2010年7月10日
TIコーチ 中井博行
泳いでいるとき、自分の体がどのような姿勢で、どのように動いているのか、体中のセンサーを使って判断することが大切だとTIでは教えています。そのセンサーの1つに視線も加えてみようということで、デジカメを三番目の目に仕立てて、視線の映像撮影に挑戦してみました。
中井コーチ

スクールでのレッスン中に「今、何が見えていましたか?」と突発的に問いかけることがあります。すると「何が見えていたのかわからない」と答える方が多いことに気づきます。みなさん、目をつぶって泳いでいるわけではないので、どこかの何かが見えているはずなのですが、手足の動作に意識が集中していて、見えているものに意識が行ってなかったのだろうと推測しています。

それでは、どのようなときに問いかけているのかといえば、泳いでいる動作(特に呼吸するとき)の中で、頭を振り回しているときや頭を起こしているときです。本人はそんな意識はないのですが、頭を振り回せば、プールの底のラインも右に左に大きく振れて見えるはずです。頭を起こせば、水面から前方の景色が見えるはずです。TIのスイムでは、体の回転軸となるレーザービームを発射するのが頭頂部です。頭部を振ったり、起こしたりすれば、レーザービームの照準も狂うので、当然NGの動作となります。

視線撮影用デジカメ

水泳は自分がどんな姿勢で泳いでいるかがわかりにくいスポーツだと言えます。自分では見えないために確認できない部分もありますが、目で見えた景色から体の動きを推測することはできます。特に目がある頭部の動きは、視線の先に見えるものの動きに意識をおけば、レーザービームの照準や回転軸の曲がりなど、重要なポイントを十分に確認することができます。

そこで今回、泳いでいるときの視線を映像化できないかと思い、吉田コーチの協力で実験してみました。動画モードにした防水デジカメを写真のようにキック練習で足に装着して使うゴムバンドの「アンクル・ストラップ」にくくり付けました。これを鉢巻きのようにして頭に着け、おでこの位置にカメラがくるようにセットします。これでカメラが三つ目の目になります。シャッターを押してからスタートすれば、泳いでいるときの視線が撮影できるというわけです。

撮影に協力してもらった吉田コーチにはスケーティングで呼吸をしてもらいました。おでこのカメラがそのときの視線の動きを撮影します。プールサイドから撮影した映像に視線の映像を重ねて、次のような映像ができあがりました。

プールの向こう側の壁を狙った頭頂部からのレーザービームを回転軸にすると、呼吸するときの視線はプールのタイルの目地に沿って回転していることがわかります。頭を起こしたり、頭を振り回したりすれば、視線の先のタイルの目地がどのように動くかはイメージで想像できると思います。

泳ぎながら視線の先に何が見えているか、その見え方で自分の体がどのように動いているのか、考えながら、推測しながら、自分のフォームをイメージしていくこともよい練習になります。ぜひ、視線の先を意識してください。

【編集後記】先月号のペットボトル・スイム撮影時に今回の視線映像も一緒に撮りました。これまでも使えなかった失敗もありますが、いろいろと工夫して、参考になる映像を撮るのは楽しいものです。よいアイデアがあれば、お知らせ下さい。(TIコーチ・中井博行)

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