2015年3月11日
トータル・イマージョン代表 竹内慎司
20kmを泳ぐロットネスト海峡横断水泳大会。2015年は、竹内TIジャパン代表がソロスイムで、吉田智江TIシニアコーチをリーダーとする4人のチームがチームスイムでチャレンジしました。私(竹内)は低温症のため15km地点で、またTIジャパンチームは時間切れのため18km地点で残念ながらリタイアとなりましたが、得るものは大きかったようです。みなさんお疲れ様でした。チームメンバーの森本さん、藤田さん、笹原さん、吉田さんにお話を伺いました。

○参加した動機について教えてください。
藤田:メールでチーム泳の誘いが来たときに、過去に参加して完泳しているのでもう一度楽しみたいと思い参加表明しました。私はトライアスロンをやっていますが、塩素アレルギーのためプールではあまり練習できません。鼻炎を気にせず泳げる海は本当に楽しいのです。
森本:過去にウルトラマラソンなどいろいろチャレンジしてきました。オープンウォータースイムとしてはグアムキャンプに頻繁に参加していましたが、昨年琵琶湖でチームスイムを体験し、また初島熱海横断泳で外洋を泳ぐことで、チームで泳ぐ楽しさ、外洋を泳ぐ楽しさを味わうことができました。ロットネストで自分の経験がどこまで活かせるか試したいと思いました。
笹原:オープンウォーターの大会参加経験がなく大変不安でしたが、これまでのTIスイム練習の成果が知りたくて思い切って申し込みました。
吉田:チームリーダーは責任が重いので、熟慮しました。これまで泳いだことのないオーストラリアの海で泳いでみたい、世界最大の大会に参加したい、船とカヤックの伴走泳もやってみたいと思い、参加を決めました。

○本番に向けてどのような練習をしましたか。
吉田:3人のタイムが1500mでそれぞれ35分を切る程度だったので、1500mを25分で泳げるように練習をしました。具体的には3000mをハードに泳いだり、1000mを20分で泳いだりします。レッスンがあり泳ぐ時間は週3回しかなかったので、泳げる日は複数回泳ぐようにして月80km、1月は100km泳ぎました。
笹原:ロットネスト共練プログラムのメニューを中心に練習しました。また10分を速く泳ぐ練習や、週1回は2000mを続けて泳ぐ練習をしました。
森本:普段と変わらず週6日7〜10kmを泳ぎました、集中力を養うために山登りも行いました。
藤田:プールではアレルギーがひどく、鼻栓をしないと泳げません。また年末は商売柄最も忙しいので、1回1.5kmを週1から2回泳ぎました。

○現地に着いて、最初に泳いだときの感想は。
吉田:普段の海と変わらないな、という印象でした。オーストラリアだから特別なわけでなく、普段通りの気持ちで大会を迎えることができると感じました。
藤田:前にも泳いでいたので、不安はありませんでした。むしろプールのアレルギーから解放されて、とても気持ち良かったです。
森本:到着日に久しぶりに海に入って緊張しましたが、呼吸を意識して力を入れないようにしました。吉田コーチからサイティングの新しいやり方を教えてもらったことで視野が広がり、明日行けるなと思いました。
笹原:最初パースに到着して海を見たときに、波が高く恐怖を感じて入ることができませんでした。翌日入りましたが、「明日この海で泳がなければならない」と思いプレッシャーを感じました。そこで吉田コーチと一緒にボビングした後に泳ぎ始めたら、リラックスできて気持ち良くなってきました。

○スタートからローテーション1回目
吉田:スタートは私が担当しました。300m地点でパドラーと出会うのですが、気にせず泳いでたら、いつのまにかキャミ(パドラーの名前)が側についてくれました。1500m地点の帆船に近づくまで船と出会うことができず少し心配しましたが、帆船の向こう側に停泊していることがわかり安心しました。チームメイトが甲板に立っているのが見えてとても頼もしかったです。実際は2km地点より先で交替しました。
藤田:海に入って吉田さんとタッチすることで、いよいよ始まったなという実感がわきました。最初のときと同じ気持ちでした。ただ前回と比べると、早い段階で波が高くなってきました。
笹原:藤田さんが泳いでいる間に準備をすることになっていましたが、相当緊張していたようです。海に入ったときにはハイテンションになっていて、初島熱海で経験したような恐怖や不安は感じず、「すぐに泳げる」心がまえができていました。泳ぎ終わって上がったときには、チームメートやクルーが盛り上げてくれてとてもうれしかったです。
森本:うねりが大きくていやだなと思いましたが、竹内さんが何を考えて一人で泳いでいるのかを想像し、このような状況で意識すべき点を意識して冷静に泳ぐことができました。カヤックとボートの向きが違うときがあり、どの方向に向かって泳げばよいかわからないときがありました。そのときは視野の広いサイティングを行い、他のボートの舳先の向きを確認してその向きに泳ぐようにしました。

○後半の大きな変化
吉田:私が20分、3人は各10分で6巡した12kmまでは順調に進んでいました。10km地点でカットオフ時間まで40分の貯金がありました。
12km過ぎよりうねりが大きくなり、不規則になりました。それまでのうねりにはリズムに乗ることができていたのですが、不規則になるにつれて体力を消耗するのがわかりました。また船から海に入ったときに冷たく感じるようになり、水温も明らかに下がっていきました。
7巡目の20分終了後に急激に船酔いになり、いくら補給しても嘔吐をくりかえして体力が衰えるのを感じました。そこで私が10分、藤田さんと森本さんが15分以上を泳ぐように変えました。
笹原:うねりが大きくなり、船もカヤックも見えなくなり不安になってきました。リカバリーの手の高さが低くなり、かろうじて前に動かすようになってきました。また斜め姿勢が維持できなくなり、うねりに対してからだの正面で受けとめるようになって、前に進まなくなりあおられるようになりました。
泳ぎがおかしいと思いながらも、泳ぎ続ける気持ちはありました。ただ見た目には疲れている状態だったらしく、1回パスすることを勧められました。そこでパスしたところ、やる気自体もなくって以降は泳げなくなりました。
森本:GPSでペースをチェックしていて、10km地点で40分の貯金があることは知っていました。ただ12km地点で流れが変わってきたことがわかりました。
前よりもさらに力を抜くようにしました。うねりは大きくなりましたが、その上下をジェットコースターのように楽しむようにしました。
思えば40分の貯金がなくなったことに気づくのが遅かったです。後ろに船がたくさんあり安心していましたが、10kmの制限時間でカットされて気づいたらいなくなったことを深刻に考えるべきでした。
藤田:吉田さんと笹原さんの体調が悪いことが目に見えてわかったので、森本さんと2人で泳ぐことを覚悟しました。しかしあと10何分で1kmを泳がなければならないとき、全然進まない状態でした。プールのときの1kmとは全く異なる状況でした。前回はぎりぎりゴールできましたが、ダメなこともあるんだと、終わった瞬間は愕然としました。他のスイマーがゆっくりゴールするのを見て、ゴールの下を通りたいと強く思いました。

次回に向けてみなさんが一致したのは、(1)オープンウォータースイム大会に参加し、経験を積むこと、(2)長い時間をスピードを維持して泳ぐこと、具体的には3kmを1時間で泳ぐことでした。特に男性陣は体力的には問題なく、まだまだ泳ぐ気満々だったのに制限時間でゴールできなかったことが残念なようでした。ラクに長く泳ぐだけでは完泳できない、オープンウォータースイムの難しさを皆さん実感できたと思います。次回はお互いゴール下で会いましょう!(竹内)

 ©Easy Swimming Corporation