2014年4月10日
TIスイム創設者 テリー・ラクリン

原稿作成:2012年6月
TIを始めて23年間(コルゲート大学で行った一番初めの成人向けTIレッスンは、1989年6月17日でした。)、今回の投稿は、今までで一番楽しく書くことができました。今週の初めに、竹内慎司が、オンライン動画で最も人気のあるスイマーとなりました。これを機に、彼がどのようにしてその感動的な美しい泳ぎを身につけるまでに至ったのか、その経緯を是非ファンの皆さんにお伝えしたいと思いました。

スイミングの上達だけでなく、自己実現を達成するための手段として、スイミングの練習を行うということも、TIの真の目的です。マイケル・フェルプスは、世界で最も優秀なコーチとして名の知れるボブ・ボウマンコーチの指導の下、世界で最も有名な競泳選手となりました。その一方、竹内は、最も美しい泳ぎをするスイマーとして世界に認められただけでなく、ここでも紹介しているように、世界一の独習スイマーであり、カイゼンの哲学を体現した人です。彼は、こう言っています。「私は今でも、日々改善を目指す、ただの中年のスイマーです。」彼の自己実現に対する姿勢は、彼のフォーム同様、とても素晴らしいものです。

注:下の写真は、私(左)と竹内(右)がエレウセラでのTIオープンウォーターキャンプに参加した時のもので、竹内のビデオがYouTubeにアップロードされる2ヶ月前に撮影されたものです。

テリー: スイミングを始めた理由と、どのようにトータルイマージョンを知ったのかを教えてください。

竹内: 2002年、37歳の時、私はまったく運動をしていなくて、かなり体重が増えたので、医者に運動するように言われたのがきっかけです。ほとんどの日本の子供がそうであるように、私も小学校で水泳を習ったので、体重を減らすために水泳を始めました。しかし、直ぐに飽きてしまったので、水泳では体重は減らせないと思いました。私はクロールよりも平泳ぎの方が長く泳げたので、ネットで平泳ぎの技術のビデオを探しました。その時トータルイマージョンのビデオで、平泳ぎとバタフライの両方を取り上げているのに気づきました。ひとつのビデオで2種類のストロークを習えるのがいいと思いました。これがTIとの最初の出合いでした。その時は、TIのWebサイトにはアクセスすらしませんでした。

テリー: 減量するために始めたTIスイミングを日本に紹介しようと思ったのはなぜですか?

竹内: DVDでまず平泳ぎのドリルを始めました。引き寄せやキックをしないで、バランスを取る練習をすることで、どうやって泳ぎがうまくなるのだろうかと思いました。しかし、1ヶ月もしない内に、平泳ぎもバタフライも前より楽に、スムーズに泳げるようになりました。さらに、エンジニアとして、TIの論理にも納得しました。どんどん上達することが楽しくなり、さらに頻繁に泳ぐようになったことで、いつのまにか体重が8キロ減っていました。たった$40のビデオで、これら全てのことを達成できてしまいました。

次に、クロールの練習を始めました。まったく新しいバランスのドリルでは、たくさん水を飲んでしまいましたが、私はこの時点で「バランスの信者」となっていたので、ドリルの練習を続けました。2ヶ月もすると、周りの人たちが、私のクロールを褒めてくれる様になりました。

そして、友人に教えることで、この方法を試してみました。「カンタン・クロール」DVD のバディーシステムの方法を使うことによって、とても簡単に教えることができました。 最初のレッスンの時、友人は25ヤード泳げませんでした。しかし、4回目のレッスンを終える頃には、ノンストップで40分間泳げるようになりました。TIが良い方法であるのは解っていましたが、これほどまでとは思っていませんでした。そして、2004年にTIのコーチ認定研修に参加し、TIを日本に紹介するに至りました。

スイミングは日本でとても人気があります。10,000以上のプールがあり、600人を超える人が定期的に泳いでいます。さらに、スイミングをする人の平均年齢は急速に上がっています。私は中高年のスイマーをターゲット市場として選び、「楽で美しい泳ぎ」を教えることを約束しました。

テリー: どのような過程でそのような美しい泳ぎを身につけたのか教えてください。

竹内: 私は最初のスイミングスタジオを、千葉に設けました。千葉には、私の両親が住んでおり、私のアパートもありました。エンドレスプールを設置し、水中と水面のビデオを撮るために、4つのカメラを取り付けました。自分の泳ぎを定期的に撮り、改善すべき点を探しました。自分のビデオとTIのDVDを見比べることはもちろんですが、人に教えることも技術を身につける上でとても役に立ちました。

