先日マスターズ大会でクロールの1650ヤード(1500メートル)予選を待っている間、予選を終えたスイマーにコーチが「ストロークの間手の指が開いていて水を押さえ込むのを邪魔している」という指摘があり、私の興味を引きました。というのもこの大会では手をリラックスすること、すなわち指の力を抜いて開き気味にすることを、最初の500ヤードにおける2つのフォーカルポイントの1つにしようとしていたからです。

親指から小指までをしっかり閉じているものから、指と指の間隔がそれぞればらばらなものまで、ベテランスイマーたちが様々な手の形を使って泳ぐのを私は見てきました。指の開き具合について40数年間、ほとんど気にも留めずにきましたが、最近になって、自分の右手の指がストローク中に閉じていて、左手の指は開いていることの意味を探ってみようと思いました。

水を取り込む感覚は、左右の手で違いを全く感じません。そして、左手の指を閉じて泳いでみた唯一の結果は、数ラップ泳ぐだけで左前腕がぐったり疲れてしまうことでした。反対側での実験では、以前は硬く指を閉じていた右手の力を抜いて泳いでみました。すると、今までと同じ水のコントロールに加えて、右腕全体がゆったりとリラックスしているのを感じました。というわけで、手の指について今後引き続き注意してみようと思います。

今のところ、速度の遅い時には手をリラックスさせて泳げますが、ゴールを目前にして全力を出し切って泳ぐ時には、どうしても右手が反射的に硬くなるのがわかります。今回マスターズの大会では、20×25ヤードの往復のセットを比較的速いスピード(16秒)、そして少ないストローク数(13SPL)で終えることができました。このセットでの1番の集中点は、常に右手をリラックスさせて指を開くことでした。はじめのストロークで手をリラックスさせるのは一苦労でしたが、その後はなんとか最後までリラックスさせていることができました。そして、指を広げることで、手が「より大きなパドル(かい)」のように感じられました。

ストロークの際の手の指を開けるか閉じるかについては、さまざまな意見の違いがあるでしょう。ここではそれ以外の価値がある手の使い方について、いくつか挙げてみます。

  1.  ナイフのような入水:水中カメラで見ると、リカバリーする手が入水に腕が泡で包まれる人がいます。「静かに」水をかく人ほど、推進力のあるストロークをします。「静かな」水の秘訣は、「静かな」入水です。入水の際に、手で水を大きく叩きつけると、ソーダの栓を抜いているように感じます。自分の入水に耳を傾けてください。静かであればあるほど、効果的です。クロールの入水をきれいにするには、手と前腕を水面に入れる時に、ポストに手紙を入れる動作を思い描いてみるのも1つです。
  2. かく前にじっとこらえる:世界のベストスイマーたちは、たとえスピードをだしながらでも「キャッチ」の時に決して急ぎません。つまり、キャッチを急ぐと泳ぎは遅くなってしまうのです。逆に、キャッチをゆっくりすると、泳ぎが速くなります。ポストに手紙を入れる形で入水したあと、手を完全に伸ばすまでに時間をかけ(水中に持ち込まれた泡が消えるまで腕の動きを止める)、そしてストロークを始める前にリラックスさせた手と前腕に水の抵抗を感じます。
  3. 伸ばした手の指先を下に向ける:静かに入水したあと、指先を下に向けることにも集中します。手を伸ばしたときに手は肘よりも下側に位置します。こうするとバランスがとりやすくなり、水を抱えるための水面が大きくなります。かき始める前にこのポジションが定着したら、次のストロークで静かに入水ができるようになるまでは、あまり手に気を取られないようにします。
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