今回はトータル・スイム・マガジンで初めて日本のスイマーの方の体験記を取り上げます。人工膝関節を使用する土門伸行さんはキックを使わず体幹で進む泳ぎを研究されていましたが、TIスイムやTIスイムを実践するマスターズチーム(オーレ港北)との出会いにより、よりラクで、より速い泳ぎを目指すことができるようになりました。
(左写真:日本身体障害者水泳選手権で優勝)

スタートを待つ

高校では水泳部で競泳をやっていました。大学のときは競泳から離れ、ライフガードとして海で活動していました。社会人になり、しばらく運動から離れていたのですが、突然何かにチャレンジしてみたくなり、トライアスロンを始めました。再び競技スポーツの世界に戻ってきたのです。トライアスロンでは毎年記録が上がって行き、大会によっては1桁の順位に入ることもありました。

バイク、ランでパワーを残しておくため、スイムは2ビートで泳ぎ、1500mを楽に泳ぎきることを目標としていました。TIスイムを知っていればよかったのですが、この頃はまだ出会っていません。目標も次第に高く持つようになって行き、これからステップアップしようと思っていた矢先に病気になり、突然目の前が真っ暗になりました。

▽病気で中断

右足に激痛が走るようになり、次第に椅子から立ち上がることさえもできなくなってしまいました。病院で検査後、100万人に1人という割合で、骨に悪性の腫瘍ができる病気であると宣告され、大変ショックを受けました。外科手術と抗がん剤治療で約1年入院しました。入院中は、再びトライアスロンに出場することを目標に自分を奮い立たせていました。

大会風景

無事に退院することはできましたが、右足太ももの筋肉はほとんどがなくなり、骨も人工関節に変わりました。もう走ることができません。生きていることに感謝をすべきなのですが、障害者になった自分を受け入れるまでに時間がかかりました。

▽水泳再開

退院後、リハビリを兼ねてプールに行ってみました。キックで推進力をあまり得ることができないのですが、なんとか泳ぐことができます。嬉しかったです。そこで、自分なりにキックを使わない泳ぎを研究し、体幹+ローリングのパワーで進んで行く独自の泳ぎを見つけました。この泳ぎで障害者の水泳大会に参戦するようになり、再び競泳の世界に戻ってきました。

▽TIスイムとの出会い

チーム練習

会社の友人に「TIスイムを知ってますか?まったく発想が違う泳ぎ方なんですけど…」と、キックをあまり打たず、体重移動で進んでいく泳ぎ方があると教えてもらいました。これがTIとの出会いです。早速TIのサイトで動画をチェックしたところ、これまでの泳ぎと本当に違っていたのでビックリしました。

キック力が弱くなった自分にとってTIは強力な武器となる泳法でした。オーレ港北というマスターズチームでTIを実践していることを知り、即参加しました。TIでは体が想像以上にグィーッと滑るように進む感覚がありビックリ。あの滑るような感覚、まるでサーフィンのテイクオフ時にサーフボードが波に押し出されるところと似ていて、スピード感も最高です。呼吸をするために頭を上げると、抵抗が増え失速するためもったいないくらい。

すっかりTIにハマりました。泳いでいると、TIを知らない人から声をかけられることもあります。なぜあの泳ぎで進むか不思議なのでしょう。

オープンウォーターレース出場

▽マスターズ大会出場

2005年からはマスターズ大会に出場、現在も記録は上昇中です。2006年にはオープンウォーターへの出場も果たしました。3.2kmを泳ぎましたが疲れ知らず。楽に泳げますというのは本当でした。

▽今後の目標

人工膝関節使用者として、すべてのことで銀河系一になることですね。(笑)
競泳でトップを目指すこと、トライアスロンへの復活…などやりたいことがたくさんあります。TIをキッカケに自分にできることの幅が広がりました。

トータル・イマージョン・スイミングとの出会いが土門伸行に再びアスリートとして復活する希望をもたらしました。泳げる喜びを楽しみながら記録を伸ばしていけるのは闘病生活の苦しさがバネになっているのかもしれません。6月初めの大会では100m自由形と200m個人メドレーで標準記録を突破、8月のジャパン・パラリンピックへの出場権を手にしました。彼はハンドルネーム「くまの」で毎日mixiにイラスト付きの日記を書いています。ぜひ応援して下さい。日記はこちらから→
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