テリー・ラクリン
A Brief History of TI(Part 1) by Terry Laughlin
2011年5月10日

A BLOG FROM TERRY LAUGHLIN "SWIM WELL (AND LIVE WELL)"より転載

 トータル・イマージョンの始まりは、ややありふれた方法でしたが、今日ではほかとは違う水泳プログラムとして認められています。私たちが教えるコアバリュー(中核的な価値)は『カイゼン(改善:継続的な向上)』の精神です。最初は技能を向上させることにも言及しましたが、カイゼンは私たちのDNAの中に確実に織り込まれてきました。1989年に創立してから継続的な発展に影響を与えた2つの鍵は、私たちが教える生徒たちと人間の意識に関する知識の拡大です。

 TI以前は、ほとんどの水泳コーチと先生は子供と若者を対象に指導しました。TIは大人に特化した水泳上達のための最初のプログラムでした。 大人は測り知れないほど、学習過程を豊かにする人生経験、考え方、興味を持ってきます。結果的に私たちは大人の生徒から、彼らに教えたことと同じくらい多くのことを学びました。

 また、この30年間にかつてないほど、数多くの分野の研究者は人間の『インナーライフ(精神生活)』について研究しました。1980年代と90年代の間にポジティブ心理学が効果的な研究分野として受け入れられました。心理学が伝統的に実用的でない行動に焦点を合わせたのに対して、ポジティブ心理学は、幸せな、盛んな、高度な行動能力を持つ人々の特性を分類しました。そのような人をめざすことがTIを練習する、より高い目的になりました。

 21世紀の最初の10年間で、新しい脳スキャン・ツールはリアルタイムに人間の脳がどのように機能するか、前例のない理解を可能にしました。経験に基づいた推測であったことが確実な知識になりました。最も説得力のある新しい見識は、中年の脳の高い適応性と高いパフォーマンスを発揮する行動を結びつけました。それらはまた、水泳のような挑戦しがいのある技能を学ぶときの脳の中心的役割を明らかにしました。

 生徒たちの挑戦、興味、驚くべき成果、そして私たちコーチの好奇心が、ますますTIメソッド(方法)の発展をもたらしました。TIプログラムは外面(いかにストロークするか)に焦点を合わせて始まったのですが、人生の内面と外面を集積することで着実に進化しました。TIは、そうした経路をたどった、ほかに匹敵するものがない水泳プログラムです。

 この文書では5つの異なった段階を通してTIの進化を描きます。

▽1989年〜92年 大人と結びつける
 1988年の夏、私は初めてナショナル・マスターズ・チャンピオンシップで泳ぎました。数週間後、私はビル・ブーマー(注1)に会って、彼の水泳のテクニックに関する型にはまらない考え方に興味をそそられました。両方の出来事は1989年夏にマスターズ・スイマーのためにキャンプを提供する決定に影響しました。私は17年間、常にテクニックに対する異常に強い関心を持って、競泳のコーチをしてきました。1989〜92年の夏の間、TIキャンプでの私の指導法は、1972年から若いスイマーに使って成功した指導法と非常に類似していました。

 私たちのドリルは、ほかのコーチが使っていたドリルと類似していたので、研究して高度に体系化した方法でドリルを行いました。これらの年のTIはまだ特定の季節だけのプログラムで、ビジネスではありませんでした。各夏4回から6回のキャンプ開催とその年の残りにマスターズ・チームのためのクリニックをいくつか行いました。

▽この段階で受けた重要な影響
 私は以前に大人を指導したことはなかったのですが、2つの面ですぐに興奮しました。
・進歩する潜在能力
 生徒のほぼ全員は、マスターズ練習で低迷した年の後でさえ、テクニックに集中することによって、数日で劇的に上達できたことを発見して興奮しました。
・本質的な動機付け
 大人は、子供よりもゆっくりと根気強く技能を学ぶことになりましたが、完全に没頭することで補いました。大人の生徒たちと共同研究的なパートナーシップを組んで指導することは非常にやりがいのあることがわかりました。

▽船の形(Vessel-Shaping)
 ビル・ブーマーは、私たちが今日教える方法の中に反映された2つの影響の源でした。
(1)彼の金言(1988年に最初に聞いた):『船の形はエンジンの大きさより重要』抵抗を避けることが、プル、キック、パワー、コンディショニングよりも重要であると強く主張しました。私はそれを1978年(初めて水中の窓からスイマーを見たとき)から直観的に感じていましたが、このビルのフレーズは、スイマーの進歩を支援するエキサイティングな新しい方法のための行動になりました。またTIがいかにほかのプログラムとは異なった方法であるかを簡潔なことばでまとめました。
(2)ビルは私たちにバランスドリル、とりわけ『Press the Buoy(注2)を紹介しました。それからバランスの理解と教える方法は非常に進化しました。ビルの影響力は本当に強いものでした。(続)

(注1)ビル・ブーマー:NCAA(全米大学体育協会)のコーチ。1962年〜1990年ロチェスター大学男子水泳チームヘッドコーチ。(Wikipediaより抜粋)
(注2)人間の肺をブイ(浮き)に見立て、胸を押しつけるようにしてバランスを取るドリル。両手を横にした伏し浮き姿勢でフラッターキック。胸を押しつけながら腰と足を持ち上げる感覚でバランスを取る。

 原文:http://www.swimwellblog.com/archives/1132

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