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塚本コーチ |
こんにちは。トータル・イマージョン、シニアコーチの塚本です。
今回はタトゥーと入れ墨のこと、そして日本でのルールについて考えてみました。
イタリアのフェデリカ・ペレグリニ選手は北京五輪の女子200m自由形の金メダリストで、現在の女子200m自由形、400m自由形の世界記録保持者です。高級ブランドのモデルも務める美貌の持ち主で、今夏開催された上海の世界水泳でも2冠を達成したので、ご存じの方も多いと思います。
ウェブで知ったことですが、そんな彼女が成績不振のスランプに陥ったころ、フェニックス(不死鳥)になりたいとの思いから守り神として、首筋にフェニックスのタトゥーを入れました。その後、世界記録更新、北京五輪の金メダルと続いたことからフェニックスのタトゥーは彼女のシンボルマークになりました。日本の大手スポーツメーカーも彼女のフェニックスをデザインした水着などをペレグリニ・コレクションとして発売しています。ウェブ検索をかけると、彼女のフェニックスの画像を見つけることができます。
そんなタトゥーの日本語訳は「入れ墨、彫りもの、刺青」です。和と洋でデザインは違っていても、入れ墨とタトゥーは同じものです。そして、日本での入れ墨に対するイメージはいいものではありません。一部で「ファッション・タトゥー」と表記して入場を許可しているプールもあるようですが、日本のプールやスポーツクラブでは入れ墨がある客の入場を禁止しているところがほとんどだと思います。
私の地元の隣町ではブラジル出身の人が多く住んでいます。スタイルのよい彼らは露出の多い服装を好みますが、そこからタトゥーが見えることも多々あります。夏の屋外プールでは日に焼けた肌に気に入ったデザインのタトゥーをほどこした姿を惜しむことなく披露しています。
プールへの入場を禁止されているから当然なのですが、私はいわゆる日本の「入れ墨」に該当するようなデザインのものを見たことがありません。「ファッション・タトゥー」に該当するのだろうな…というものならあります。同じタトゥーでもトライバルというデザインだと、少々いかついので近づきがたい印象を受けます。逆に筋肉がはちきれそうなほど太い上腕に子猫のタトゥーや間違った日本語(漢字)のタトゥーがあるのを見ると、そんな気がなくても笑いそうになります。
話が脱線したので戻しますが、ルールとして存在する以上、日本のプールでタトゥー(入れ墨)をした人が泳ぐには確実に制限が生じます。タトゥーだけでなく、細かな制限はたくさんあります。外国のプールではピアスをしたまま泳いでも構いませんが、日本では外れて踏んだ場合まで考慮して禁止にしています。パドルを使って練習したくてもプールの規則で禁止になっているところも多いです。そういった制限の中でも日本にいるスイマーたちは水泳を楽しんでいます。
今回、私のお客様(米国人女性)がタトゥーのために英語でのプライベート・レッスンを続けられなくなりました。アメリカンスクールの先生をしている彼女のタトゥーは亡き母親への想いをこめたものだと説明を受けました。彼女は弁明するからその場を設けてほしいと訴えましたが、残念ながら希望には沿えませんでした。私には非常に苦しい結果でした。人柄を知っている分、やるせなさを強く感じたのですが、例外もまたあり得ないのです。彼女には申し訳なかったけれど、日本のルールを理解してもらうしかありません。
今回このようなテーマについて書いたのは、タトゥーを肯定しているのではなく、外国人と日本人とでは文化や習慣、意識に大きな違いがあると感じたからです。違いはあっても日本のプールで水泳を楽しむためには、守らなくてはならないルールや規則、自重すべき行為、またマナーについても考えてもらうことがたくさんあると思ったからです。こんなルール、守る必要あるのだろうか?と疑いたくなるようなルールが存在するかもしれません。しかし、ルールは守ってこそ意味があるものだし、価値も生まれます。また、そのルールによって自分たちも守られているのだと、あらためて思うのです。 |