2011年11月10日
TI代表 竹内慎司
永久上達をめざすTIスイマーに、非常に有効な指標が生まれました。それは心拍数です。スピードアップや泳ぐ距離を伸ばし続けるために、心拍数をリアルタイムでコントロールする技術は強力な武器となります。
これまでの私の自らの実験の結果を報告しましょう。
アクアパルス

米国TIのコーチ会議が終わった10月上旬、やっと自分の練習に時間が使えるようになりアクアパルスを試すことにしました。アクアパルスは水中でも使える心拍計で、骨伝導技術を使って音声で心拍数をクリアに伝えてくれるスグれものです。

まず使ってみてわかったのは、「キツイな」と感じたときには心拍数も上がっていることです。私の場合プールで泳ぎ始める前の心拍数は90程度ですが、130程度になるときつく感じるようになり、140を超えるとかなりきついと数字に連動していました。水中の心拍数は10%程度減少するので、水中での心拍数140は最大心拍数の90%を超えてしまうことになり、確かにきつい状態になります。なお泳ぎ終わる直後の方が心拍数が上がるため、泳いでいる間の心拍数を音声で確認することは、より正確な運動強度を知るうえでとても大切です。

●苦しさと心拍数は一致しない

意外だったのは、苦しさと心拍数(=運動強度)は一致しないということです。息継ぎをせずに25mバタフライを泳いでも、また息継ぎの回数を25mで2回に抑えてクロールを泳いでも、心拍数は上がりませんでした。このことから、「苦しさは二酸化炭素の交換が不十分であることから生まれる」という仮説が正しい印象を受けます。ちなみにバタフライで毎回ストロークで意識的に息を吐き続けて泳ぐと、心拍数も上がらず、クロールを泳いだ直後のようなラクな印象を受けました。しっかり空気を吸うことができれば、吐き足らないのが苦しさの原因のようです。

この延長線としてシュノーケルを使って泳ぐと、苦しさや息継ぎによる姿勢の乱れの影響がなくなるので、フォームにさらに集中できるようになります。この結果心拍数を下げたり、上げたりできるようになります。これは大きな発見でした。

●テンポよりもストローク数の変化に反応

テンポを1.2秒から1.0秒に上げたとき(ストローク数は維持)に、心拍数は10%程度上がったのみでした。一方ストローク数を12から10に減らしたときには、心拍数は30%上がりました。加速(大きな速度変化)を意識すると心拍数は上がりますが、定常的に速いスピードを維持するのには心拍数は上がらないようです。自動車と同じですね。つまり一旦上げたスピードを下げないために、テンポを上げて維持するという戦略が考えられます。

●アンカーで10%増、フィニッシュで30%増

フォーカルポイントによる運動強度の違いを見るために、エンドレスプールで速度およびテンポを一定にして、フォーカルポイントを変化させてそのスピードを維持するようにして心拍数の変化を調べました。その結果手のかき始めで水を抱えることを意識すると心拍数が10%上がり、また最後に水を後ろに押すフィニッシュを意識すると30%上がることがわかりました。つまり最良のシナリオは両方とも意識せずにスピードを上げた状態を長く保つことになります。スピードをさらに上げたい局面で心拍数を上げて(エネルギーを使って)スピードを上げるのですが、どの程度スピードを上げたいのかによってどこを意識すればよいのかが今回数字として理解することができました。

●海ではプールの10〜15%減

グアムの自主キャンプでも、アクアパルスとシュノーケルを積極的に使いました。海でテンポ1.2秒程度で泳ぐと、プールに比べて心拍数が15%程度減少しました。レーステンポである1.0秒で泳いでも120まで届きません。つまりまだまだスピードを上げることができるというわけです。海での加速、そして上昇したスピードを維持するためのテンポの配分が、オープンウォーターレースの鍵を握ることでしょう。

●テンポ、ストローク数、心拍数をコントロールしてスピードアップを目指す「スーパーハイテク・レッスン」

今回のプール、エンドレスプール、海での実験により、テンポおよびストローク数と心拍数のコントロールの方法がわかりました。そこでこのノウハウを早速次回のワークショップやキャンプで活用することにしました。参加されるお客様全てにシュノーケルとアクアパルスを装着していただき、様々な状況において心拍数を計測します。次にこの心拍数を下げるためのフォーカルポイントや動作を磨き、さらに心拍数を上げて効率良くjスピードを上げるための方法について身につけていただきます。ご期待ください。

アクアパルス、シュノーケルを全員が使用する「スーパーハイテク・レッスン」は以下の2つです。いずれも竹内がディレクターを務めます。

スピードアップ・キャンプinグアム(2012年3月8日−11日) 詳細はこちらから→

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