2014年10月10日
トータル・イマージョン代表 竹内慎司
ロットネスト海峡横断練習の一環として、海人くらぶさん主催の初島−熱海12km横断泳にTIスイマーの方達と共に参加した。

○初島と熱海を横断すること
初島−熱海横断は日本のマラソンスイム(10km以上)の元祖であり、公式大会(初島・熱海間団体競泳大会)は大正15年から開催されている。ただしこの公式大会は30組限定、3人が同時に4時間以内に泳がなくてはならないという厳しい条件のため、なかなか参加することができない。

そこで海人くらぶさんが地元の株式会社ソリクさんと提携し、一般の方(海人くらぶ会員)でも気軽に参加できるようにしたのが初島−熱海横断泳で、6年前よりスタートした。

運営の関係上数人で交互に泳ぐリレー泳が基本で、必要がある場合は途中でスイマーを引き上げて船で先に向かう。時間制限で途中棄権することなく最後は全員でゴールすることができ、これは非常に良いアイディアだと思った。

○天候
当初は台風16号やその影響による雨が心配されたが、結果としては気温27度の晴天で、絶好のOWS日和であった。ただし潮の影響が大きく、過去6回の中でも一番きつかったというのが運営チームリーダーである株式会社ソリクの八代さんのコメントであった。

○チーム
私がソロで泳ぎ、浅川さん、森本さん、市丸さん、笹原さんがチームで泳ぐという構成である。森本さんは琵琶湖18kmリレーに参加、市丸さんは湘南2.5kmに参加したばかりでOWSの感覚が維持できていたのかもしれない。常に私と誰かがシンクロして泳ぐというやり方で行った。

海人くらぶの大貫さんがマネージャーとなり乗船して頂いたので、非常に心強かった。また船一艘につきカヤックのライフガードが随行するので、コースアウトする心配もなく、ペースを保つことができた。

○12kmを泳ぐ
前半の30分は、うねりは大きいものの順調であった。ところがそこから1時間程度は潮の影響でスピードが3分の1〜4分の1となり、非常に厳しい状況になった。私は泳いでいて後ろも見なかったのでわからなかったが、船上の人たちは初島が全然遠ざからないのでかなり焦ったそうである。


GPSに基づく泳路(約11.3km)

(左から)浅川さん、笹原さん、市丸さん、竹内、森本さん

そこで体も冷えてきたのでソロだけで30分泳がせてもらった。このときは2マイルレースを想定したかなり速いペースで泳ぎ、この逆向きの潮の流れから脱出することができた。

ココス島往復で泳いだ2時間半を超えると、未知の領域である。チーム泳者も慣れてきたせいかテンポやスピードがアップしたので、ラクにシンクロすることができるようになった。シンクロのタイミング、船やカヤックとの適正な間隔への誘導、サイティングなどやることが忙しくて気を緩めることがなかった。

3時間を超えたあたりからわきの下が擦れて痛み出した。ボディグライドを塗っていたが、足りなかったようだ。途中の補給でお願いしようと思ったが、補給のときには忘れてしまい、後でひどくなった。

途中で2回足をつった。1回目はカヤックにリカバリーの手が当たったショックでつり、2回目は泳いでいて自然につった。顔を水につけて片手で足の指、もう片方の手でかかとを支え、足の角度を少しずつ変えて行くとふくらはぎのけいれんが治まる場所がある。その角度をでしばらく固定すると、泳げるようになる。これは新たな発見であった。

後半1時間半はかなりスピードダウンした感じである。一方チームの人たちは休憩十分、やる気満々なので引っ張ってもらうことが多かった。非常に助かった。

最後の10分程度は全員で泳ぎ、ビーチでゴールを迎えた。感動の一瞬であった。時間は私の到着時間で4時間58分であった。潮の流れが良ければ4時間半で行けたであろう。

○技術的な見地から

  • うねりへの対応:うねりの山に達したときに、からだがコマのように回転しやすくなる。方角が完全に変わってしまうので、その後にサイティングして方向を確認する必要がある。
  • 左側呼吸必須:船について泳ぐ場合、船の構造上右側で泳ぐことになる。船との間隔を維持するためには左側呼吸が必須である。苦手な左側呼吸をあまり使いたくなかったので、左側を見てから右で息継ぎしていたが無駄な動きが多く疲労の原因となった。口が水の中に入らない左側呼吸を練習する必要がある。
  • 頭が高い:船やカヤックとの間隔を確認するためにサイティングを頻繁に行ったが、頭の位置が戻らずそのままになっていた。ビデオを見るとかなり頭が高い状態である。サイティングの頻度を再検討する必要がある。
  • 乳酸がたまる?:後半は水抱え感が激減して、手がこんにゃく状態になった。これはランの足が棒になる状態と同じなのか、またその原因が乳酸なのかは今後の研究課題である。
  • 足のつりの防止:ほとんど足を使わなかったが、シューズを履いていたのが足つりの原因かもしれない。途中でシューズを早めに預ければよかった。また足を使わないことで足の位置が下がっていたことは実感していたが、足を上げようとすると足つりの原因になりそうだったので下がりっぱなしにしていた。体幹で引き上げる技術を磨く必要がある。

○泳いでみて
前日の説明会で、運営責任者の八代さんが「いろいろな人の協力がないと完泳できない」と最初に強調されていたが、まさにその通りだと完泳して強く感じた。小さなスイマーとの距離を維持しながら大きな船を操縦しなければならない船長の方達、休憩や補給もなく、濡れて冷えた体のままスイマーに辛抱強くつきそうライフガードの方達、状況を常に監視しながら、的確な指示を出すマネージャーの方達、そして今回一緒に頑張ったTIスイマーの仲間達、このような人たちが一体となってイベントが成立すること自体が、ものすごく貴重なものなのだと痛感した。

マラソンでもそうであったが、今回も泳ぎ終わったときに自分自身に対して何か特別な感情は起こることはなかった。むしろ運営をサポートしてくれている人たちの「おもてなしの心」に大変感動したのである。マラソンや遠泳大会、トライアスロンレースに参加する人たちがやみつきになるのも、大いに理解できるようになった。

なお当日夜から翌日にかけて、フルマラソンでも経験のなかった筋肉痛を体験した。手首、肘、肩、首、背中、腰、ふくらはぎとほぼ全身である。泳いで筋肉痛になったことはないが、計算すると2万ストロークは手足を動かしているので仕方ないのかもしれない。

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