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中村コーチ |
TIに入ったばかりのころ、永瀬コーチと「いずれはTIでも大舞台で活躍できる選手を育てたいですね」と話したことを今でも覚えています。それが結実したのは2008年の初夏のことでした。その年の秋には他のスイミングクラブからの選手が何名か移籍してきて、選手クラスとしての体裁が整いました。その後も監督である永瀬コーチの下でサポート役を務めています。
そして今年の6月、ジュニアスクールがスタートして3年目に自分自身の目標だった純粋TI出身の選手を育成するための「選手育成クラス」を新たに立ち上げました。TIの選手育成クラスはレースに必要な技術習得や体力作りはもちろんですが、第一の目的は「身体にやさしい(=故障しにくい)フォームを身に付けること」にあります。
これはオーバーワークによる故障を引き起こしているスイミング業界の現状を憂いていることに他なりません。選手経験の浅い若年者は能力以上の練習量をこなし続けることで疲労が蓄積されてきます。肩や膝などに変調を感じながらもなかなかそれを伝えられず、思わぬところでけがをしてしまうことがあります。泳げない故障は選手のモチベーション低下を引き起こします。これは現在のスイミング業界にとって、練習の「質」と「量」のバランス配分を大きく左右する非常に難しい問題でもあります。
TIの選手クラスもほぼ1〜2カ月置きに競技会に出場していますが、「量」を重視するか、「質」を重視するかは、時期によって判断が難しいところでもあります。そこで正式な選手となる前の「育成クラス」の段階で、その下地を作り、後の「選手クラス」に橋渡しすることを目的としました。
そのような技術を磨く機会を「ジュニア選手練習会」と題して、この夏すべてのジュニア選手に向けて提供したいと考えています。今後も長期休暇の時期を中心として、年に数回、コンスタントに実施して行く予定です。またジュニア選手のフォーム改善を目的とした、あらゆる形式のレッスンイベントも計画していきます。
私は常に選手の身体を第一に考えるコーチでいたいと思っています。目的はどうあれ、対象者に水泳を長く続けてもらうことが指導者としての自分に課せられた使命であり、水泳が素晴らしいスポーツであることをいつまでも彼らに伝えていかなければなりません。この取り組みがジュニア選手、ひいては将来の競泳ニッポンのレベル向上に繋っていけばと思っています。
高速水着問題が一段落して、水着に頼らず地道に練習をしてきた10代のスイマー達が近い将来、国内のトップスイマーと肩を並べるまでになるだろうと予想しています。すでに今年の日本選手権ではその予兆を感じました。昔から日本人選手は海外の選手に比べて体格面で劣る一方、技術面に優れているといわれています。技術指導はTIの最も得意とするところです。それはつまり、TIのジュニア選手達がトップクラスの技術集団になり得る可能性を秘めていると考えています。今後の彼らの練習の取り組み方に期待します。 |