2013年5月10日
TIスイム創設者 テリー・ラクリン

スイミングを「遅い」または「速い」だけで表現するのは、不明確であると思います。同じペースでも、100mでは遅いが、1500mではとても速いペースとなり得ます。また、25歳としては遅いタイムでも、75歳としては世界的な記録となる場合があります。そして同じスイマーで同じ距離だとしても、「遅い」や「速い」は、あまり意味を持ちません。

例えば、100ヤードを1分24秒のペースで繰り返し泳いだとしても、1秒/ストロークのテンポ(25ヤードを16ストローク)で泳いだとしたら、なにも特別なことはありません。しかし、同じペースで1.5秒/ストロークのテンポ(25ヤードを11ストローク)で泳げたとしたら、歓喜で叫んでしまいたくなるでしょう。(少なくともTIフォーラムやフェイスブック、ツイッターに投稿するでしょう。)

速度(遅い/速い)の二分法をいっそう深く探求する上で、ひとつのストロークの中でも、遅くするべき部分と速くするべき部分があることを考えたことがあるでしょうか。この技能は「非同期タイミング」と呼ばれ、最高の泳ぎをするのに重要な高レベルの技能です。

キャッチ(水をとらえる)は、他の全ての条件が同じであれば、できるだけゆっくり行うべきです。キャッチに時間をかけるということは、からだのラインが伸びた状態をわずかでも長く保つことになり、能率の向上につながります。さらに、キャッチをゆっくり行うことで、腕や手の後ろにある水を静かに、しかし、しっかりと掴むことができるので、推進力も高まります。

キャッチを速く行うと、水を後ろに押す動作が大きくなりがちですが、キャッチを遅く行うと、からだを動かす動作が大きくなります。代表的な例が、2008年に北京オリンピックで行われた、男子400m自由形リレーのアンカーです。ジェイソン・レザックがアライン・バーナードを抜かせた理由は、レザックの著しく遅いキャッチでした。それ故に、彼の1ストロークで進む距離は、バーナードのそれに比べて遥かに長かったのです。

その一方で、リカバリーは、他の全ての条件が同じであれば、できるだけ速く行うことが大事です。空気中での腕の重さは、水中でのそれの約10倍になります。水の外に腕がある時間が長ければ長いほど、バランスと安定性に課されるストレスが多くなります。従って、からだを安定させるために腕と脚を使う可能性が高くなります。さらに、リカバリーの腕が水の外にある時間が長いほど、「短い船体」として費やす時間が長くなります。

しかし、リカバリーを速く行うことが大事とはいっても、それは腕を速く動かすことではありません。次のことを意識して行ってください。

  1. 水から腕を出してから挿入するまでの距離をできるだけ短くする。(手を運ぶラインは真っ直ぐで、指先は水面を這うように。)
  2. 手が水の外にある時間はできるだけ短く。

そして、著しく遅いキャッチのメリットがもうひとつあります。それは、背骨周辺の筋肉を上に上げることで、からだのバランスと安定性が向上することです。

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