2010年2月10日
米国 Total Immersion Forumsの記事紹介
米国TIのディスカッション・フォーラムからTIの基本である抵抗のない姿勢とバランスを磨くことで、25ヤード(約22.5m)で7ストロークを達成したというハウツー体験を紹介します。
 トータル・イマージョンの米国サイトには、水泳についてディスカッションするフォーラムがあります。フリースタイル(自由形=クロール)、バタフライなどの4泳法、のほか、オープンウオーター、息継ぎ、トライアスロンといった、さまざまなテーマ別のフォーラムがあり、そのテーマに沿った話題をトピックにあげて、会員同士が議論する公開掲示板です。

トータル・イマージョン・フォーラム(Total Immersion Forums)
http://www.totalimmersion.net/forums

 そのフォーラムのフリースタイルに60歳の弁護士であるDon hさんがトピックを立てました。原題は”Shinji asked how I cut strokes to 7”で、直訳すれば「私がいかにしてストローク数を7まで減らしたかと慎司が問いかけた」というタイトルです。タイトル中のShinjiとはTIジャパン代表の竹内慎司のことです。ストローク数の削減を目指す多くのTIスイマーには参考になる記事なので、今月のTSMで紹介することにしました。

紹介するフォーラムのトピック
http://www.totalimmersion.net/forum/showthread.php?t=133

 Don hさんは超スロースイミングでストローク数を13から10に減らし、それから3日おいて、さらに10から7まで減らしました。米国独特のヤード制プールで25ヤード(約22.5m)を7ストロークまで減らすことができた自分の泳ぎを考察しています。

 プッシュオフで壁を蹴ってからグライドしている間はキックをせず、つま先をとがらせるようにそろえ、前方に伸ばした手は重ねる。ファーストプルはストロークに数えない(エントリー回数=ストローク数)ので、プルの間はキックをせず、プルの後の1ストローク目からキックを始める。1ストロークごとに1回キックする2ビートキックで7回キックする。プッシュオフとファーストプルで11ヤード進み、残りは14ヤード。これを7ストロークで泳ぐには1ストロークあたり2ヤード(6フィート)になる。

 これはDon hさんが解説した7ストロークを達成したときの泳ぎ方です。プッシュオフとファーストプルで25ヤードのうち11ヤードの距離を稼いでいることがわかります。彼は次の3項目を挙げて、ストローク数を13から10まで減らせたのは(1)と(2)の要因、10から7に減らせた要因は(3)にあると考えています。

  1. プッシュオフの後の「ファーストプル」をいろいろ試行することで、より速くグライド(滑る)するスケーティング・ポジションを学習した。
  2. (a)もっと遠くまでグライドする手段として「回転バランス」を改善した。
    そして(b) もっと推進力のあるキックをいつでも打てるように一貫して取りくんだ。
  3. よりよい「水平バランス」を学習するため、考え方も水の中の動作もフロント・クオドラント・スイミング(FQS)を激しく試行した。

この3項目を具体的に次のように説明しています。

1.プッシュオフ後のファーストプル
 グッド・スイマーは、頭からつま先まで水面と平行で、水平バランスを取りながら速く進むポジション(姿勢)を保って泳いでいる。アベレージ・スイマーの私は泳ぎ始めた後、なにか無駄な苦労をする前に速く進むポジションを体験する手段として、プッシュオフ後のグライドとファーストプル後のグライドを好機として利用することからスタートした。
 ファーストプルとその後のグライドの間、先行する手をまっすぐ前に伸ばすことから始めた。そして、いつも同じ角度でローリングする自分のグライド・ポジションをだんだんと見つけていった。このグライド・ポジションは著しく速く進み、とても楽しかった。これが遅くも速くも自分が泳ぐときのポジションになった。少なくとも片側だけなので、反対側の手でも同様のプロセスを通すことが必要だった。

 プールの壁を蹴った推進力を生かしながら、まっすぐに腕を伸ばしたスケーティングでもっともよく滑るローリング角度を見つけたことが読み取れます。TIの基本技術である「バランスの取れた抵抗のない姿勢」作りには、スケーティングのドリルが欠かせないということがわかります。

2.よりよい回転バランス
回転バランスとは、ローリングするたびにスケーティングでグライドする最適なポジション(多くもなく、少なくもなく)を体のどこも動かさずに保つことだと解釈した。手を動かさず、キックせず、足を広げてひらめかさず、つま先をピクピクさせず。うまくグライドすることに加えて、もしキックの前に正しいポジションで、すべてを静止する瞬間に到達できれば、もっと多くのことを得られるだろうとテリーや慎司の映像からも確信した。

 ローリングをして、スケーティングがよくグライドする最適なポジションを得るためには、体のどこも動かさず、静止した状態を保つことが抵抗のない姿勢を作ります。手や足をバタバタ動かすことがグライドの抵抗になると理解したようです。

(3)フロント・クオドラント・スイミング
ファーストプル後のリカバーとストローク後のリカバーのときに耳のあたりでひじを空中につりさげる(エルボーハング)。このエルボーハングによって、いつまでもグライドするだろう。なぜならば、水平で速いポジションを取る秘訣として、水中から出た手、腕、肩の一部、背中が十分な重さを持つからだ。これらのものは実際に陸上と同じ重さを持ち、グライドの後、ただちに水面下の水と入れ替わる。
 テリーは2番目のDVDで、これがメールスロットの手(手紙をポストに投函するイメージで入水する手)を取りやすくするという。それには前腕に気をつけなければならない。もう一つ遠くまで伸ばしましょう。初めに手、それから前腕、上腕、肩、そして背中と重さの順に入水するのである。このとき、すでに反対側の肩と背中が水中から出るようにスタートしているので、水中からテークバックしてよい。もう一つ遠くまで伸ばしましょう。もし慎司が言ったように水中フィニッシュをすれば、肩、背中、上腕、前腕、そして手と重さの軽い順にテークバックできる。

 ハイエルボーで構えたジッパースケートの姿勢は、前方四分円(フロント・クオドラント)内で腕の重みを利用した水平バランスを作ることができるので、常に前に重心がかかり、グライドする時間を延ばすことができます。さらにはメールスロット・エントリーによる伸ばした手の加速が体幹を使った推進力となり、水中フィニッシュによる速いリカバリーで、フロント・クオドラント状態を保った泳ぎができると考えたのでしょう。

 Don hさんがTIの基本である「バランスと姿勢」を実践して達成した7ストロークは多くのTIスイマーの参考になるのではないかと思います。安定した姿勢でバランスが取れていないと、超スローな泳ぎでもグライド距離を長くするのは難しいものです。読者の皆さんも、いろいろと考えながら工夫して、ぜひ自分のベストポジションを見つけ、ストローク数の削減をめざしてください。

 そのための参考となるTIジャパン制作のYouTube映像を2本紹介します。

バランスを改善するスーパーマングライド

滑るように泳ぐためのキックなしのスケーティング

【編集後記】
TIジャパン創設直後から日本でも米国のディスカッション・フォーラムを意識したインターネット上のコミュニティーを日本最大の会員制SNSであるmixi内に開設しています。mixiの会員で興味のある方はご参照ください。

Total Immersion Swimming(mixi内のコミュニティー)
http://mixi.jp/view_community.pl?id=273664

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