕を回していると言うことですが、どのように直していいのか全く分かりません。自分で間違った動作をしていると解っていても、腕の動かし方を変えるというのは、不意可能に感じてしまいます。」

私の返事
「理解していただけて良かったです。ストロークの効率を上げることによって、楽にスピードを上げることができます。ビデオでのあなたの泳ぎに速度の公式を適用します。速度=ストロークの長さx ストローク率( V = SL x SR)

壁をキックしてから3〜4秒グライドし、33ストロークのペースと0.83秒のテンポで25m泳ぐと、31秒になります。0.83秒/ストローク x 33ストローク数=27.4秒、それに壁キックの3.5秒を足して、計31秒です。

もし25m以上泳ぎ続ける場合、高いストローク率により疲れてしまい、ストロークが少し遅くなる上、ストローク数も36に上がってしまうのです。つまり、25mが37〜38ストローク数のペース、あるいは、100mが約2分30秒になります。この数字は、実際のあなたのトレーニングのペースに近いでしょうか?(このメッセージを受け取った後、ヘレンさんは100mのセットを行い、タイムを計ったところ、実際に最初の100mは2分30秒で、最終的に2分38秒まで落ちたそうです。)

TIの基礎である、バランス、体幹の安定、ストリームラインを改善することによって、ストローク数をグリーンゾーン表の数字まで持っていくことができれば、計算は次のように変わります。例えば、100mを2分で楽に継続して泳ぐことを最初の目標にしたとします。

上記の様に計算すると、グリーンゾーン表のあなた身長で最も多い21ストロークのペースで泳ぐと、テンポは1.24秒/ストロークでいいことになります。このリラックスしたテンポで泳ぐことで、かなり楽に感じると思います。そして結果的に、そのペースを疲れることなく維持できるようになります。100mで25秒速く泳げるということは、現在の2kmのタイム55分から8分縮めることができるということです。そして、練習を続けることで、次の2つのことが見込めます。

  1. 1.24秒のテンポを維持したまま、平均ストローク数が減る。ストローク数が1回減って20SPLになるだけで、100mのタイムがさらに4秒速くなります。
  2. または、ストローク数21で、テンポを1.14秒(1ストロークにつき0.10秒速くする)にすることでも上記と同じペースで泳げることになります。
    実際には、両方を少しずつ改善することになると思います。

最初のステップとして、高い効率性を確立させます。10〜20時間の練習で、20〜21SPLを楽に保てるようになるでしょう。冬の数か月間で新しいスキルを取得すれば、2kmを50分以内で泳げるようになる可能性は十分にあります。そして、あなたが目標とするディストリクト湖5qで、自信を持ってレースに臨むことができるでしょう。」

 ©Easy Swimming Corporation