他の多くの人たちと同様に、私も初のトライアスロン大会での屈辱的な体験を経て、トータル・イマージョンを探し出しました。4分の1マイルのオーシャンスイムの時私はこの苦い体験を通じて自分が全く泳ぎを知らないことを思い知りました。ウィンドサーフィン、カヤック、ヨット、スキューバダイビングなど一通りのウォータースポーツをこなす海大好き人間であるにもかかわらず、正式に水泳の指導を受けたことはなく、従って完璧な「人間の泳ぎ」で泳いでいました。息も絶え絶えに喘ぎながら、まるで獣群に拾い集められるのを待つ負傷した獣のように脱力して仰向けになりました。ほとんどパニック状態で、ライフガードに救助されるのを待ち望みながらも、腕を持ち上げる力も声を張り上げる気力もほとんど尽きていました。今となっては冗談で笑い飛ばせますが、その時の状況は笑うどころではありません。私たちよりも7分ほど遅れてスタートした女性スイマーたちの波が、2つ目のブイを回る前に自分を超えて泳ぎ去りました。ビーチで声援を送る人たちのお陰でよろよろと岸にたどり着き、その後レースを何とか終えることができました。
10ヵ月後、私は別人になりました。まるで体の一部が魚と化したかのようです。毎朝ほとんど1マイル半(時には波が荒くても)楽しみながら海で泳いでいます。今までとの大きな違いは、必要なだけの空気を十分に取り込めるようになったことでしょう。最近シリーズで取り上げられたトータル・スイムの息継ぎのテクニックの記事を読むと、パートナーも同様にラクに息継ぎをするために補佐するポイントが記されています。
私の場合は、6ヶ月前にTIのスイム・スタジオでの1日ワークショップを受講したことがきっかけでした。このワークショップでは、体を伸ばして抵抗を減らすこと、手を使って体を常に長く伸ばすこと、頭をまっすぐにすること、そして空気のある所まで丸太のように体を回転すること(この時頭はただ動きに沿って)、などのTIの基本的メカニズムを学びました。ワークショップ後1ヶ月以上、主にアンダースイッチを練習してこれらの動きを習慣化するようにしました。練習を重ねるうち、体を回転して息継ぎをする時に、リラックスして頭を水中に委ねれば委ねるほど水が頭を支えてくれるという不思議な感覚を含め、水に対する貴重な認識を深めることができました。そして、空気は無理して取り込むのではなく、むしろ差し出されたものを受け取るのだということも知りました。
2ヵ月後、カリブ海のマルチニーク島周辺のセーリング旅行にテリーが加わることになりました。私たちは午後になるとアンカーを下ろして1時間ほど泳ぎ、全体のストロークに継ぎ目なく息継ぎを入れる練習に集中しました。息を吐き出すことに集中するようになって、私にとっての画期的な変化が訪れました。息を吸い終わってすぐにゆっくりブクブクと息を吐くようにし、顔が水面に近づく直前には力を込めて息を吐き出します。初めテリーが、息を吐くことに集中するようアドバイスしてくれた時には、何か仕掛けがあるのではないかと疑いましたが、トータル・スイムの記事で、二酸化炭素の蓄積により体が空気をほしがる状態を招くことを読み、気道と体内の血流から二酸化炭素をできるだけ完全に一掃するのが大切であることを確認しました。また、その記事を読んで、「裏返しの息継ぎ」を実践して、ランニングでの呼吸も改善しました。
息を吸うことは考えずに、吐くことに集中するようになり、速度を上げて泳ぐ時に常にリラックスすることに集中するのにもこれが使えることがわかりました。体が多少疲れてきた時には、さらにしっかりと息を吐くようにします。そしてもちろん、このリラックス感によってまるで手に手を取りながらスローなダンスを踊るようにラクに息継ぎができるようになります。
これらの息継ぎ練習をしながら35年前にミュージシャンとして学んだ息使いを思い出しましたが、まさか水泳にも適用されるものであったとは想像もしませんでした。バス(トランペットが私の持ち楽器でした)の練習の時にお腹の底(横隔膜)から速く息を吸うことを習いました。バスの演奏者はこのようにして肺をすばやく満たし、お腹から上を使う息継ぎを行います。思い切りお腹を膨らませれば膨らませるほど、すばやく空気を取り込めることを習いました。これは、フォームを崩さずにストローク率を上げるテクニックを身に付けた今、とても有効な方法でもあります。
人が胸部を開いて肩を上げながら深呼吸をする様子を思い描く時、腹式呼吸はリラックス感と水雷のようにストリームラインに伸びた体幹を維持する効果があるように思います。TIスイマーの皆さんにも、実際に自分で実験をしてみて様々な意見をお聞かせいただきたいと思っています。
その間に、私は去年屈辱的な経験をした同トライアスロン大会への参加申請を郵送しました。去年とは違い、今年は自信と喜びに満ちて大会の日を心待ちにしています。
妻のローリと共にレベンジャー株式会社の共同設立者及び最高経営責任者であるスティーブ・レビーンは、The Little Guide to Your Well-Read Life (博学なる人生の小さな手引き)の著者で組織向けの関連トピックでの講演会を主催しています。また、ニューヨーク・タイムズ、ロサンジェルス・タイムズ、ボストン・グローブやクリスチャン・サイエンス・モニターなどにテクノロジーの人間的側面について書き下ろしました。スティーブは、ナショナル・ブック・ファンデーションの理事を勤め、最高経営責任者組織のメンバーでもあります。彼は、フロリダ州にある自宅近くのデルレイ・ビーチで機会を見つけては泳いでいます。 |
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