2013年6月10日
トータル・イマージョン代表 竹内慎司
トータル・イマージョン代表の竹内です。5月26日にグアムで開催されたココス島横断レースの8km部門に参加しました。実は、私にとって初めてのOWSレースです。また人生で1500m以上続けて泳いだことがなかった私にとって、短い準備期間でどこまで仕上げることができるかという点もチャレンジングでした。

○レース参加の経緯
これまで米国のマスターズの大会に出場したことは数多くありましたが、OWSのレースには参加したことがありません。サンフランシスコ近郊で開催されるレースは水がとても冷たいとか、日本のレースでは魚をみることができないとか、本来争いごとが嫌いだとかいろいろ難癖を付けて避けていたのです。日本のお客様はこのようにわがままな私を温かい目で見守ってくださっていたので、特にプレッシャーを感じることはありませんでした。

しかし香港でワークショップを始めたところ、「どうしてレースにでないのか」と責めるようにお客様から質問されることが多くなりました。海外のお客様には上記のようなわがままな理由が理解してもらえないため、ついにレースに参加しなければならない状況になりました。そこでどうせ参加するのなら、ということで、「暖かい」「魚がいそう」という条件でココス島のレースを選びました。そしてやるからには思い切ったことをしよう、ということで8kmのレースに参加することにしました。

ココスの8kmレースでは中間地点の4kmを75分で泳がないと失格になります。これは1500mで28分のペースであり、私にとってはコースアウトしたり足がつったりすると間に合わなく可能性があります。これまで泳いだことのない距離を、かなり速いペースで泳がなければならないのです。ウェブサイトでエントリーを済ませてから、カットオフ(途中失格)の恐怖と距離の恐怖がいっぺんに押し寄せてきました。

○練習方針を決める
参加を決めたのは2月でしたが、屋外プールはとても寒いので泳ぎ始めたのは3月になってからでした。しかも日常生活に影響を及ぼさないように、1回の練習時間は45分として、2日連続で泳いだら1日は休むというルールを定めました。

このような制約があるので、普段の練習で8kmを泳ぐことはできません。そこで重視したのが100mあたりのペースです。テンポとストローク数を組み合わせることで、理想の100mペースを計算します。1500m25分ペースで泳げればカットオフされずに完泳できるだろうと考えて、100mのペースを100秒(1500m25分に相当)に設定しました。

練習では2つのアプローチを追求しました。一つは1500m25分のペースが余裕で泳げるようにする、速い泳ぎを作ることです。もう一つは100m100秒のペースを80倍まで伸ばすことのできる持続力です。持続力には、技術的な面と体力的な面があるので両方を満たす練習メニューを考えました。

○練習メニューは「狭く、深く」
かつて米国TIスイム創設者のテリー・ラクリンのメニューをまねして練習しようとしたことがありました。ところがメニューが複雑なだけでなく、タイムなどを覚えていないと後々再利用できなくなることがわかり、すぐに挫折しました。

実際の練習環境では、プールの混雑状況やどのくらい練習に時間が使えるかなどがその日によって異なります。そこで大まかなテーマだけを予め設定して、具体的な練習内容はプールに行って混雑状況をみてから決めるようにしました。

メニューはおおまかに分けて技術を磨く部分と技術を応用する部分に分かれます。短い練習時間であることから構成は非常にシンプルにして、「意識して技術を磨くスイム」「技術を応用するメインセット」「必要に応じてドリル」としました。一方その考察については記憶できるだけ記憶して、練習直後にブログに記述するようにしました。練習内容についてはこちらをご覧ください。

○グアム入り
休暇を兼ねて1週間前にグアム入りしました。今思えばこれが失敗でした。グアムでの練習はオープンウォータースイムのペース確認を中心として、練習自体は最小限にしました。

初日の夜エアコンを切り忘れたため、翌日いやな感覚で目が覚めました。そのいやな感覚は徐々に風邪の兆候に変わり、のどの痛み、咳、頭痛、からだのだるさなどを感じるようになりました。結局風邪は悪化する一方で、最悪のコンディションで当日を迎えました。

○当日
前日のミーティングで、自動車で現地に行く場合は午前5時までに到着するようにとのアドバイスがありました。そこで4時すぎにはレオパレスリゾートを出発し、現地に向かいました。トイレがすぐ使えなくなる、スコールで水着が濡れたままボートに乗らなければならないなど、私には信じられないのですが大会の常連ならそんなものか、というようなことが次々と発生します。

そしていよいよスタートの7時に近づきました。曇り止めと口臭防止スプレーを水着の間に挟み込んで海に飛び込みましたが、スタートが10分遅れると後から連絡があり、「この濡れた体をどうしてくれるんだ!」と思いましたが、こんなもんなんでしょう。仕方なくゆるいウォームアップをしながらスタートを待ちました。

スタートはあっさりで、16人が一斉に最初のブイに向かいました。経験しておきたかったバトルもほとんどなく、すぐに一列になって最初のブイを通過しました。途中で何回かコースアウトしたようです。カヤックのスタッフに右によれと指示され、「こっちはブイを見ながら泳いでいるんだ!」と反論しましたが、後ろのブイで確認すると確かに左に流されていました。自分を含む三点の測量は重要です。

途中片道組の集団がやってきました。ブイの右側を泳ぐはずなのに、どう見てもブイの左側を大群がやってきます。最初はアクション映画のカーチェイスシーンのように大群のなかを逆行してすり抜けながら泳いでいましたが、しまいにぶつかって来る人が増えてきたのであきらめて右側に大きくコースを変えました。

4km地点は56分で到着しました。この時点で補給された水で口をゆすぎ、口臭防止スプレーを口に入れて気分を一新しました。時間的にカットオフされないことは確定し、またうねりが非常に大きくなってきたので、ゆっくりでもコースアウトしないように泳ぐ方針に変更しました。具体的には40ストローク毎に平泳ぎを2ストローク入れて方向を確認しながら休みます。40ストロークはこれまでよりもさらに速いスピードを目指し、平泳ぎで一息入れるというインターバルトレーニングのような泳ぎ方です。

最後はどのブイを通るのか、あるいは直接ゴールを目指してよいのかがわからなかったので、とりあえず直接ゴールを目指して泳ぎ、最後は無事ゴールすることができました。時間は2時間10分、順位は16人中8位です。後からタイムを確認しましたが、3位以内に入るためにはスピードだけでなく、経験が必要であることがわかりました。潮の流れや方向確認において、同じ場所で繰り返し泳ぐ経験は非常に優位に働きます。

帰りは休みながら泳いだためか、アドレナリンが過剰に分泌されていたためか、ゴールしてからもまだ4km程度は泳げそうな感じでした。自動車でレオパレスに戻りましたが疲れはそれほどない状況でした。ただ塩水でのどの調子がよくなるかと期待していましたが、かえって大幅に悪化して声がほとんど出なくなったことは困ったことでした。フィリピンキャンプ参加のみなさんに申し訳なく思っています。

○今後
ココス往復については3位以内を目指す、という意欲もあるのですが、次男の誕生日と重なるのでしばらくはパスするつもりです。誕生日に父親がいてもじゃまな年齢になったら、また考えたいと思います。

また機会があれば、水泳のフルマラソンと言える10kmに1回は挑戦したいと思います。きれいで暖かい海がいいですね。

 ©Easy Swimming Corporation