2012年5月10日
TIスイム創設者 テリー・ラクリン
 今回は、TIフォーラムへの投稿をご紹介します。

 ドイツに住むTIスイマーのワーナーさんは、TIを始めてから1年が経過したそうです。半年ほど経った時点で、既に1kmを続けて泳げるようになり、TIとフォーラムに、とても感謝していると書いていました。
 ただ、疑問もあるようで・・・。

 その疑問にテリーが回答しています。

<ワーナーさんの疑問>

「気がかりなのは、この成果をどれだけ維持できるのか?です。自転車のように一度乗り方を覚えたら、忘れないものだといいのですが…。」

<テリーの回答>

 ワーナーさん、質問ありがとう。早速回答したいと思います。
「この成果をどれだけ維持できるか」ですが、答えは「ノー」です。「維持」はしません。むしろ逆です。
 とどまることなく、これから先何年にもわたり上達していきます。それは、TIの考え方・メソッドを受け入れること、すなわち「カイゼン」に繋がるからです。
 その「カイゼン」の基本原則を紹介します。

■毎回プールに行く目的は、その度に上達していること、です。
 何メートルを繰り返し泳ぐとか、心拍数をどれだけあげる…などを目標としません。今までにも書いていますが、プールへ行く前よりも、行った後には成長していたい、それが目標です。

■苦手なものを見つけて修正しましょう。
 早い段階なら修正するのもカンタンです。時間が経ち、身体に染み付いてしまってからでは修正するのが大変です。

■上達が停滞し始めたら、「見えない上達」が始まったサインです。
 停滞期は、TIを始めて数ヶ月から1年を過ぎたあたりから始まります。人によっては、この期間が何週間〜何ヶ月に及ぶ場合もあるでしょう。
 この「見えない上達」とは、ニューロン(神経細胞)で起こっています。この神経細胞は、起こった変化を伝達する役目を担っています。そして伝達が拡張している期間が『停滞期』です。
 停滞期が過ぎると「見えない上達」が芽を出してきます。

■好奇心を持って水泳を楽しみましょう。
 水泳はとても複雑で難しいものです。それは本能・機能的に、人間の身体に与えられたものではないからです。(言うまでもありませんが、人間は陸上で生活する哺乳類であり水中仕様にはデザインされていません)
この環境と能力の違いを受け入れ、知恵・知性・理性を持って泳ぐのです。そうすればより水泳が楽しく、そして上達していきます。

■「練習自体に見返りを求めない」ことです。
 『25m泳げるようになる』『タイムをあげる』など、結果を求めて練習していたものが、『結果だけが全てではない』ことに気付きます。
 結果が出なくてもプールへ行くことがあるのは、まさに「それ」です。プールに行くこと自体を楽しみにし、心も身体も元気になる。その継続が、身体や気持ちが前向きになる源になるのです。

【編集後記】◆ワンポイントレッスンは奥村コーチへバトンタッチしました。自主練習中の「自己修正力」を働かせることで、より上達する。その方法を「問題発見と修正」の事例を挙げて紹介しています。◆今月から始まった山口コーチの「水と共に活きる」。当たり前のことを見逃してしまうのはよくありますが、このように指摘されると痛感する人も多いのではないでしょうか。◆平山コーチのロットネス海峡横断レポートは今回が2回目です。参加を決めたのは一大決心でもなく「できるかも?」だったのが平山コーチらしさを表しているように思います。◆コーチ短信は吉野コーチが参戦した『全日本トライアスロン宮古島大会』のレポートです。レース中に消耗する気力・体力を冷静に捉えている様子が、過酷なレースの「静」の部分を浮き彫りにしています。◆テリーは、ワーナーさんに宛ててTIの概略を説明しています。中でも『停滞期』の説明は勇気をもらう人も多いかもしれませんね。(TIコーチ 塚本恭子)
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