TIジャパンでは、美しく泳ぐことを強調していたので、自分が世界で一番美しく泳ぐスイマーになることを目標としました。日本に行く度に、週に4日、1日に3〜4時間(大抵の場合10pm〜2am)は、エンドレスプールで練習しました。自分の泳ぎをビデオに撮り、フレーム毎に分析し、小さな修正をひとつずつ行いました。

エンドレスプールではなく、実際にプールで練習する時は、まず初めに30分以上ドリルを練習しました。ドリルの練習では、わずかな違いも感じることができたので、とても楽しんでできました。その後に、フォーカルポイントとストロークカウントを組み合わせたストロークの練習をしました。

全てのTIの生徒さんに教えるのと同じ過程(バランス→ストリームライン→推進力)で行いました。バランスを完成するまでに1年、ストリームラインにまた1年、そして、調和と推進力に2年かかりました。今でもこの3つの要素は改善し続けていると感じています。しかし今は、さらに美しく泳ぐことだけを目的として改善しているのではなく、速く泳ぐことも目的としています。

テリー: YouTubeで、世界で一番美しく泳ぐスイマーとして最高のアクセス数を得た今、これからのカイゼン目標は何ですか?

竹内: 美しく泳ぎながら速く泳ぐことはできないという人たちがいます。なので、今の私の目標は、美しさを保ちながら速く泳ぐということです。優雅に泳ぐことで、私はどんな距離でも少ないストローク数で泳ぐことができます。私はテンポトレーナーを使って、効率性を低下させることなく、神経系が速いテンポに順応するようにトレーニングしています。大事なのは、ただ速く泳ぐことだけでなく、持続させることです。

テリー: 人生の約半分をアメリカで過ごされていますが、今でも日本とアメリカの両方でTIを教えておられますね。日本とアメリカのTIスイマーの相違点と類似点を教えてください。

竹内: 日本では、80%のTIスイマーが健康ために泳いでいるので、楽に、美しく泳ぐことにとても満足しています。一方、アメリカでは、70%のTIスイマーがトライアスリートなので、効率的に泳ぐと同時に、速く泳ぐことも求めています。
日本とアメリカのTIスイマーの目的は違うかもしれませんが、練習方法は同じです。彼らは、私のように泳げるようになるために努力しています。私がやったように、テリーが指導する論理と基礎に沿って、その目標を目指しています。そして、日本でもアメリカでも、ドリルとフォーカルポイントを使用しています。さらに、どちらの国でも、健康のためだけでなく、改善することに喜びを感じて泳いでいます。

テリー: 「世界一美しく泳ぐスイマーになる」という目標を設定するというのは、とても意欲的なビジョンだと思いました。あなたの前に、世界一として認められることなど思いついた人はいないのではないでしょうか。そして、あなたがハードルをかなり高くした今、それを越えようとする人が現れるか疑問です。YouTubeのアクセス数がその目標を測るのに適していると思った理由を聞かせてください。

竹内: 自分の先生にそのように誉めていただけて光栄です。スピードと違って、美しさを正確に測る方法はありません。しかし、「最大多数の人が同じように泳ぎたいと思う泳ぎ」が、最も美しい泳ぎだと言えると思います。その理由から、YouTubeでのアクセス数で測ることが適していると考えました。

私のビデオを観る人は、私のように泳ぎたいと思っているから観てくれているのだと思っています。私の一番の目的は、目標は達成することができるということをできるだけ多くの人に伝えることでした。ですから、技術的な情報は何も加えませんでした。私のビデオを観る人たちが、自分自身が泳いでいるようにイメージして、それを感じていただけたら嬉しいです。

テリー: ビデオを制作することを決めた時、いつかマイケル・フェルプスを超える時がくると思いましたか?

竹内: 東京でTIレッスンを行っているスカイフィットは、2007年の夏にオープンしましたが、そのオープンの直前にビデオを撮影しました。その目的は、TIジャパンのWebサイトにビデオをアップして、TIを日本で広めることでした。日本以外で美しい泳ぎが評価されるかどうかは分かりませんでしたが、コメントをしてもらえることを期待して、ビデオを英語でYouTubeにアップしました。自分のビデオがこんなに多くの人に観てもらえ、ましてや、フェルプスを上回るなど、思いもしませんでした。しかし、私は今でも、日々改善を目指す、ただの中年のスイマーです。

 ©Easy Swimming Corporation