プールでの練習中にはほぼ完璧な泳ぎを誇っていたケビン・ツェンは、初出場を果たしたトライアスロンのオープンウォーター・スイム(海や湖など自然環境での水泳)で悪戦苦闘しました。そこで、ストロークの改善、ナビゲート、サイティング(方向確認)、そして海や湖でリラックスするなど、オープンウォータースイムに必要ないくつかの新たな技術をマスターするために、TIのプログラムを段階的に導入しました。
私のTIとの出会いは、「Triathlon 101(トライアスロン初級)」というタイトルの本がきっかけでした。水泳の項目には、テリー・ラクリンによる「ブイを押さえる」(伸ばした手に体重を乗せ、アンカーをかけて体を滑らせる)テクニックが記述されていました。興味をそそられてトータルイマージョンの本を購入後、初めてのトライアスロンのトレーニングを開始しました。

TIの練習法でトレーニングして4ヶ月もたたないうちに、プールで1.5マイル(2.4キロ)はラクラクとリラックスして泳げるようになったので、スプリント・トライアスロンへの出場を決心しました。600ヤード(540メートル)の遠泳など、公園を歩くようなものだとタカをくくっていた私は、泡を激しく掻きたてる人の群れに囲まれたオープンウォーターがプールとは全く別の環境であることを思い知らされました。パニック状態に陥り、右も左もわからないような有様でした。タイムは10分と悪くありませんでしたが、プールで泳ぐ時の様に楽しく、ラクなリズムを掴むことができませんでした。

それは、TIの練習がいけなかったのではなく、オープンウォーター用のトレーニングを怠ったことに原因がありました。TIのテクニックを身に付けたとしても、サイティングやオープンウォーターで実際に泳ぐ練習などはとても重要です。初心に戻って、TIウェブのオンライン・ディスカッション・フォーラムで教えてもらった「カンタン・トライアスロンスイム」(TSME)の5章「レースに向けての準備」を読み、下記の日課をベースにオープンウォーター・スイムのための練習プランを立てました。

  • ドリルにのみ焦点をあてた60分のプールセッションを1週間に3回。下に向かって泳ぐ、前腕の力を抜くなど、毎回のラップで目的を持って練習する。
  • ドリル練習では少なくとも15分間目を閉じて行い、その後頭を持ち上げてサイティングの練習をする。
  • 可能な範囲で、1週間に2回実際にオープンウォータで泳ぐ。

練習量が多すぎると感じる人もいるかもしれません。その場合は、自分の好みに合わせて頻度を調節します。以下は、サイティングのためのプールでのトレーニングです。

  1. まず、左側のスケートのポジションで目を閉じて1ラップ泳ぐ。
  2. ダブルあるいはトリプル・ジッパースイッチを2サイクル行う。
  3. この時点で左腕は伸びている。右腕を掻き始める時、息を吐いて頭を前方に持ち上げて息継ぎをすると同時に周りを確かめる。
  4. その間、主にリズムとタイミングを継続するために、左腕は伸ばしたままにする。頭を速やかに上げて周りの状況を確認し、脳裏に焼き付けて再び「頭を隠し」、継ぎ目なくスイッチを続ける。
  5. 周囲の状況を脳裏に焼き付けることで、ナビゲートが可能になる。脳裏に焼き付けた情景を、顔を下に向けたポジションに戻ったあとに頭の中でさらに「発展」させるのがポイント。
  6. プールの端に小さなモノを置いて、常に特定の標的探しに集中できる訓練をする。こうして、練習しながら集中してモノ探しができるようになる。
  7. 再び顔を下に向けて目を閉じ、最初からはじめる。私の場合は、1ラップごとに2度だけ顔を上げるようにし、また目を閉じることで体で状況を感じ取れるようになった。

●プール以外でも目的を持って練習する

週末ごとに、TSMEの21章の「リハーサル」プログラムに従い、湖でサイティングやスピード変換を練習します。始める前には、軽いウォームアップ・スイッチをし、10ストロークから20ストロークごとに1回、サイティングを兼ねた息継ぎをします。頻度は水の状態や体の方向性によっても変わりますが、コースから外れれば外れるほど、頻繁にサイティングをするようにします。しかしこれだけではありません。

よりレースに近いシミュレーションである「混み合った」水泳を求めて、ミシガン湖でタイミングよく一緒に泳いでもいいという数人のトライアスリートに出会いました。隣接しながら泳げるか確かめるために、ひしめき合いながらスタートしました。数百メートルも進むと、お互いの存在を忘れて、それぞれのスタイルで泳ぐようになりました。リラックスして泳ぎ、サイティングも問題なくこなせることがわかり、第一関門は突破しました。こうして次のトライアスロンの大会はずっとよくなり、800メートルのスイムを13分35秒で終えました。これは大躍進で、30歳から34歳の年齢区分で300人以上のアスリート中30位という結果を残すことができました。特にオープンウォーター、サイティングの練習の成果が実り、以来、タイムは1マイル30分に短縮しました。

今年の初めにTI方式に切り替えて、距離を伸ばすだけでなくリラックスして泳げるようになりましたが、これも練習に多くの時間を費やしたからです。継続して重要なテクニックを体に覚えこませることが、素晴らしいTIスイマー(そしてトライアスロンのスイマー)になる秘訣であることを実感しました。この夏、湖でトライ・クラブのメンバーと一緒に泳いだ時のことです。朝6時半に準備万端でビーチに到着すると、ウェットスーツを着込む人たちを20分以上待つ羽目になりました。事前にコーチからの説明があるものと期待していたら、すぐにスタートになり、水が腰の位置に来るや否や、皆は狂ったように泳ぎ始めました。私も泳ぎ始めて6分もすると、前に誰もいなくなりました。しばらく平泳ぎをして、岸の方を振り返ると、驚いたことにほとんどの人たちがすでに岸に上がって座っていました。他の二人のスイマーと一緒に残りを泳ぎ終えて、あとで聞き知ったことは、このクラブのメンバー達は、高い月謝を払いながら、わざわざウェットスーツを着用して100メートルから400メートル泳ぐのが普通で、それで1日の練習は終わりだということでした。

プールでの数回のセッションとオープンウォーターでの試し泳ぎ程度で実際のレースに臨み、うろたえ苦悶する、という同じようなパターンを多くの初心者が経験していると思います。TIが他のどの方法よりも泳ぎを改善するのは事実として、まじめに練習を積み重ねることの重大さは強調しても足らないぐらいです。プールでは、サイティングの練習をして、完璧なテクニックをドリルで学び、距離を泳ぐのをやめて、心から楽しく滑るようにラクに泳ぐようにします。それから、練習の場を湖に移し、同じように目的を持って友人達と一緒に練習します。

シーズンを終えて、来年の1月まではプールでのドリル練習に再び集中して泳ぐつもりです。初めは全体のストロークを使ったトレーニングを中心に、徐々にオープンウォーターでのリハーサル練習を取り入れていこうと思っています。この夏はTIのお陰で、初めてのスプリント・トライアスロンに出場し、以来いくつかのオリンピックと同じ距離の遠泳大会にも出場しました。来年の夏は、ハーフ・アイアンマンに挑戦して、将来はアイアンマンへの出場も考えています。しかし、目標は常により素晴らしいテクニックを身に付けることであり、いずれは「魚のように泳げる」ようになりたいと思っています。

ケビン・ツェンはシカゴ郊外に住み、高校教師及びフットボールのコーチをしています。2001年よりトライアスリートになり、同時期に熱心なTIスイマーになりました。
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