●多くの人が陥る「左右のストローク毎に息継ぎ」
背泳ぎ以外の3種目においては、息継ぎする時を除いて顔が水中にあるので口が水面上に位置した時点で必然的に息継ぎをしなければいけません。これによってタイミングとリズムを否応なしに意識することになります。しかし背泳ぎの場合は、息継ぎを制限するものは殆ど何もありません。
去年の12月にマスターズの大会で400メートル個人メドレー(IM)に出場した時に、問題があることを認識しました。背泳ぎでは、手を掻くたびに息を吸ったり吐いたりしながら各ストロークサイクルで2回息継ぎをしていました。すばやく浅い呼吸は過呼吸を引き起こし、続く平泳ぎとクロールでは呼吸を整えようとする努力もむなしく息も絶え絶えになってしまいました。
この大会後数週間して、再び個人メドレーの練習で同様の経験をしました。このため一方の手を上げると共に息を吸い、もう一方で息を吐く練習をしました。新しいタイミングの取り方は難しく、いくらやっても息を吸っている時にしぶきでむせてしまうことが多々ありました。口や喉に入った水を吐き出すまでには更なる呼吸サイクルを要し、「息切れ感」を増大する結果になりました。という訳で、この方法も失敗でした。
それから、1月のある午後、ヨガと筋力トレーニングを終えてTIスイム・スタジオにあるエンドレスプールでのんびりと背泳ぎで泳ごうと思いました。そして息継ぎのリズムを色々試してみました。初めは、以前と同様によくむせてしまいましたが、そのうちクロールでは息を吸う時は短く速やかに、吐く時は割とゆっくり長めにすることを思い出しました。背泳ぎではクロールに比べてゆっくりと息を吸う時間があるがために、むせる機会も増えるのではないかと思いました。
という訳で、右手の入水直前に短く速やかに息を吸い、それからそのストロークと右腕のリカバリーの始まりまでを通して息を吐く実験をしてみました。それでもまだ違和感がありました。クロールでは自然に左側で息継ぎをする癖があることを考慮して、今度は左手の入水直前に短く速やかに息を吸ってみました。するとどうでしょう、これは正に私が模索していた息継ぎのリズムだったのです。
●息を「吸う・吐く」タイミングと時間のコントロール
40年もの背泳ぎの水泳経験を通じて、ようやく「しっくり」くる息継ぎに出会えたことにとても興奮しました。慣れてきたところで更に実験を進めて、息を吐いている間は殆ど顔が水に覆われている状態にして、息を吸うわずかな間だけ顔にかかった水を取り払ってみました。元世界記録保持者のレニー・クレイゼルバーグが以前、この様に泳いでいたのを見たことがありますが、自分でやってみることはありませんでした。
顔が水で覆われることで必然的に鼻から息を吐くこともあり、更に気分よく泳げるようになりました。また、これによって初めて、他の種目に共通する(息継ぎと息継ぎの間に顔が水面下にある)背泳ぎでの呼吸のリズムをはっきりと感じ取ることが出来たのです。ストロークのリズムは長いこと意識してきましたが、生まれて初めて背泳ぎでの息継ぎのリズムをしっかり認識できました。
余りにも気分がよかったので、各種目で同数の息継ぎサイクルに集中しながら、エンドレスプールで個人メドレーのサイクルをいくつかこなしました。普通、長軸のストロークに限ってストローク数を2倍にします。例えば、バタフライ8ストローク、背泳ぎ16ストローク、平泳ぎ8ストローク、クロール16ストロークといった具合です。種目ごとに息継ぎを数えるのも同様の効果がありますが、これは息継ぎのリズムに集中する効果を更に高めてくれました。
休憩を入れずに、種目ごとに息継ぎ8回のラウンドから始まって各10回、各12回、各14回、各16回まで終えました。すなわち、クロールで息継ぎ8回(16ストローク)のシリーズを終えたらすぐにバタフライで息継ぎ10回(10ストローク)を始めます。全種目、息継ぎのリズムに集中することで、個人メドレーを今までになく充実して泳ぐことができました。
●背泳ぎの息継ぎのポイント
- 息を吐く、吸うことを無意識に行わず、ストロークのどこで吸い、どの間吐いているかを泳ぎやすさで決める。
- 吸うときはすばやく、吐くときは長い時間をかける。
- 鼻から吐くことで顔を沈めることができる。
- 他の種目同様リズムをつくる。他の種目と組み合わせて泳ぐときも呼吸のリズムを意識する。
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