2011年3月10日
テリーのレッスン(TIシニアコーチ 柏木祐子)
 TI創始者でヘッドコーチのテリー・ラクリンさんが来日中に開催したレッスンイベントの報告です。いずれも「ストローク数」と「テンポ」と「距離」を変化させながら自分の泳ぎをコントロールしていくというレッスンでした。


プールのロビーでQ&A
▽ロングスイム練習会(2月6日)
 国立代々木競技場の室内水泳場「インドア50」の長水路(50m)を6コース中4コース使い、約40名の参加者が泳ぐ様子は圧巻だった。

 今回の練習会では「長距離を速く泳ぐ」ために、これまでの「ドリル中心のアプローチ」ではなく、「テンポトレーナーを使ったアプローチ」でテリーのレッスンが行われた。

(1)距離を一定にしてテンポの増減/ストローク数確認
(2)テンポを一定にして距離の増減/ストローク数確認
(3)ビープ音に合わせるタイミングの変化/スピードコントロール

 3つのアプローチで、初級者から超上級者、TIスイマーから非TIスイマーまで、さまざまなレベルの練習会参加者がそれぞれに技術を磨くことができたように思う。

▽水泳雑誌『月刊SWIM』とのコラボイベント(2月9日)
 荻窪スカイフィットで行われたイベントでは、ウォーミングアップ後に50mのタイムとストローク数を計測した。SWIM誌が募った参加者のほとんどがTIスイマーではなかったので、スーパーマングライドでは頭の脱力、スケーティングでは伸ばした手の位置と軸を安定させることをフォーカルポイントにしたドリル練習を行った。


月刊SWIM誌とのコラボレッスン

 クロールを泳ぐ中で「リカバリー動作をゆっくりする(あわてない)ように」とテリーのアドバイスがあった。その後は「リカバリー後の入水時の音を小さくする」など、フォーカルポイントを各自で決めて泳いだ。

 2月6日と同じ「テンポトレーナーを使ったアプローチ」を行い、テンポの増減、距離の増減、ビープ音に合わせるタイミングの変化によって、25mで4ストロークも減った参加者がいた。

 最後に50mのタイムとストローク数を計測して最初の数値と比較すると「タイム→速」、「ストローク数→減」となったものが何名か出た。参加者の泳ぎがどんどんカイゼンされていく一部始終をプールサイドから見ていたSWIM誌の取材記者が一番驚いていたように思う。SWIM誌にどんな記事が掲載されるか楽しみだ。

  
TIジャパン選手・育成クラス活動記録(TIシニアコーチ 中村大輔)
 TIジャパン選手クラスのマネージャー兼選手育成クラス担当の中村大輔です。
 今回から選手クラスや育成クラスの生徒たちの素顔や練習風景・競技会のレポートなどをいろいろと書きつづっていきたいと思います。

 第1回のテーマは「ジュニアオリンピック(以下JO)」です。正式名称は『全国JOCジュニアオリンピックカップ水泳競技大会』といい、1978年に創設された伝統ある全国大会です。夏季(8月下旬:長水路)と春季(3月下旬:短水路)と年2回開催されます。これまで多くの名スイマーを輩出している大会で、日本選手権やジャパンオープンなど、国内最高峰の競技会への『登竜門』となる大会です。選手クラスのあるスイミングクラブでは、このJOを目標にして、日々ジュニア選手の強化・育成に力を注いでいます。

 当然、TIジャパンでもJO出場は発足当時からの目標でした。実力のある子はいたものの、当初はなかなか標準記録を切ることができず(0.02秒差で行けなかったことも…)、どうしたものかと永瀬コーチと悶々とする日々を送っていたこともあります。昨年の夏季大会で1名の選手が念願の初出場を果たし、今回の春季大会では2名が本大会の出場権を獲得しました。また標準記録突破はなりませんでしたが、自己ベストを大きく更新して、本大会に手が届きそうなところまでレベルアップした選手も出てきました。彼らの今後の成長に期待しています。

 それでは今回の主役、標準記録を突破した2名の選手を紹介します。

 野口寿々子(のぐち・すずこ)さん
  13歳 中学1年 ※写真右
 松浦優美奈(まつうら・ゆみな)さん
  10歳 小学4年 ※写真左

 2人にインタビュー!

Q1:JO本大会に出場する種目を教えて下さい。
野口:13−14歳の100m自由形です。
松浦:10歳以下の50m平泳ぎに出場します。

Q2:担当の永瀬コーチは普段はどんな人ですか?
野口:普段はとても優しいです。レース前、筋肉をほぐすため一人一人にマッサージをしてくれたり、練習中や試合後にはいつも的確なアドバイスをしてくれます。たまに怒ると怖いですが…(笑)。
松浦:普段は優しくて、練習ではいろいろと詳しく指導してくれます。

Q3:「これはキツい…」と思う練習メニューは?
野口:全部キツいし、全部楽です(笑)。なぜならメニューは自分次第でつらくもなるし、楽にもできるからです。ウォームアップもダッシュすればキツいし、逆に流せばチョー楽です。でもやっぱり「100m×20本 1分30秒 ダッシュ」と言われたら泣きたくなります(笑)。
松浦:100m〜200mのダッシュ練習、キック・プルのダッシュ練習が特にキツいです。

Q4:ここ最近の練習では、どんなことを気に掛けて泳いでいますか?
野口:身体の軸に気をつけています。泳ぐときに身体の軸がブレてしまい、手の入水位置がバラバラになって真っすぐ泳げなくなるので、春季JOまでに直したいです。軸がブレると、キックとプルのタイミングが合わなかったり、呼吸時に顔が上を向いてしまうので気をつけたいです。
松浦:先月のJO予選の200m個人メドレーでは、あと0.34秒差で標準記録を切ることができませんでした。その悔しさを絶対に忘れないこと。平泳ぎのキック後に足をそろえること、素早いターンなど、細かい点まで意識するよう努めています。

Q5:JO本大会に向けた意気込みを聞かせて下さい。
野口:去年の夏季JOでは応援ありがとうございました!今回も精一杯頑張りますので応援よろしくお願いします!!必ず、自己ベストを更新してきます!!年齢区分が一つ上がって、決勝に進むのは難しくなりましたが、上を目指して頑張ってきます。
松浦:去年のJOでは50m平泳ぎが全国の小学3年の中で11番目のタイムでしたが、今年は去年勝っていた何人もの選手たちにタイムで抜かれてしまっているので、実力を最大限に出して、できるだけ上位に入りたいです。

 明るく負けん気の強い野口選手とおとなしくて控えめな松浦選手。対照的な性格の2人ですが、JOに賭ける気持ちはどちらも同じ。本大会は3月27日〜30日にかけて東京辰巳国際水泳場で行われます。持てる力を遺憾なく発揮して、良い結果が出せるよう頑張って下さい!

 次回はJO本大会とその他の競技会の結果をレポートします。

 TIジュニア・スイムスクール春休み短期講習  → http://tiswim.jp/event/junior-shortschool.htm
 TIスイム・ジュニア選手練習会 → http://tiswim.jp/event/training_junior.htm

【編集後記】今月号では来日したTI創始者のテリー・ヘッドコーチのインタビュー記事とレッスンの様子を紹介する記事を掲載しました。来日中のテリー夫妻をアテンドした塚本コーチによれば、初めてテリーのレッスンを見て、その圧倒的な指導力、リーダーシップ、仕切りのうまさなど、愛する水泳の世界に生きてきたテリーの存在の深さを感じたようです。そんな背景を知って読めば、インタビュー記事からテリーの魅力が伝わってくるかもしれません。(TIコーチ 中井博行)
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