2015年3月10日
トータル・イマージョン代表 竹内慎司
初めてのロットネスト海峡横断スイムは、7時間泳いで15km地点で低温症のためリタイアして終わった。

OWS大会経験2回(グアム8kmとサンタクルーズ3.2km)だけで参加したこと自体無謀だった。時計を見なければもっと泳げたかもしれなかったが、低温症の5つの徴候のうち4つに該当した段階で、「やめる勇気」という言葉を思い出してやめることにした。やめると言ったとき、パドラーのJoshも船長のDarrenも意外な顔をしていたが、その1時間前から限界は超えており、少なくともあと2時間半泳ぎ続けることはあの状態では不可能であった。

さてこれまで考えた理由を以下に挙げる。

1)低温への対応
もともと23度程度だったのが、10km以降さらに温度が下がったようである。補給のたびに手足や背中がしびれていたが、そのうち震えが止まらなくなった。

これまで6時間を考えていたがた、コンディションを問わず8時間はあの環境で耐えられるようにしなければならない。

2)うねりへの対応
1m近く感じるうねりに対して、どのように泳ぐかという技術が伴っていなかった。またうねりのスピードも非常に速く、しかもあらゆる方向から来るうねりに対して最小限のエネルギーで最大の推進力を得る技術を身につける必要がある。

参加した誰もが「あの海の状況はタフだった」と言い、船も転覆してチームスイムでもリタイアが続出したのは事実であるが、一方でソロスイマー297人の完泳率が88%を超えているのも事実である。つまりソロスイマーにとってうねりは問題でないのである。タイムも平均より20分遅い程度である。

3)まっすぐ泳ぐ
グアムではまっすぐ泳げても、うねりのある海では話が異なる。自分が流される方向を観察して、毎ストローク調整をしないとすぐに2〜3mはずれてしまう。スピードが速くてもこの技術がないと意味がない。

4)船とカヤックの意味を知る
カヤックに並行して泳ぐことができなかった。まっすぐ泳げないことやうねりで方向感覚が失われた。船の向き、カヤックの向き、一致していないときの他の船やカヤックの向きなど、ミクロとマクロの視野の両方を持つことが必要である。

5)軸の意識と斜め姿勢
レース前は足がつることによるリタイアが最大の懸案だったので、腰から下を完全にリラックスして泳いだ。結果として足はつらなかったが、体が平らになり軸が固定されていないのでうねりに負けていた。また腰の回転が使えず手がきになっていたことが、7時間しかもたなかった原因である。

うねりに強いスケーティング姿勢を作り、下半身を意識して軸を固めることが必要である。

6)補給の方法
水上で補給しようとして、大きいうねりで海水を飲むことが多数あった。水にしても薬にしても補給の方法を再検討する必要がある。

7)海酔いへの対応
酔い止めをかなり飲んでいたが、うねりと排気ガスは強烈である。うねりについては三半規管の水中の動きに慣れることで海酔いを抑えることができるので、今後練習する必要がある。

この他にもフォーム、リズム、テンポ、スイッチのタイミング、疲れてきたときの道具の使い方など様々な点で課題があった。今後はこれらの課題を解決しながら、2017年のロットネストで完泳を目指したい。

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