「歩く水泳」でいつもの泳ぎをより速くする イージー・スイミング・ファウンダー 竹内慎司
2019年11月10日
水泳についての解釈を変えて新しい動きを作って、それを記憶することで水泳は飛躍的に上達します。
今回は「いつもの泳ぎをより速くする方法」について説明しましょう。
○「速さ=力」という解釈を捨てる!
あなたは速く泳ぐために何をしていますか?
多くの人は速く泳ごうと思うと、「手に力を入れてかく」「足に力を入れて蹴る」ということをします。
でもちょっと待ってください。大人よりも筋力が明らかに劣るにもかかわらず、選手コースの小学生達は信じられない速さで泳ぐことができます。
筋力がある=速く泳げるということではなさそうですね。
それではラクに速く泳ぐためには何が必要なのでしょうか。
○ヒトがもっともラクに前に進む方法は「歩く」こと
答えはヒトの陸上の動きにあります。
ヒトが最もラクに進む方法は、「歩く」ことです。
つまり、ヒトが歩くための動きを水泳に置き換えれば、ラクに進むことができるし、そこそこ速くすることもできるわけです。
もちろん、もっと速く進みたければ「走る」動きをすればよいわけです。
それでは普段何気なく行っている「歩く」動きについて細かく見ていきましょう。
ヒトが歩くために行っていることは、次の3つです。
- 前傾する(重心を前に移動する):常に行う
- 片足で体重を支えて反対の足を地面から離して前に運ぶ(写真A)
(写真A) - 空中にある足を着地して体重を支えて、反対の足を地面から離して前に運ぶ(写真B、C)
(写真B)
(写真C)
・ゆっくり歩くとき
ゆっくり歩くときは、からだの前傾を抑えて立った姿勢になります。
また前に運ぶ足の移動距離を減らして、歩幅をやや小さくします。
前に出す足の移動距離が短いので、踏み込む足もそれほど力を入れなくなります。
歩くときのスピードを速くするときは、歩幅を大きくする(広げる)方法と、テンポを上げる(速くする)方法があります。
さらに速く歩きたいときは、テンポを上げられる範囲で歩幅を最大にします。
・歩幅を広げて速く歩く
からだの前傾を大きくします。
前に運ぶ足の移動距離を増やして、歩幅を大きくします。
前に運ぶ足の移動距離が伸びるので、踏み込む足の力も強くします。
・テンポを上げて速く歩く
からだの前傾を大きくします。
前に運ぶ足の移動距離を減らして、歩幅を小さくします。
移動距離が短くなった分、次の一歩を始めるタイミングを早くします。
タイミングを早める動きを繰り返すことで、歩くテンポを速くします。
つまり、
- からだ:常に前傾している
- 前足:前に出して着地する
- 後足:前足を前に出すときの支えにしている
ということになります。
○これまでの泳ぎ方を「歩き方」に変えると?
それでは「歩く」ように泳ぐためにはどうしたらよいでしょうか。
水中の手は地面を押す後足に相当します。
水上の手は前足に相当します。
これまでの泳ぎ方について、歩き方で解釈するとこうなります。
・キャッチアップクロール(両手を前で揃えてから手で水をかいて進むクロール)
- 両足を揃える。
- 片足で前に飛んで両足で着地する。
- 反対側の足で前に飛んで両足で着地する。
→ケンケンをやっているようで変ですね。
・カヤッククロール(水中の手をかきながら水上の手を同時に動かすクロール)
- 片足で地面を押しながらもう片方の足を後ろから前に動かして着地する。
- 着地した足で地面を押しながらもう片方の足を後ろから前に動かして着地する。
→一見まともそうですが、足を後ろから前に運ぶ動きを地面を踏む足の動きだけで行っていて、からだの前傾による重心移動を使っていません。からだを後ろに反らして歩いているような感じです。当然速く進めません。
○ラクに歩く方法を泳ぎに変える
それではラクに歩く方法を泳ぎに変えるには、どのようにすればよいでしょうか。
- 体重を前にかけながら、
- 水中の手を支えにして水上の手を前に運んで(写真X)、
- 入水場所では水上の手を自由落下して勢いを作って、
- 水中の手をてこにして入水した手を前に素早く伸ばす(写真Y,Z)。
(写真X)
(写真Y)
(写真Z)
・歩幅を広げたい=ストローク長を伸ばしたい
ストローク長を伸ばすとは、減速せずにグライド姿勢をより長い時間保つことです。
このためグライド姿勢を作る直前の動作で加速を上げる必要があります。
加速は、水中で手を伸ばす動作と、水中で手に水を当てててこにする動作の組合せで生まれます。
従って手を入水する場所は変えずに、水中の手をてこにしながら入水した手を素早く伸ばすことでストローク長を伸ばします。
・テンポを速くしたい
テンポとはクロールのそれぞれの動きの所要時間の集まりです。
テンポを速くするとは、動きの所要時間を短くすることです。
例えば、からだの回転角を小さくすれば、回転に係る所要時間が短くなります。
また手を水上に出す場所を前にすることでリカバリーの軌跡を短くすれば、リカバリーの所要時間が短くなります。
リカバリーの軌跡を低くしても、リカバリーの所要時間が短くなります。
このように一つ一つの動作の時間を短くすることで、空回りを防ぎながらテンポを速くすることができます。
○ラクに泳ぎながら速くなる
体重を前にかけることで姿勢が水平になって、水の抵抗が減るのでスピードが上がります。
両手の動きのタイミングが合うと、入水する手を素早く前に伸ばすことができてスピードが上がります。
これらは筋肉の緊張とは無縁の世界で、ラクにいつまでも実施することができます。
このコンセプトに基づいて行われたレッスンの前後のスイムを比べてみましょう。
レッスン前は下半身が下がっていて、水中の手と水上の手の動きがバラバラです。いわゆる「かいて進むクロール」になっています。
レッスン後は驚くほど下半身が上がって姿勢が水平になっただけでなく、両手のタイミングが合ったことで「歩いている」ように見えます。その結果無理せずに泳げるスピードも30%以上上がっています。
ビデオへのリンク https://tiswim.vids.io/videos/709dd6ba1a1ce2c5f8/
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