みなさんはなぜ水泳を練習するのでしょうか。目的や目標はいろいろあると思いますが、練習を楽しく続けるためには「上達している自分」がわかることがとても大切です。
普段の練習において、「今日はうまくいった感じがする」「今日は滑り具合がイマイチだった」などと感覚的な成果は得られるでしょう。しかしそれだけでは上達したかどうかはわかりません。自分の泳ぎを客観的に知る方法として、タイムを計測することが考えられます。しかしタイムを縮めようとして泳ぎが硬くなったり、効率が落ちてしまっては、せっかくの練習が無駄になるかもしれません。
TIスイムでは、上達を指標として測定できるようにするために「TIスイムレベル」を考案しました。今回は5年ぶりの改訂に合わせて、TIスイムレベルを使った上達のプロセスについて説明します。
- TIスイムレベルの目的は、水泳の上達度合いを客観的に知ることです。「効率」と「スピード」の両方を含めてレベルを決めています。
- 「効率」については、ストローク数に基づくストローク長を使用します。ただし身長が高いほどストローク長は増えるため、他者との比較のためにストローク長を身長で割った数字(ストローク長身長比)を使用します。
- 「スピード」は、泳ぐ距離を時間で割ることで求められます。ここで効率を加味したボーナスを加えることにします。すなわちストローク長身長比が100%を超える場合は超える分だけスピードがアップし、逆に100% を下回る場合には、スピードがダウンします。この補正したスピードのことをTIスピードと呼びます。
- レベルは入門、初級、中級、上級、エリート、スーパーに分かれています。初級、中級はTIスピードのみで決定し、上級、エリート、スーパーはTIスピードとストローク長身長比で決定します。判断基準は男女により異なります。TIスピードが初級の基準に達していない場合、入門レベルとなります。詳細はこちら→
- レベル分けにあたってはワークショップの計測結果(男性2000名、女性500名)を使用しました。
ステップ1:ストローク数を「ストローク長身長比100%」になるまで減らす。
TIスピードはストローク数(正確にはストローク長身長比)によって増えたり減ったりします。そこで一番最初めに取り組むことは、TIスピードが実際のスピードよりも遅くならないようなストローク数で泳ぐことです。このストローク数と身長との関係を下表に示します。身長165cmの方であれば、15ストローク以下で泳げばTIスピードが実際のスピードを上回ります。
身長 |
147cm未満 |
147〜157cm未満 |
157〜167cm未満 |
167〜179cm未満 |
179〜193cm未満 |
ストローク数 |
17 |
16 |
15 |
14 |
13 |
上の数字よりもストローク数が小さくなれば、その分TIスピードは速くなります。しかしストローク数を減らすと一般的にはスピードが遅くなるので、ストローク数減少によるボーナス効果と相殺されるかもしれません。まずはタイムを気にせず、上に掲げたストローク数で泳げるようにしましょう。
ステップ2:ストローク数一定でタイムを縮める。
ストローク数が一定であれば、タイムが縮まった分だけTIスピードが速くなります。これを実現するための練習として、テンポトレーナーを使います。
- 自分で気持ちよく泳げるテンポに設定します。そのときのストローク数を数えます。
- テンポを0.05秒ずつ遅くして泳ぎます。ストローク数は0.10秒毎に1つ減らすようにします。
- 最初のテンポよりも0.30秒遅くなった時点でのストローク数を数えてから、テンポを0.05秒ずつ早くします。このときストローク数は0.30秒遅くなったときのストローク数から、できるだけ増やさないようにします。
- 最初のストローク数になるまでテンポを上げます。最初のテンポよりも0.10〜0.20秒早くなっていれば成功です。
- 例えば最初のストローク数が15で、0.20秒テンポを上げることができれば3.0秒タイムを縮めることができました。
ストローク数を減らしながらスピードを上げる技術を身に付けることが、TIスイムレベルのポイントです。これは「ゆっくりに見えてとても速い」泳ぎになります。ドリルを練習してラクに泳げるようになった、息継ぎや2ビートキックができるようになったという方は、次の目標としてTIスイムレベルに取り組み、レベルを上げることでより美しく泳げるように技術を磨いてみましょう。
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