TIディスカッション・フォーラムでの最も人気のあるテーマは、対角線の力とツービートキックです。左手の入水は右足が、右手の入水は左足がきっかけをつくる、このキックは他のどのスタイルよりも、長距離の水泳やフィットネスの水泳のための「持続的なストローク」に適していると言えます。以下のポール・スミス氏によるスケーティング練習は、対角線の力やツービートキックの重要な調和を学ぶための練習の中でも特に優れていると思います。
対角線の力によるツービートキックは、入水する手のきっかけを反対側のキックで作り出すため「クロスキック」とも呼びます。このクロスキックの感覚を習得するドリルのためのステップをご紹介します。
  1. 普通にバタ足をしながらスケーティングドリルをします。
  2. 次にスケーティングドリルにおいて、伸ばした手と同じ側の足のキックに集中します。左側を下にしてスケーティングをしている場合、左足のキックです。キックの蹴り幅やスピード、力強さなどを変えることで、「右側」の腰と肩の動きがどうなるかをよく見ます。このときの基本姿勢は、右肩は水面からほんの少し出ていて、腰はそれに沿ってまっすぐな状態です。
  3. 体の脇(正確には前ポケットの位置)で畳んでいる手に注目します。左側を下にしてスケーティングをしている場合は右手です。この手はこれから入水動作を行う手です。
  4. 腰の上部あるいは体の中心部から始まるような、長くしなやかなキックを意識します。また水面より深い位置でのキック、浅い位置でのキック、幅を持たせたキック、コンパクトなキック、あるいは膝の曲がる角度やつま先の角度などを色々試しながら右肩の反応を意識します。まず何をするのか動作や状態の範囲を決めて、その範囲をせばめることで体の変化が起きるぎりぎりの点を見極めていきます。
  5. またタイミング、様々な筋肉の収縮と弛緩の比較、そして腰の動きを含めた全体像などについても試してみましょう。孤立した要素として、違うスタイルのキックがいかに体を推進させたり、また抵抗によって減速させたりするかを意識して下さい。最も効果的な状態や動作を1つ、2つ選ぶために、私は楽しみながら回数を重ね、比較していきました。

また、「正しくない」キックを試してみる事も出来ます。すなわち左手を伸ばした状態で、右足でキックをした時に右側の腰と肩がどのように動くのかを意識します。「クロス・キック」と「同じサイドのキック」を織り交ぜた時、それらは互いに逆らう波のように反目し合って減速してしまったり、或いは本来の片側からもう一方の側へのスムーズなシフトを、バラバラで破壊的な動きにしてしまいます。フォーラムに掲載されたコメントには、「リズムが壊された時、パワフルでリズミカルな感覚から、傷ついた魚のような無秩序なもがきに変貌してしまう。」とありました。

この認識を普通の泳ぎに取り入れるには、50ヤード(メートル)のリピート練習をお勧めします。始めの25ヤードはスケーティングで泳ぎ、次の25ヤードでは普通に泳ぎます。奇数の50ヤードのリピート練習では、スケーティングの時は左足と右肩および右腰に、そして普通に泳ぐ時は右手の入水に注意を払います。偶数の50ヤードのリピート練習では、反対側に注意を払います。基本的な調整を一度理解したら、今度はツービートキックをする際にいかに小さな動きしか必要としないかを試してみて下さい。これはストリームラインを改善し、力を集中させるのに役立ちます。

このアプローチはすべての人に効果があるとは断言できませんが、私自身は練習の結果、50ヤードのタイムが12秒縮み、スイミングゴルフのスコアは9ポイントも減らすことができました。

ポール・スミスは、トライアスロン選手として2年目を迎えました。TIスイムのテクニックと考える練習を重視したことで、昨年のスプリント水泳とオリンピック距離のトライアスロンでいい結果を出しただけでなく、今年のハーフ・アイアンマンのイベントのためのトレーニングに自信がもてています。彼はオハイオ州シンシナティで神経学のコンサルタントおよび作家として活躍しています。
 ©Easy Swimming Corporation