2010年6月11日
TIシニアコーチ 吉田智江
クロールと背泳ぎは体に1本の軸を通した長軸系(Long Axis)の泳ぎです。その軸を回転軸にして、体を左右にロールしながら泳ぎますが、体はロールしても、頭は動かさずに固定することが大切です。吉田智江コーチが頭を固定させる練習方法として、おでこにペットボトルを乗せて泳ぐ背泳ぎのテクニックを見せてくれました。
吉田コーチ

こんにちは、トータルイマージョン・シニアコーチの吉田智江です。

私が普段取り入れている背泳ぎの軸を意識する練習を紹介させていただきます。テレビで、おでこにペットボトルを乗せて泳ぐ有名選手の姿を目にしたことがあると思いますが、この練習は上級者でなければ…と、ちゅうちょしている方が沢山いらっしゃるのではないでしょうか。

『落とさない』という技術は頭を動かさないということです。それを示すためにペットボトルを乗せるのではなく、その技術を身につけるために乗せて練習するのです。ですから初めはできなくて当たり前と思って、ドンドン落として下さい。この練習は落とさなければ何でも良いというわけではありません。重心移動もせずに体を平らにしたままでソロリソロリと泳いでも意味はありません。

背泳ぎはクロールと同様、左右に重心移動をしながら進む泳ぎです。それには軸の意識が大切です。軸を中心に、軸を動かさず、右側、左側と交互に体重を移動させます。そうすることで、左右対称のキレイで安定したストロークが生まれ、真っすぐ進むことができるのです。

 

ペットボトル・スイム

『落とさない』ためにはどうすれば良いのか…。
まずは自分の癖を知ることです。おでこに乗せたペットボトルがどのように落ちるのかを観察します。右に落ちれば右に傾いていて、前に落ちれば顎を引き過ぎている、後ろに倒れれば顎を突き出している…というように、どの方向にボトルが倒れるのかを確認するためにもとても良い練習です。

落ちないようになっても、グラつけば、それは何故か?
ボトルが通る天井のラインを見つめ、ラインからの横揺れがないか?
真っすぐ進んでいるか? などを観察します。

癖を確認したら次はその癖の分析をします。例えば右に落ちる場合、どのタイミングで落ちるのかを調べます。右手を入水した時に落ちるのならば、右に体がロール(重心移動)する時、体または手の動作に頭がつられて右に傾いている可能性があります。入水と反対側に落ちるのならば、頭を残そうとする意識が強すぎて、逆に動いている可能性があります。前に落ちるのは顎を引き過ぎて足元を見ている可能性があり、後ろならば、天井を見るのに顎も上げてしまっている可能性です。

このように、ただ『落とさない』ではなく『なぜ落ちるのか?』を考えることに、この練習の意味があります。私の映像はボトルが上下に動いているのがわかります。私も分析をして調整しなければいけませんね。これは自分では解らなかったことで、ボトルなしでは気がつかなかったでしょう。ボトルスイムをビデオ撮影して見ると発見が増えます。

とは言っても、なかなかボトルスイムが可能なプールは少ないです。ボトルの中身はプールの衛生上から水限定です。ボトルを使用して練習しても良いかはプール側に確認してから行って下さい。荻窪スカイフィットはコーチに相談して下さい。プールの混雑状況を見て判断してくれます。ご利用の際はぜひ試して見て下さい。

【編集後記】簡単そうに見えて、そうは簡単にできないのがペットボトル・スイムです。いきなりペットボトルではなく、初めはテンポトレーナーをおでこに乗せて、ゆっくりしたテンポで落とさないように泳ぐ練習から始めるのがいいかもしれません。奥村コーチのTIスイム研究会と同様、繰り返し練習をすることで、体の隅々まで意識を行き届かせることに通じると思いました。(TIコーチ・中井博行)
 ©Easy Swimming Corporation