2006年1月15日、トータル・イマージョンが開催する初めての水泳大会「新春スイムミート」が東京の辰巳で実施されました。競技種目は「5分泳」のみです。コーチを含む14名が参加し、5分間の距離やストローク数を競いました。水泳の競技で使われている時間だけでなく、距離やストローク数を測定することで、「速さ」と「効率」を両方を追究するトータル・イマージョンらしい大会になりました。
今になって告白しますが、当初は単純に5分間泳いだ距離だけで競うことを考えていました。ところがお客様のHさんから、「TIなんだから当然ストローク数も数えるんでしょ?」と練習会で質問されたのがきっかけで、ストローク数も数えることにしたのです。数え間違いのないように、通行人調査するときに使うカウンタをインターネットであわてて購入しました。

また当日コーチの永瀬さんから「ラップタイムも計測するんでしょ?」と聞かれて、深く考えずに「そうしましょう」と決めました。というわけで、ストローク数および時間を50メートル毎に計測することはもともと意図していなかったのですが、結果として非常に興味深い、貴重なデータを収集することができました。

●スイミングゴルフのスコア

当日辰巳のプールは3コースを借りていたので、2コースをレース用に、1コースをウォームアップ用に割り振り、2人1組で5分間泳いでもらうようにしました。1コースにつき時間計測と記入担当者1名、ストローク数計測者2名の3名がつき、泳者の後をついていくようにして50メートルごとの時間とストローク数を計測しました。普通の大会なら計測者はコースの後ろで構えているのですが、TIの大会では泳者について歩くところが大きく違います。

14名全員が泳ぎ終わり、着替えている間に距離、およびストローク数を集計しました。その時点では50メートルあたりの時間とストローク数を合計した「スイミングゴルフのスコア」により順位を決定しました。例えば50メートルを50秒で泳ぎ、かき数が50であれば50+50=100になります。スコアはおよそ80〜150におさまるため、ちょうどゴルフと同じような成績になります。結果は竹内がスコア76でトップ、2位が永瀬さんで80、3位がコーチ見習いのMさんの87でした。

下のグラフは私(竹内)の50メートル毎のストローク長と速度の関係、平均のテンポと速度の関係を示したものです。ストローク長と速度については、あきらかに速度の低下と共にストローク長も短くなっていることがわかります。最後の区間の平均速度はピークに比べて15%落ちていますが、ストローク長も14%低下しています。日々泳いでいるにもかかわらずバテ気味になっていることが明白ですね(言い方によっては先行逃げ切りと言えます)。

テンポと速度の関係をみると、250メートルから300メートルにかけてテンポが速くなっていて、これに従い平均速度が上がっています。ストローク長をみるとその区間ではその前の区間に比べてそれほどストロークの長さが落ちていないことから、テンポを上げてもストロークの長さが短くならず、結果として速度が上がっていることがわかります。私にとってはこの区間が速度と効率の両方を追究したもっとも良いラップといえるでしょう。

50メートル毎の速度・ストローク長と速度・テンポの関係(竹内)

●新しい概念:身長比ポイント

距離にしてもストローク数にしても、一般的には背の高い方が有利になります。そこで身長の差を取り除いて比較するために、身長比ポイントという概念を導入しました。身長比ポイントは次のように算出されます。

 身長比ポイント=(1秒間に進む距離の身長比)+(1かきで進む距離の身長比)

5分間の平均で算出し順序を決めると、スイミングゴルフでは4位だったKさんが154ポイントで2位に浮上し、1位の竹内との差は4ポイントにまで肉薄する結果となりました。また背の高いMさん(134ポイント)を抜いて西村さんが139ポイントで4位になるなど、女性陣の活躍が目立ちます。

自分で練習する場合、身長比ポイントを算出するには50メートル泳ぐのにかかる時間をa、かき数をb、身長をL(メートル)とすると、

身長比ポイント=(50/a+50/b)/L×100

で計算できます。50メートル50秒、50かき、身長が1.7メートルなら約118ポイントです。

●身長比ポイントを増やすには

前述の計算式において、a、bはいずれも分母にあります。従ってポイントを増やすには時間、かき数いずれも小さくなることが望ましいのですが、実際にはうまくいきません。かき数を減らそうとすれば時間がかかり、速く泳ごうとするとかき数が増えてしまいます。

ここで「テンポ」が重要になってきます。テンポを上げてもストローク数が同じであれば、テンポを上げた分だけ速く泳ぐことができます。また同じテンポでも、ストローク数を1つ減らすことができれば1かきの長さが伸びるだけでなく、1テンポ分時間が短くなる(=速くなる)ので、効率と速度を両立させることが可能になります。

まずは身長比ポイントで120を超えること(平均的な身長でスイミングゴルフスコア100を切ること)が一つの目標になります。そのためには今自分が泳いでいるときの標準的なテンポを把握し、そのテンポよりもまずゆっくりしたテンポで確実にストローク数を減らし、テンポを少しずつ(0.05秒)上げながらストローク数を維持するようにフォーカスして練習を行いましょう。テンポのコントロールには「テンポトレーナー」がお勧めです。

私自身は秋のスイムミートに向けて、今回Kさん(なんと99%)に負けてしまったストローク長身長比を伸ばすことが目標になりました。また効率を維持したままどこまで速度を上げることができるかも新たな課題となったので、バランスや姿勢などの基本ドリルから見直しています。

大会参加者による記念撮影

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