奥村 繁(在北カリフォルニア)
友人がトライスロンに参加するのをきっかけに、私も一念発起してトライアスロンに出場するためにトレーニングを開始しました。レースの三ヶ月前のことでした。フルマラソンの経験があるのでランには問題はなし。自転車も100km以上のロングツーリングは楽にこなしていたのでバイクも不安はありませんでした。問題は水泳でした。小学校で習った以来、本格的に泳ぐことは33歳の今になるまでありません。
今回のトライスロンはオリンピックディスタンスと呼ばれるショートで、スイムは1.5kmです。 初めは100m泳ぐのもいっぱいいっぱいでしたが、一ヶ月ほどでなんとか2kmを泳ぎ切ることができるようになりました。しかし、とんでもなく辛くてきつい! 水泳の練習は自分には拷問でした。 しかし、やらなくてはレースに出られない。いずれ考えているアイアンマンレースは3.8km泳がなくてはいけません

バイク、ランをかなり追い込んでも水泳ほどの負荷にはなりません。悲しいことにスイムはかなり追い込んで泳いで自分の全体力を出し切って泳いでも、1.5kmで30分を切るのがやっとでした。体力、筋力がないのだろうと思い、プルブイ、そして大きめのパドルを使った練習、上体の筋力トレーニングを行いました。下半身もバタ足を激しく練習します。 

それでもタイムは一向に縮まらない…酸欠になりそうになるぐらい必死で泳いでいるのに。

不安に輪を掛けたのがオープンウォーターでの練習でした。ウェットスーツを着て泳いでみると、数百メートルの距離にもかかわらず海での水泳は困難を極めました。

前に進まない…プールであれだけ激しく練習していたばた脚が空回りして前に進まないのです!波に負けないように強くキックしているうちに苦しくなって海水を大量に飲みました。おそらく心拍数も180くらいまで上がってしまっていたと思います。上がってくる頃には息が上がって完全なグロッキーに。

こんな状態ではとてもバイク、ランが持たない。きっと練習量が足りなすぎて、筋力がないせいなのか…レースの三週間前でした。

たまたま、米国の友人がTIメソッドの本を紹介してくれました。 ネットで調べてみると日本人のTIのインストラクターの竹内さんを発見しました。しかも自分の家のすぐそばです。藁をもすがる気持ちで急いで予約を取りレッスンを付けて貰いました。
レッスンを受けて最初に撮影したビデオです。

クロールをラクに泳ぐための3つのポイントを中心に、45分のレッスンでこれだけ変わることが出来ました。


目から鱗とはこのことです。

こんなにも水泳って楽だったの?
こんなにも水泳って気持ちよかったの?
こんなに楽しかったっけ?

レッスンが終わって急いでホームコースのプールにいって泳いでみました。目的は、とにかくどれだけ速く楽に泳げるようになっているか試してみたかったのです。タイムを計ってみると1.5km泳ぐのに30分かかるどころか26分を切って泳いでいました。

一日のレッスンで1.5kmのタイムを4分短縮…

あり得ないです。 しかし現実でした。

次の日に泳いでみると少しタイムが落ちていました。 竹内さんマジックは当日が一番効いていたみたい。でも、練習を続けていくうちに少しずつ動きが自分のものになっていきます。なにより、水泳の練習が楽しみになりました。苦しかった運動が気持ちよい運動に。マラソンと、バイクの練習と同じ感覚に近づいていきました。そしてレースの日を迎えます。

最初は人混みの中での水泳にとまどいましたがすぐにリラックスしTIメソッドを想い出しながら泳ぎました。教えていただいた息継ぎで海水はほとんど飲まずにすみます。サイティングを教えて貰っていなかったのでそこだけ苦労しましたが疲れることなくゴール出来ました。水泳で体力を使いすぎなかったおかげで、バイク、ランは全開で飛ばすことが出来ました。参加したレース

結果には自分でも驚きました。総合成績は33位/400人、男性の30−33歳の部で4位

と健闘できました。 スイムはゆっくり泳いだつもりなのに23分台でFINISHできていました(潮の流れがよかったのでプールでは考えられない数字です)。トライアスロンの盛んなカリフォルニアで行われているレースなのでそれほどレベルが低い参加者ではなかったと思うのですが、初出場にして大満足。もしTIに出会っていなかったら完走がやっとだったと思います。

今後はアイアンマンディスタンスの参加を予定しているので水泳に磨きを掛けていきたい。目標は2ビートキックで速く泳げるようになること。苦手な水泳が好きになれたことでトライアスロントレーニングが一層、充実したものになりました。ありがとう、TIメソッド!
奥村 繁さんはカリフォルニア州シリコンバレーにあるスタンフォード大学の研究所に勤務するドクターです。北カリフォルニアは全米で最もトライアスロンの盛んな地域の一つで、現地の日本人の方も多数挑戦しています。

 ©Easy Swimming Corporation