私が水泳を始めたのは2年ほど前。カラコルム山中の遺跡を歩き回る時、高山病にならないよう心肺機能を高めようとの気持ちからでした。学生時代2度も体育の単位を落としかけた私。できそうな運動といえば水中で手足を伸ばすことぐらい。よろず<大変なこと>は苦手な性格なのです。

最寄りのフィットネスクラブへ通い、まずプールで自分勝手に泳ぐと激しい頭痛に悩まされました。そこでスイミングスクールへ入り基礎から学ぼうと思いました。競泳出身のコーチはとってもステキ!大人気です。私とてできればみんなと一緒に頑張りたいところでしたが、クロールの指導は、ハイエルボーからしっかり掻いて、しっかり蹴るというものでした。数回で私は身体が壊れると感じました。鍛えるどころか関節だか筋肉だかが痛くなって、家事労働にも支障をきたすほど疲れました。

私のように50代で運動を始めた者にも長く続けられる泳ぎはないものかと思っていたところ、PCサイトで出会ったのが<ラクに泳ぐ>トータルイマージョンです。早速クロールのDVDを取り寄せ、まだ荻窪に専用プールがなかったので、私は孤軍奮闘。いくつものドリルは映像のようには行かず、進みません。ある日スタジオでヨガのプログラムを取ってから泳いだところ、いつもよりずっとスムースにラクに泳げたのです。ドライエリアで身体を充分柔らかく伸ばしておくことの重要性を知りました。これは後にバランスについて考える時、大変役に立ちました。またTIは疑問があればメールでお尋ねすると、すぐ親切にご回答いただけることも、心強いことでした。

次の難問はあのひどい頭痛の元凶とも言うべき息継ぎの克服です。実のところスニーキーブレスはDVDではわかりにくい部分でした。とにかくバランスのためにも両側呼吸を心掛けました。普段の自然呼吸にできるだけ近く泳ごうと、不自然に息を止めず、吐くことに集中しました。3回に1回の呼吸にリズムができてくると、苦しさを感じなくなっていることに気づきました。もしプールが25mあったら溺れる状態だった私が、半年後には25mでは止まりたくないと思うようになったのです。

死海浮遊体験

私は速く泳ぎたいとは思いませんでしたが、効率よく泳ぎたいと思いました。キックの対角線の力といってもプルと同期することは難しいことです。何回もDVDのドリルを見直し、『カイゼン』にも出て担当コーチのアドヴァイスを受け、タイミングはみんな少しずつ違うことがわかりました。呼吸のコントロールができて、バランスすることに集中しさえすれば、少しの力で身体は気持ちよくすべるように進みました。苦しい泳ぎから、自分の泳ぎを作って行くことは楽しいことに変わっていきました。体幹を伸ばすようにするうち身体も少しずつ変わって、関節が柔らかくなり、故障しにくくなりました。

また年齢を経るととかく無気力になりがちですが、こうして一つ一つフォーカルポイントをクリアーしていくことで、精神的な実生活の中の問題もカイゼンしようと意欲的になれました。

TIの考え方は実に合理的です。バランスを崩すだけのプルブイも使わないし、無駄な力を総結集してガンガン泳ぐことも奨励していません。更に興味深いのは合理的でありながらスニーキーとかビーム、メールスロットなど本質的な説明がわかりやすく詩的に表現されていることです。従来の水泳指導は強い筋力に頼った西洋的な動きですが、アメリカ生まれのTI方式が、ヨガや太極拳のようにヒトの身体の動きに即した柔軟で東洋的であることもおもしろいと感じます。

運動嫌いの私がこうしてほとんど毎日歩くように泳いでいます。タイヘンではないからこそ私にも続けられるのです。

それにしても泳ぎはある種孤独なもの。練習会のとき竹内代表は、「私は皆さんが泳ぐ時いつも一緒にいてあげるわけにはいかない。だから独りで練習する方法を教えます」とおっしゃいました。私は最寄りのジム付属のプールで、いつもこの声を聴きながら泳いでいます。私はまだまだ変われると自分に期待しながら!

岩井陽子さんは2006年の秋にカンタン・クロールDVDでTIスイムの練習を独学で始めました。約1年後の2007年の秋にスクールに参加しナマのTIスイムに触れ、練習会やカイゼン・ワークショップにも積極的に参加することで技術を磨き続けています。
 ©Easy Swimming Corporation