デイブ・バッラはニューヨーク州在住のTIコーチで、カンタンシリーズのDVD(除クロール)でTI代表竹内と共にコーチの見本泳を行っていますが、彼の得意分野はオープン・ウォーターです。TI創設者のテリー・ラクリンとはシーズンを通じて共に練習するパートナーで、1日泳ぐ距離は5キロを超えます。そんな彼がまとめたオープンウォーターが好きな理由ベスト10は?

第10位:塩素がない

1年の間オープンウォータースイムの期間だけは、皮膚や髪の毛が塩素でバリバリになる心配がないというのはうれしいことです。もちろんオープンウォーターでは日焼けの心配がありますが、防水効果の高い日焼け止めを頻繁に塗ればよいことです。なお皮膚が擦れる部分には事前にワセリンやボディグライドを塗っておくのも忘れないように。

第9位:霧

そう、霧です。濃い霧の中を泳ぐのは本当に不思議な気分になります。霧の中をドライブするとぶつかるかもしれないという恐怖が生まれますが、霧の中を泳ぐと反対に小さな湖でも永遠に泳げる気分になります。また霧が立ちこめるのは早朝なので、水面も鏡のように平らです。このような水の中で速度を上げながら「静かに泳ぐ」ことを意識するのはとても練習になります。

第8位:雨

ここで言う雨とは、土砂降りの雨のことです。大粒の雨が終末速度となり水面に落ちてくるのを、全身で感じとることができます。背泳ぎになって、ゴーグル越しにまばたきをせずに雨が落ちてくるのを見るのも楽しいものです。なお雷は別問題です。雷の落ちる音が聞こえたら、音がやんでから30分は水の中に入るのを待たないといけません。

第7位:波

テリー・ラクリンと

私は波が大好きです!サーファーの好む「ビッグ・ウェーブ」ではありませんが、20ノットの風を受けると私の心臓はバクバクしてきます。荒い波のラフ・ウォータースイムほど直観に反したスポーツはありません。水と闘おうとすればするほど、水に負けてしまいます。波と平行に泳ぐときは、ふだんよりも広めにアンカーをかけます。こうすることでより安定した姿勢を作ることができます。また頭を上げないようにすれば、風や波の抵抗を減らすことができます。息継ぎのときはじっくりあせらずに行います。もし体が回りそうになるほど波の力が強いときには、波に体をまかせて「コークスクリュー(クロールと背泳ぎを1ストロークずつ交互に行う)」で泳ぐのもよいでしょう。

第6位:生物

多くの人は海で泳ぐと「サメが恐い」と言います。確かにサメのいる場所で泳げば恐いですが、もっと恐いのが「クラゲの幼生」です。普通のクラゲは見て避けることができますが、幼生は小さくてわかりません。そして皮膚の間に入ると痛みとかゆみが発生します。湖では「水ヘビ(毒はもっていませんが)」に遭遇します。バハマのキャンプで泳ぐときに大切だったのは、バラクーダーを見るたびにフォーカルポイントが飛ばないようにすることでした。

第5位:景色

最も美しい瞬間は夜明け前と夕暮れでしょう。夜明け前は特に美しいです。不透明な水の色が次第に透明になり、太陽の光が水面に差し込んで水の中に消える様は思わず目を見開いて見てしまいます。

第4位:建築物

ニューヨークのブルックリン橋は毎年何百万もの人が車で、数千人が歩いて渡ります。しかし泳いで渡る人は約150人、そして橋をくぐって川沿いに泳ぐ人はたったの30〜40人です。マンハッタン島一周レースのときに私は経験しましたが、巨大な橋を泳ぎながら見上げるのはボートから見るのとは全く違った景色でした。

第3位:レース前の戦略

1)レースに参加できそうな友人を見つけて「このレースは目標物もあってやさしいからぜひやってみようよ」と誘います。2)数週間前に「私と同じタイムで申告して申し込んだのかい。私が先導するなんて考えないでくれよ。あなたの後をついていくからさ」と謙虚にします。3)普通はお互いに「後をついていくから」ということになって、本番では譲り合って前に進まないのでは?と心配になります。4)そして当日になり、泳ぐ前に十分カフェインを(コーヒーで)摂取した我々には、譲り合いの精神などとっくに消え失せたのでした。

第2位:レース後の分析

レースが終わり、結果が掲示されるときも興味深い瞬間です。「あれをすればよかった」「あれができたのに」と後悔したり「こいつはいったいどこにいたんだ?」「来年マークするのはこいつだ!」などと考えるのです。自分より数メートル先を泳いでいる人は自分とは全く異なる経験をしているかもしれません。レースを分析するときには、実際に泳いだ時間よりかなり長めに(とても詳細に)分析しようとします。

第1位:友人たち

妻のクレアと

確かにオープンウォータースイムは競泳とは異なるもののスポーツの一つであり、ほとんどのイベントは競争することが前提です。しかしそれはオープンウォータースイムの魅力の一面にすぎません。一人でレースを泳いで勝つよりも、多くの友人と一緒にレースで泳いで楽しむことの方が大切です。オープンウォータースイムはある特定の人たちを惹き付けるようで、レースに参加するようになってからのこの10年で毎年レースで会うのが楽しみな友人がたくさん増えました。18年目の結婚記念日に妻のクレアと一緒にレースに出て以来、オープンウォータースイムは夫婦で楽しむイベントに変わりました。

 ©Easy Swimming Corporation