2014年7月10日
トータル・イマージョン代表 竹内慎司
今年最初に決めたことは、肉体的、頭脳的に社会人生活で最もアクティブになることであった。そして
  • ランニングを始めて実質1ヶ月でハーフマラソンに出場し完走する。
  • 漢字検定準2級および2級に合格する。(今後のビジネス展開の準備)
  • DVDタイトルを8種類作成する。(あと4タイトルを年内に作成する)

まで実現することができた。そして昨日、

  • 長水路マスターズ大会に参加し、1500mフリースタイルで自己新を7年振りに出す(最終的には全米百傑に入る)

を達成することができた。今回は1500mを速く泳ぐために、この3ヶ月間で取り組んできたことについて整理する。

●2014年3月:24分38秒
前年はココス島往復泳があり、自分なりに泳ぎ込んでいたので5月、9月いずれのタイムトライアルでも24分を切ることができた。今年は約5ヶ月のブランクの後、泳ぎ始めたのが3月のグアムキャンプであり、スピード自体には期待できなかった。そこで、

  • オフの期間にズブの初心者としては走り込んだ(平均月150km)ので、体力は続くであろう。
  • これまで劣化率5%を目標にしていたが、スピードが遅いだろうから最初から飛ばす。
  • キャンプ中に得られた加速の道具3種類を使う。

という方針でタイムトライアルを実施した。結果は24分38秒で劣化率(最初にラップに対する平均のタイムの落ち方)は11.2%であった。100m毎のタイムと劣化率の推移を以下グラフに示す。

最初に43秒を出してからは、疲れと共にタイムが落ちて劣化しているのがわかる。また700mと1200mで中だるみが発生している。残り200mでは改善してはいるが、それでも10%を下回ることができなかった。陸上で得られた持久力は主に30分以上であり、水泳の練習には役に立っていたがタイムトライアルには単純には役立たないことがわかった。

●2014年6月:24分17秒
1週間の自己キャンプ、5日間のお客様とのスイムキャンプの後、グアム出発当日朝にタイムトライアルを行った。疲労はピークに達していたが、ランニング中に得られた充電理論を水泳に当てはめることを中心に以下のような戦略に絞って泳いだ。

  • 最初のラップは全力の70%で泳ぐ。
  • 以降のラップも80%程度までにする。
  • 3つの道具の配分はかたくなに守る(押す:15ストローク、撫でる:15ストローク、引っ掛ける:残り)。
  • 撫で方を「肘を高く維持して手首でスナップする」ように変えることで、撫でるときの肩の疲れを軽減する。
  • ストローク数が+1になったら次のラップはエネルギーをフル投入してストローク数を元に戻す。
  • 最後の200mはバッテリーを消耗しきるつもりで全力で泳ぐ。

充電理論を適用すると、ランニング同様非常にラクに泳ぐことができ、最後の200mは余裕で全力で泳ぐことができた。また泳いだ後もエネルギーが4割程度残っていて、使い損なった感じまでした。

結果は24分17秒で、3月に比べ20秒以上縮めることができた。最も大きいのは泳いだ後の感覚で、3月はエネルギー残り0に対して6月はエネルギー残り40%である。あまりにも余裕を持って泳いだので、当初は25分切れなかったと思ったが、実際は3月よりも速かったので驚いた。

平均劣化率は1.2%(過去最小)で、グラフで示すように減っているか変わらない状態がほとんどで、最後の200mでは大幅にスピードアップしている。慎重すぎた200mを除けばほぼ理想的な推移である。充電しながら泳げば、劣化しない泳ぎを長く続けることができることがわかった。

●2014年6月:22分58秒
4日前のグアムでの計測から、日本移動→米国帰国と忙しい合間を縫って大会に参加した。タイムトライアル後に泳げたのは3日間、それぞれ1500m程度である。

3月と6月のタイムトライアルの結果をふまえ、以下のような戦略を立てた。

  • 最初と次のラップは全力の8割で泳ぎ、ストローク数をみる。
  • そのときのストローク数から+2の範囲に収まるように、全力の7〜8割で泳ぐ。
  • ストローク数が+3になったら、全力でストローク数を戻す。
  • 残り200mと判断したら(ラップ数は自分で数えるしかない)、全力で泳ぐ。

実際には、

  • 最初のラップは飛び込みありで32ストロークであった。
  • 次のストロークは43であった。普段よりもテンポが速い(おそらく1.0秒)が、これはレースで予定通りの数であった。
  • 最初は一つとなりのコースのスイマーに追いつくべく泳いでいたが、やがて引き離された。500mあたりから隣のコースのスイマーに追い上げられたので、そちらを意識してストロークカウントを数ラップ飛ばしてしまった。結局こちらの劣化に伴い引き離された。
  • できるだけラップ数を数えていたが、ストローク数も数えるうちにわからなくなった。
  • 最後のラップでは鐘をならしてくれるのかと思ったが、あれはトップの人のみであった。トップとは50m差がついていて聞こえず、終わりとわかったのは前のスイマーが立ち上がったのが水中で見えた残り30mであった。この時点で100m数え間違えていた。

このように泳いでいる間は細かいところで想定外の連続であったが、道具を3種類、ストローク数を決めて泳ぐ点は8割守ることができた。またエネルギーの配分についても100mずれていたがほぼ予定通りであった。

結果は22分58秒で、7年前に日本のLDSS大会で出した自己ベスト23分13秒を15秒短縮することができたと同時に、「参加全大会自己ベストを出す」ことも続けることができた。

