2010年8月10日
TIスタッフコーチ 山口 工(やまぐち・たくみ)
山口コーチ

「柔道整復師」という国家資格をご存知でしょうか。あまり聞きなれない資格だと思いますが、「接骨院の先生」といえば、なじみがあるかもしれません。私は競泳の選手生活を10年ほどした後、この資格を取得して、医療現場で仕事をしていました。

この資格を取得するきっかけになったことは、競技生活の中で「故障」を経験したことです。腰と肩を故障して、痛みが強いときは日常生活も苦しい状態でした。スポーツで充実した時間を過ごすためには、健康で安定した体作りが必要不可欠です。この「安定した体」というのは「故障しにくい体」という意味です。

「故障」と聞くと、スポーツの競技者たちがハードな練習を行ったために起きるという印象がありますが、息抜きやリフレッシュといった目的でスポーツをされている方にも起こりうることなのです。トップアスリートのようなトレーニングはしていなくても、体のある部分が痛んだり、倦怠感が出たりという経験のある方は多いと思います。一般的にスポーツをすると体が丈夫になり、健康になると思われています。もちろん、その通りなのですが、運動の強度や方法によっては、そういった面だけではなく、体のパーツや機能に障害を起こす可能性も秘めているのです。

「故障しにくい体」を目指す場合、多くは筋肉のバランスや関節周りの柔軟性が着目されます。これらはすべて二次的な人間の構成物質で、人間そのものを支えているのではありません。では、人間は何によって支えられ、この地球上で活動ができているのでしょうか。それは骨やそれらで構成される関節です。

ここで一つ例を挙げます。家を建てようとしたときに床材、壁材、屋根板だけで丈夫な家が建つでしょうか。これらの建材は、柱などの建物自体を支えるものがあってこそ、機能するものなのです。柱もしくは柱の機能を持つものがないと家は建ちません。

これを人間の構成物質に置き換えると、床材や壁材や屋根板は、筋肉や靭帯などの軟部組織と呼ばれるものに相当します。人間も同じく、柱となる骨や関節が丈夫でないと崩れてしまいます。人間を支えている骨や関節の機能を強化せずに運動を続け、体にかかる力に耐えられず損傷してしまうのが「故障」です。

「故障」をしない方法は二つあります。一つは、運動しないで穏やかな日常生活を送ること。もう一つは、運動に耐えうる体を作ることです。スポーツをする人の多くは、そのスポーツが好きだから行っているのだと思います。どんなレベルであっても「好きなスポーツ」をするという、人生の楽しみの一つを簡単に切り捨てられる人はいないでしょう。

「故障」をせずにスポーツを長く続けるには、人間という構造物の丈夫さと機能を十分に身に着けることです。その「人間の構造物としての丈夫さと機能」は簡単に手に入れることができます。それは「毎日歩くことを怠らない」ということなのです。ここで言う「歩くこと」とは、仕事や通学などの日常生活動作ではなく、歩きやすい靴を履き、荷物を持たずに歩くことです。

人間を構成するすべてのパーツは歩くために存在しています。また歩くことで様々な部位の機能維持や向上を図ることができます。スポーツを思う存分に楽しむためにも、毎日10分程度から歩き始めてみてください。現在、私は荻窪スカイフィットと船堀スイムサロンで水泳指導を行っています。「歩行指導」も随時いたしますので、いつでも気軽にお声をかけて下さい。

【編集後記】人間が二足歩行を始めたときから腰痛は始まったという話をよく聞きます。その人間を構成するパーツが歩くために存在しているということも二足歩行をするために構成されたと考えれば納得です。故障の予防が原点に戻って歩くことなら、足腰に負担のかからない水中ウオーキングから始めるのもよさそうです。(TIコーチ・中井博行)
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