2013年3月11日
TIスイム創設者 テリー・ラクリン

最近TIディスカッションフォーラム(http://www.totalimmersion.net/forums)で、スティーブさんがこんな質問を投稿していました。「私は100m以上泳ぐと息切れしてしまうので、100mを何度も繰り返すことしかできません。1セッションで2000m泳ぐことはできるのですが、どうしても苦しくなって100mごとに止まって休まなければなりません。どうしたら息苦しくならないで長く泳ぐことができるのでしょうか?」

TIスイムに熱心なイギリス在住のクレイグ・アーノルドさんが、次のように答えていました。「長い距離を泳ぐ時は、ウォームアップと考えてはどうでしょう。ウォームアップと思って、ゆっくり泳ぐことを自分に許すのです。そして、バランスや頭の力を抜くことを意識し、操り人形のように腕を動かして、水しぶきをたてないで泳いでみてください。 私もそのように泳いでいたら、いつの間にかノンストップで1000m泳げるようになっていました。」

クレイグさんは良いアドバイスをしてくれました。特に「ゆっくり泳ぐことを自分に許す」と言うことばに説得力を感じました。私は47年前に水泳を始めましたが、自分にゆっくり泳ぐことを許せるまでに40年以上かかりました。

私の良き友人であるアンビー・バーフットさんは、1968年ボストンマラソンの優勝者であり、ランナーズワールド(Runner’s World for)の編集長を30年務め、60歳になってからTIスイマーになりました。彼が私にこう教えてくれました。「ケニアのマラソンランナーは、普通レース前に約9分/マイルペースでウォームアップをします。それは、彼らのレースペースの約半分のスピードです。」

ケニアの選手に比べて、私はゆっくり泳ぐことに劣っていました。その頃の私の自由形1650ヤードのレースペースは 、約1分15秒/100ヤードでした。2分30秒/100ヤードで泳ぐことなど考えもしたことがありませんでした。いつも1分15秒から1分30秒の間 のペースで泳いでいました。この時以来、私の練習は、約10分間の「できるだけゆっくりのペース」で泳ぐことから始まるようになりました。

効果は直ぐに現れました。10分間のゆっくりペースを初めに行うと、その後の泳ぎがずっと楽になったのです。そしてその「超低速」ペースが、わずか数秒遅いだけとなったのです。わずか数秒の違いで、どれだけ楽に泳げるかということに私は驚きました。

練習の初めに完全にリラックスした状態を得るようにしたことによって、いくつかの意外な利点を発見しました。

  1. 自分の身体と水の相互作用に敏感になりました。まるで、水の分子を感じているような感覚を覚えました。
  2. 身体のバランスと安定性が随分向上しました。全ての速いペースで違いを感じることができました。
  3. 超低速ペースで練習を始めると、その後速く泳ぐのに勢い込む必要がありませんでした。続けていると、ペースは自然と上がっていきました。

これを始めてから数ヶ月の内に、私は1650ヤードを1分12秒/100ヤードのペースで泳げるようになりました。自分にゆっくり泳ぐことを許したことで、前よりもっと速く泳げるようになったのです。

エンドレスプールで指導していて気付いたのは、ゆっくり上手に泳げる生徒があまりいないということです。レースで私よりかなり後にゴールするであろう生徒でも、私が水流を遅めのスピードに設定すると、プールの前に何度もぶつかってしまいます。そして、水流をはるかに遅くして、私が一定の位置でリズムを崩すことなく、きれいに泳ぐのを見て驚いています。

パワーとテンポは人によって様々です。ほとんどのスイマーは身体的要素に重点を置き、技巧的要素を無視しがちですが、水との調和を高めるのに必要なのは技巧的要素なのです。

ゆっくり泳ぐための3つの方法

  1. ストロークを始める時に、腕の動きの速さを確認する。完全に腕が伸びたら、そこで一呼吸置き、できるだけゆっくり静かにストロークを始める。
  2. 途切れることなく、安定した状態で、どれだけゆっくり腕を水面上で前に運べるかを確認する。
  3. テンポトレーナーを使用して泳ぐ場合は、徐々にテンポを遅くする。テンポ1.80秒のテンポでストロークの流れを一定に保つことができるか確認する。

集中力と身体のコントロールを必要とするこれらの技法を身につけることがとても重要であり、早く泳ぐ上でも非常に有効であることが解るでしょう。

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