これまで息継ぎについて、「息を吐くのに集中することの大切さについて」などの基本的な技術について説明してきました。今回は、クロールのストロークのリズムに合わせた呼吸法について考えることで、よりスムーズなクロールの泳ぎを目指しましょう。

息継ぎの方法として、初心者の方やコーチをしてもらった経験のない方が間違えやすいのは次の3つです。

  1. 息継ぎのために頭を持ち上げる。こうすると、長く伸ばした体の姿勢がくずれてバランスが悪くなるだけでなく、頭の重みを支えるために手をつっぱることになり、無駄なエネルギーを使うことになります。
  2. 頭だけを回して息継ぎをする。この奇妙な動きは、筋肉に負担をかけ、首や背骨をねじってしまい、さらには泳ぎのフォームを崩してしまいます。
  3. 流線型の先端がなくなる。息継ぎのときにに伸ばした手が沈んでしまうか、水をかき始めてしまうのは初心者の方の間でほぼ共通しています。水をかき始めれば推進力が得られますが、本来流線型の姿勢を保つことで使わずに済むエネルギーを使うことになります。

空気を十分に取り込むだけでなく、体を伸ばして効率のいいストロークを維持する効果的な息継ぎのフォームを体にしみ込ませるために一番いい方法は、TIクロールのスケーティング、アンダースイッチ、そしてジッパースイッチのドリル練習をすることですが、クロールを泳ぐときには息継ぎの技術を強化するフォーカルポイントを決めて泳ぐと効果があります。以下は私自身が息継ぎを磨くためによく使うフォーカルポイントです。

●おへそで息継ぎをする。
本当にへそで呼吸をするわけではありませんが、まるでそうすかのように体を回転することで、頭だけを回すクセを改善することができます。おへそを水面から出すつもりで体を回転させ、頭はその回転の動きに委ねます。顎と胸骨のラインをまっすぐに保つことに集中すれば、あごは動きに沿ってさらに外側に回転し、体全体を十分に回転できるうえに、体がうつ伏せのままの状態で頭だけを回転するのを避けられます。また、時々自分の「息継ぎする場所」が脇の下から15センチ下にあると想像します。体幹のその部分を水面から出すつもりで息継ぎをすると、十分に空気を取り込むことができます。

●頭頂部を下げたままにする。
息継ぎと息継ぎの間に、顔を下に向けて頭の先で進むようにすると、最もよくバランスできます。「体と背骨のライン」の端である頭頂部からレーザービームが発射されていると考えます。息継ぎと息継ぎの間、そして息継ぎの最中には、常にレーザービームが水平に、あるいはプールの壁に当たるように頭を下に向けます。これを身につけるために、主に3つの方法があります。:(i)体を回転させて息継ぎをする時、頭頂部はできるだけ水面近くに位置するようにする。(ii)息継ぎをしながら頭の側面と背部を押さえ込むようにする。( iii)息継ぎをする時は、肩に向けて顎を引くようにする。

●息継ぎの最中にできるだけ体を伸ばす、また息継ぎを終えてもそのまま体を伸ばす。
まず息継ぎのときに水上にある手(リカバリーしている手)ではなく、水中にある手(伸ばしている手)を意識します。手首から先を脱力させ、手を伸ばした状態を息継ぎの最中、そして終わったときにも維持します。手のひらで水を軽くつかむ感覚が身につけるようにしましょう。こうすれば息継ぎのときに今まで以上の推進力が得られるとともに、それに続いて効果的なストロークができるようになります。体を回転して息継ぎをするときは反対側の手は伸ばしたまま、体を元の位置に回転するのと同時に手をかき始めるにするのがポイントです。そして、手首から先を脱力して指先を常に下げていれば、次のストロークはさらに力強くなるでしょう。

息継ぎテクニックの練習

25〜100メートルの同じ距離を3回泳ぐセットを6〜10分繰り返します。泳ぐときには以下のフォーカルポイントだけを意識します。息継ぎは3〜5ストロークで1回行います。
 ・1回目:へそで息継ぎをすることを意識する
 ・2回目:レーザービーム(頭頂部を下げたままにする)
 ・3回目:息継ぎのときに手を伸ばしておく
各回の間は、体を沈めて口から息を吐き、水面に戻ってすばやく息を吸う「ボビング」の練習を3回(短い距離のリピートの場合)から6回(長い距離のリピートの場合)行います。セットとセットの間には1〜2分の休憩を入れましょう。一番ラクに息継ぎできるフォーカルポイントを記憶して、練習してみましょう。左右の息継ぎでフォーカルポイントが異なる場合もあります。

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