注意するポイントを決め、目標を持って忍耐強く練習することによって、より速くそしてラクに泳ぎながら、ストロークの効率を50パーセント近く高め、アレキサンダー・ポポフやイアン・ソープのストローク数に近づくことができるということを、自分の体験を通して知りました。どのようにしてストローク数を減らし、スピードを上げることができたか、実験の結果を報告します。

8歳の時、キャンプの指導員にプールに投げ込まれたのがトラウマになって、子供のころはプールサイドで行われるプールパーティーをひどく嫌っていました。この後2年ほどして、ビーチハウスのバースディパーティーに招待されました。ありがたいことに、水深、波の高さ共に1メートルちょっとでした。パーティのホストであるバースディボーイは、叔父さんからもらったブギーボードを友達と試すことになり、私は浜辺のすぐそばにたたずんでいたことから、流れてくるブギーボードをキャッチする係になりました。30分ほどキャッチしたブギーボードを友人たちに渡していましたが、不意にボードを手にしてそのまま波に乗ってみました。10歳にしてはじめて、自由で生き生した体験をしまた。

高校を通じてずっとサーフィンを続け、それから1980年にマサチューセッツの全寮制の学校に行くことになり、水泳チームに入りました。大学でも多少水泳をしましたが、それはハッキリした目的があったわけでなく、むしろウィンドサーフィンにはまっていました。その後、プエルトリコで1番のウインドサーファーになりました。将来の妻と出会って、あわてて勉強を始め、より足を地に着けるようになり、そして結婚し、ついでに体重も増えました。もちろん後悔はありません。素晴らしい妻に、そして妻そっくりのかわいい娘二人に恵まれました。

やがて、ウィンドサーフィンを再開し時々ジョギングもしたりしましたが、なかなか昔のようには体が戻ってきません。10年ほど運動から離れていたある日、古い友人からマスターズスイミングを試してはどうかと持ちかけられました。練習は朝の5時半に始まります。2000年の9月のことでした。はじめは早起きは正直辛かったのですが、水の中はなんとも心地よく、水泳は精神的肉体的にセラピーのような効果がありました。数週間後に出した結論は、真剣にテクニックの改善が必要であることでしたが、現在のコーチには限界がありました。焦りに似た気持ちで、Amazon.comにアクセスし、水泳のテクニックについての本を探しました。私が何をオーダーしたかは、皆さんもうお分かりですね。]

バランス、背を伸ばして泳ぐ、スケート、そして体の側面で泳ぐなどの内容は、とても理にかなっていて、説得力がありました。それからTIのビデオも購入して、1回に1つのレッスンに絞って練習を始めました。結果は思ったよりもすぐに現れました。さらに、タイムとストローク数をコンピュータに記録するようになりました。50メートルのラップで、平均47のストローク数、そしてタイムは平均45秒から50秒のあいだでした。これは、ある程度TIで練習して改善を見たあとの結果で、それ以前はどうであったか、、、は考えないことにしましょう。

2000年11月の終わりになり、朝の練習を離れて単独で泳ぐようになりました。テリーの記事で、フィストグラブがストロークの際の水を取り込む練習にとても役立つことを読んで、多少懐疑的ではあったものの、とりあえず「げんこつ」泳ぎを試してみることにしました。以下、ストロークモニター(訳注:Speedoが販売していたストロークカウントができる腕時計型の機械。残念ながら現在は販売されていない)を使って50メートルラップの記録をとりました。

ラップ数

タイム(秒)

げんこつ泳ぎの
ストローク数

1

53.57

54

2

52.34

56

3

48.57

54

4

48.92

56

5

45.68

56

6

44.63

56

300メートルを「げんこつ」で泳いだ後、掌を開いて泳ぎました。結果を見て、目を見張りました。

ラップ数

タイム(秒)

普通の泳ぎの
ストローク数

7

36.68

46

同じ泳ぎで、平均の10秒もタイムが短縮するとは!!家に帰り着いて、早速フィストグラブを注文しました。

約1週間後、50メートルごとに止まってはタイムをリセットする私に苛立ったコーチは、最後通牒を私に言い渡しました。「タイムウォッチか、チームか、どちらかを選びなさい。」そこで、ストロークモニターを引き出しにしまい、キックボードで練習するチームを横目に、ひとりTIドリルの練習を続行しました。フィストグラブを着用して、毎回ウォームアップをしました。コーチにドリル練習を言い渡された時には、トリプルスイッチを練習しました(たまにフィストグラブも着用しました)。私の泳ぎは次第に、静かで集中するようになり、練習全体が、ひとつの長いドリルの練習のようでした。バランスに集中する、背を伸ばして泳ぐ、リカバリーの手が先導する腕の手首に接近するまで、体の横でスケートする、など。そして、イアン・ソープの美しいフォームをビデオで見て、彼の様に泳ぎたいと切望しました。

TIドリルはゆっくりと段階を進むため、はじめは他のスイマーよりも遅かった私は、コーチにキャッチアップ・ストロークで泳ぐことをうるさく注意されましたが、次第にじりじりと速度を上げ、ついには他のスイマーを凌いで(しかも、ストローク数は25%から30%少なく)コースのトップに躍り出ました。全速力で泳ぐ以外は、それでも80パーセントから90パーセントオーバーラップするリカバリーで泳ぎました。しかし、その時はストローク数を数えていませんでした。