平均劣化率は15.3%であるが、これは最初飛び込みがあって40秒で泳いでいることが理由である。200m以降でみたときの劣化率は5.7%なので、一般的にがむしゃらに泳ぐ大会の泳ぎとしては悪くない結果である。しかしグラフで示すように200から500mまで、700から900mまで、1000から1300mまで3回の劣化局面が発生しており、充電理論が活かされていないことがわかる。

つまり4日前のように100mあたり6秒遅ければ充電できるのであるが、レースペースだと充電できない状態が続き体力勝負になっていることが考えられる。

●長水路22分30秒を目指すために
今後の課題が明確になった。一つは充電できる100mのペースを96秒から92秒、できれば90秒にまで短縮することである。ストローク数では4から6の削減であり、50mでは40ストロークで泳いで充電できればよいことになる。

もう一つはエネルギーを効率良く加速に変換する仕組みである。隣のスイマーに抜かされるときに、こちらも抜かされないようにと「頑張った」もののあっさり引き離された。体力的には余裕があったものの、力を入れて泳いでもスピードが上がらなかった。テンポ1.0秒、ストローク数40〜44で泳いでいるときに、エネルギーを投入するに従ってスピードが上昇する仕組みが必要である。

なおテンポを上げるというオプションもあるが、1500mを20分切って泳ぐ20分クラブメンバーは40ストローク以内で泳いでいることを考えると、テンポを上げずに加速する道具を身につけないと格好悪い。

結果として5日間で80秒短縮するだけでなく、自己ベストを出すことができた。劣化率、加速の道具箱、充電理論など様々なアイディアを駆使することで、7年前の「若い自分」に勝てたことが素直にうれしい。年をとると昔の自分にチャレンジしたくなるのは、私だけだろうか。

突出した一般の人たちの突出した泳ぎ方

今回のマスターズ大会参加は、自分の今後の泳ぎ方の方向を定めるうえで非常に貴重な経験であった。これまで速く泳ぐためには、
テンポを1.00秒から0.95秒と速くする。

  • 劣化率を5%以下にする。
  • 劣化率を下げるために道具箱の概念を取り入れる。
  • エネルギー配分を考えるために充電理論を取り入れる。

というように自分なりに組み立ててきた。そしてテンポ1.05秒で42ストローク、1.00秒で44ストロークを基準としてフォームを確立してきた。その成果として23分を切ることができた。

しかしさらに22分、21分の世界に入るためには、決定的に欠けているものがあった。それが今回の大会でわかった。

●1500m18分台は別世界の泳ぎ方
米国のマスターズ大会では通常遅い順にシードされ、速い人が一番最後のヒートで泳ぐことになる。例外は長距離で、1500mの場合は速い順にシードされる。従って一番最初のヒートが一番速いことになる。私は6番目のヒートだったので、速い人たちの泳ぎ方を十分研究することができた。

これまでのマスターズのレースを見ていると、一番速い人たち(最終ヒート)は泳ぎが大きく、静かに泳ぐものの、それ以前のヒートでは体力勝負、ぐるぐる手を回す人たちという印象を受けることが多かった。

しかし今回初めて1500mのレースを見る機会を得て、これまでのレースの泳ぎ方との違いに驚いた。2番目のヒートから見ていたが、ほとんどの人たちが静かに、大きく泳いでいるのである。

2番目のヒートでは結果として18分台〜20分台を出すスイマーが泳いでいた。彼らはテンポ0.95秒〜1.00秒というテンポで、36〜38ストロークでコンスタントに泳いでいるのである。私がテンポ1.00秒で基準とするストローク数は44なので、同じテンポで6〜8ストロークも少ない計算である。

最初はみんな身長が2m近くあるのではないかと思ったが、見た目は大きい印象がない(それでも175〜185cm程度)。そんな人たちが0.95秒のテンポで38ストロークで泳ぐのである。感覚的には25mのプールでテンポ0.95秒、12ストローク未満で泳ぐのと同じである。私のストローク効率は決して悪くないと思っているが、それよりも2割近く上回っていることには脱帽した。

●ストロークあたりの加速を上げてスピードを上げる
私のボディバランスは水平であり、彼らと水の抵抗において違いがあるわけではない。従って効率の差は全て推進力の差と考えることができる。6ビートを使ってキックの推進力で泳ぐパワフルな人もいたがそれは少数派で、ほとんど2ビートキックである。ということで

  • 手の水中での動かし方
  • エネルギーを速度向上に変換できる効率

の2点において私にカイゼンの余地があると仮説を立てた。これら技術を磨くことで、ストロークあたりの加速を上げてスピードを上げることを新たな目標とした。

今日の練習(骨折して3ヶ月ぶりに泳ぐ次男と合同練習)では、テンポ練習で上がり気味であったストローク数をまず見直し、12ストロークで継続して泳ぐために使う道具の整理を始めた。当面の目標はテンポ1.05秒で12ストローク(25ヤードプール)で泳ぐことである。

マスターズスイマーは現役の選手と異なり、普通のおじさん、おばさんである。しかし1500m長水路で18分台を出す人たちはこれまでのマスターズスイムの延長では想定できない泳ぎ方をしていることがわかった。こちらも技術的に飛躍しないと百傑には入れないということである。練習が再び楽しみになってきた。

竹内慎司TI代表のブログSwim Like Shinjiはこちら→

 ©Easy Swimming Corporation