2012年8月10日
トータル・イマージョン代表 竹内慎司
2012年ロンドンオリンピックが開幕し、8月10日現在様々なスポーツ競技が行われています。水泳はオリンピックの前半を占める8日間行われ、日本競泳陣は戦後最多の11個のメダル(銀3,銅8)を獲得し、日本中がテレビに釘付けになりました。感動と興奮を与えてくれた、日本選手団を初めオリンピックに出場した全ての選手に感謝したいと思います。

さてインターネットによる番組配信が高度化し、今回私は人生で初めて競泳の全ての準決勝と決勝を見る機会を得ることができました。私達は世界最速を競う水泳とは異なる水泳を学び、教えているわけですが、極限まで技術を高めた彼ら・彼女らの泳ぎは、大人の水泳においても学べる点が多数ありましたのでご報告します。

ポイント1:静かさは効率、そして速さに通じる

身長の高さや体力の点で、日本人選手は残念ながら欧米の巨大で筋肉質の選手にかないません。しかしその不利な点を、逆に有利にするために、泳ぎの効率化を徹底的に追求していることがわかりました。

下の写真は200m背泳ぎ決勝、左端(実際は6コース)は入江陵介選手(銀メダル)、右にライアン・ロクテ選手(銅メダル)、タイラー・クレイリー選手(金メダル)が泳いでいます。入江選手の回りの水しぶきが非常に少ないのが特徴的です。入江選手は右手をこの後入水しますが、水しぶきをほとんど立てません。

この静かな泳ぎは、スタートでは引き離されても、後半かならず追いつき、そして追い越す入江選手の強さの秘訣です。頭から足先までを軸とした場合、左右だけでなく上下にもほとんど動かず、静かに泳ぎながら相手を追い越す、まさに「サムライスイム」と言えるでしょう。なお金メダルを取ったクラリー選手も、ロクテ選手に比べて上下動が少ない泳ぎでした。

Source: IOC

ポイント2:テンポを上げずにストローク長を伸ばす

もう一つのポイントが、テンポを上げずにストローク長を伸ばすことです。一般的には身長が高いほどストローク長が長くなり有利となりますが、これまで日本の水泳選手は手足の動作のタイミングや姿勢の改善など、きめ細かな技術を高めることでストローク長を伸ばし、世界と互角に勝負をしてきました。その完成形が北島康介選手です。

今回の平泳ぎのレースでは、準決勝、決勝になるほど「キタジマスタイル」の泳ぎをする選手が多くなりました。その典型的な例が200m決勝の鈴木聡美選手です。隣のレベッカ・ソニ選手は準決勝、決勝と世界記録を出して優勝しました。彼女の速さの原動力は速いテンポです。これに対して隣のコースで泳いだ鈴木選手は、ソニ選手の50m21ストロークというハイテンポな泳ぎに惑わされることなく、17ストロークという伸びのある泳ぎを守り、銀メダルを獲得しました。

Source: IOC

この傾向はバタフライでも見られました。これまでは見た目に「パワーのある泳ぎ」でどこまで行けるかが勝負どころでしたが、世界一美しいバタフライを泳ぐマイケル・フェルプス選手の登場でバタフライのスタイルに変化が起きました。北京五輪に比べて確実に、テンポを上げるのではなくストローク長を伸ばす「フェルプス・スタイル」で泳ぐ選手が増えました。

その他にも今回のオリンピックで得られた数多くのポイントは、今後ワークショップやレッスン、セミナーの場で提供していきますのでご期待ください。

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