その後、テリーは「Triathlon Swimming Made Easy」を出版し、また「Fishlike Swimming」ビデオを製作しました。忠実なTIの門弟である私は、すぐにそれらをオーダーしました。目次に目を通して、4章とTIテクニックで泳ぎの速度を上げる項目に直行しました。16章で、テリーは同じストローク数(32ストローク)での4X50の泳ぎのセットに言及しました。2000年11月以降記録することを怠っていた私は、現在の記録の見当がつきませんでした。

次の練習が終わりに近づいた時、プールを何度かいつもより多少動きを速くして往復し、ストローク数を数えてみました。初回50メートルのタイムは48秒で、ストローク数は32でした。テリーの例に酷似しています。興味を持ち、テリーにポポフの50メートルのストローク数を尋ねると、世界記録を出した50メートルでなんと32ストローク、普段の練習では、かなりゆっくりとしたキックを使って、50メートル20台のストローク数を維持していることを教えてくれました。人間業とは思えません。

次に、テリー自身の50メートルのストローク数を聞きました。シェーン・グールド(オーストラリアのゴールドメダリスト)とともに感覚を磨くことに集中した練習でのストローク数を記載したトータル・スイムの記事を送ってくれました。その日の彼らのベスト・ストローク数は、やはり50メートル20台の真ん中でした。私も再び、ストローク数を記録し始めることを決心しました。

こうして翌日の練習(1時間約3000メートル泳ぐ)では、特にストローク数を下げることは考えずに、今後の練習の参考までに普段どおりに泳ぎました。帰宅後、2000年11月の過去の記録を見て驚きました。タイムは45秒から50秒で今とほぼ同じですが、ストローク数が激変しています。以下ご覧ください。

泳ぎ方

2000/11(平均)

2002/7(平均/ベスト)

1年を通しての進歩

普通の泳ぎ

45

34/32

-11

パドルとボード使用

40.5

33/31

-7.5

フィストグラブ使用

56

37/36

-19

私は早速テリーにメールをして、この結果を報告しましたが、一体どうしたらストローク数20台半ばにすることができるのでしょうか。テリーは、完璧なバランスと毎回のラップでポイントを定めた泳ぎを身に付けるために、ビデオ「Fishlike Swimming」の4章に集中して練習するようにアドバイスしてくれました。

翌朝、一人で練習に出かけ、フィンとフィストグラブを着用して、4×50メートルをジッパースケートで泳ぎました。それから、極力抵抗を減らした静かな泳ぎに集中して10×50を普通に泳いだ後、すべてフィンとフィストグラブを着用して、ジッパースケートと同じようなセットをアンダースイッチ、トリプルジッパースイッチで泳ぎました。ストローク数は平均18から19でした。その後、フィンとグラブをはずして、以下のセットをできるだけやさしいキックで泳ぎました。

・50メートル  49秒 27ストローク
・50メートル  48秒 26ストローク
・50メートル  47秒 27ストローク
・50メートル  47秒 26ストローク

あまりにも驚いて、この記録をそっとしておくために、その日の練習をやめたほどでした。後でテリーが、いい選択だったと言ってくれた様に、早めに切り上げたことで、筋肉の感覚を記憶に留めました。しかし同時にリカバリーの際にリズムがちょっと崩れてしまうことにも気がつきました。現在もうまくアンカーをかけるために手の動きを実験中です。ハッキリとした目的を持ったドリル練習でのウォームアップがなければ、これらのことには気が付かなかったでしょう。

ストローク数をモニターしながら、フィストグラブを着用してアンダー、ジッパースイッチ・ドリルを練習し、他のスイマーと同じ速度をキープしながら50メートル28から33のストローク数を維持しています。一番速いスイマーたちとの練習では、時に途中で平泳ぎを入れて前の人を追い越さない様にする事さえあります。先週は、トライアスロン選手に水中から泳ぎを観察したいと言われました。これほど自尊心をくすぐることがあるでしょうか。

もちろん、私よりも速いスイマーが周りにはたくさんいますが、TIの本とビデオだけを頼りに、想像をはるかに上回って改善することができたのです。ハッキリと目的を持ったドリル練習によって、素晴らしい効果をもたらすことは私の体験が立証しています。中でも、常に新しい目標に向かうことで、私の水泳の目的と喜びを再確認することができるのはとても重要です。次なる目標は、速度を上げることです。練習を重ねれば、速度もそれに伴ってくることは経験上わかっています。焦ってはいけません。何事も忍耐ですね。

ジャクイン・プイドルフィラは、スペインのマロルカ生まれですが、7歳からはプエルトリコで育ちました。プエルトリコの大学を卒業後、ファイナンシャル関係の仕事をしました。7年前、スーツを脱ぎ捨て、堅苦しい会社の組織を離れて商業用不動産の査定官になり、その後不動産の開発に従事しました。もしもやり直せるなら、ミュージシャンとして身を立てたいと思いますが、妻さえも自分の歌に耳を貸してくれるかどうかは定かではありません。ジャクインは、水中での開放感にとり付かれて、水泳をしています。特定の分野でベストになることは、賢く着実に努力を重ねてのみ達成できると信じています。しかし、正しい道具と情報がなければ、試験的段階で終わってしまうでしょう。世界のベスト・スイマーは、知ろうが知るまいが、TI方式で泳いでいます。
 ©Easy Swimming Corporation