2010年6月11日
TIシニアコーチ 奥村知実
水泳はよく全身運動と言われます。頭から足のつま先、手の指先まで、体のすべての部分を使って泳ぐからです。普段は意識の届かない体の部分をどのようにして動かすか、どのように水泳に生かすか、というテーマで立ち上げたTIスイム研究会の目的を奥村知実コーチが紹介してくれました。
奥村コーチ

こんにちは。TIの奥村です。

私はカイゼン・シリーズのワークショップ(WS)を主に担当させていただいています。WSを担当して、また普段のスクールを見てきて、お客様が苦手としている体の使い方を復習して、上達する機会を作りたいと思い、研究会という学習の場を立ち上げました。

カンタン・シリーズのWSでTIの基本形を習得したら、次にその形をもっと楽に行うためには、自分の体をどのように動かせば良いかを追求(学習)していくことで、より楽で効率の良い、ダイナミックな泳ぎができてきます。

研究会では、普段意識していなかった体の部分を意識しながら動かしていくのですが、もちろんすぐには、思うように動きません。それは体の意識していなかった部分を動かす筋肉に伝える脳からの信号の神経伝達速度がまだ遅いからです。意識して、繰り返し動かすことで、筋肉の神経が刺激されて、神経が太くなっていき、伝達する速度も速くなってきます。そうなれば、体も瞬時に動かすことができるようになります。この神経伝達の信号を加速する役割を果たしているのがミエリン(※1)で、神経繊維の周りに存在しています。

優秀なアスリートは信号を短絡化するためのミエリンを豊富に持ち、脳が瞬時に判断して筋肉を動かす命令系統があるために優秀なのだと言えます。必要な場所に必要なだけのミエリンを形成するには、その信号を繰り返し伝えてあげることが重要です。したがって、技術をマスターするために、その動きだけを取り上げ、繰り返し行うことが上達への近道になります。

研究会ではその体の使い方(意識する部分)を一部分に絞って、水上(ランドトレーニング)と水中の両方から泳ぎに効果的な動作やドリルを行い、体に意識をさせることで上達を図っていきます。

これまでに肩甲骨、ゆるしめ(ゆるめる・しめる)、胸、腰の回転と4つのテーマを行ってきました。どれも違う方向性で技術を磨いていくのですが、究めていくと技術として繋がっていきます。水泳は学習(感覚を研ぎ澄ませる)が大事で、意識して行っただけ上達していきます。奥が深く、面白いです。学習の大事さ、面白さを私自信が競泳生活で得た技術や感覚を踏まえて、お伝えするようにしています。

6月はスカーリング研究会を行います。水の扱い、手の平の感覚を究めていくことが泳ぎに生きてきます。速い人の泳ぎのうまさはここにあると言っても良いほど、重要な技術です。スカーリングが泳ぎのどこに生きてくるのかも種目ごとに紹介いたします。

研究会は1回完結のレッスンですが、実施してみると、やはり継続していく方が、より体に染み込み、しっかり習得していただけるのでは…という思いが強くなってきました。今後は単発でも行いますが、継続して習得していただける内容を提案していきたいと思います。研究テーマのリクエストも受け付けていますので、何か気になっていることがあれば是非メールを下さい。みなさんがもっともっと水泳を楽しめるようなイベントをこれからも考えていきたいと思っています。

(※1)神経科学において髄鞘 (ずいしょう、myelin sheath) は、脊椎動物の多くのニューロンの軸索の周りに存在する絶縁性のリン脂質の層を指す。 ミエリン鞘とも言う。 絶縁性の髄鞘で軸索が覆われることにより神経パルスの電導を高速にする機能がある。
(Wikipedia:「髄鞘」より抜粋) 

【編集後記】人間は脳からの指令で体を動かします。正しい動作を繰り返し学習することで、しっかり脳に記憶させ、その動作を常に再生できるようにすることが上達です。全身の感覚を研ぎすまして、体の各部分を脳で意識できるようになることが重要なようです。繊細な感覚を養うことも水泳の上達には欠かせません。(TIコーチ・中井博行)

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