まずはマーリーンからの質問を紹介しましょう。
「私はワークショップに10年前に参加して、6年前まではコンスタントに泳いでいました。その後しばらく間を置いて、半年ほど前から非定期に泳ぐようになりました。ワークショップやその後練習したTIのドリルのおかげで、自分としては効率良く泳いでいるつもりですが、いかんせんスタミナがありません。先日調子の良い日に(1回だけですが)、50ヤード(45メートル)で55のスイミングゴルフのスコアを出しました。けれどその後ものすごく疲れました。このように疲れながらでも低いスコアを目指してがんばっていれば、そのうちスタミナがつくようになるのでしょうか。それとも疲れるほどの練習はしないほうが良いのでしょうか。」
私は次のように返答しました。
「もし6年間のブランクの後に泳ぎだしたのであれば、半年前から再開したにしても、元の通りの体力に戻るまでには少し時間がかかるでしょう。ただスタミナが現在の問題ではないと思います。つまり「スタミナがない状態の効率」というのはあまり意味がなく、むしろ55というスコア(私の個人的な記録である57よりも低い値です)を出したときのあなたの効率自体が問題なのです。スイミングゴルフのスコアは、1回だけ低い数字を出してそれでおしまい、というための練習ではなく、体にしみ込んだ効率により、ラクに、何回でも出せるようなスコアが望ましいのです。何回も出せるスコアであれば、長い距離でも効率よく、速く泳げることになります。
スイミングゴルフのスコアを改善し、ゴルフの「マスターズチャンピオン」になれるようにするための練習方法について以下に紹介しましょう。」
●スイミングゴルフの基礎
スイミングゴルフのスコアは、一定距離を泳いだときのストローク数に、その距離を泳ぐのに要した時間(秒)を加えることで計算します。50メートルを30ストロークで泳ぎ、そのときのタイムが45秒ならば30+45=75がスコアです。こうしてみると、スコアを良くする(数字を小さくする)には、(1)ストローク数を減らす、(2)タイムを縮めるの2通りがあることがわかります。普通はストローク数を減らすことはゆっくり泳ぐことになるので、時間が余計にかかります。またタイムを縮めようと急いで泳ぐとストローク数は増えます。つまり2つの背反する目的を同時に満たすためにはどうすればよいかを考える必要があるのが、スイミングゴルフの醍醐味です。
●水の中のタイガー・ウッズ
スイミングゴルフの仕組みがわかったら、実際に試してみましょう。初期のスイミングゴルフでは良いスコアを得るために、非効率的な泳ぎでがんばってもよいでしょう。良いスコアのために、例えばキックを一生懸命打つとか、息を止めるとか、壁を蹴ってからより長い距離を潜水するなど、長距離のレースや練習のときにはできないようなことをやってみてもよいでしょう。 次のステップではより高度なレベル、つまりあなたの心拍数(HR)を考慮に入れて挑戦してみましょう。もしあなたら50メートルを37秒、32かきで泳いだらスコアは69です。このときの心拍数が150なら、おそらくかなりきつい状態で同じスコアを出すのは1回か2回がやっとではないでしょうか。一方同じスコア69でも心拍数が120なら、3〜5回の深呼吸の休みだけでこのスコアを10回かそれ以上連続で出すことができるでしょう。このように継続して出せるスコアが「レース仕様のゴルフスコア」と言えます。(訳注:プールにペースクロックが設置されていたら、首筋に指2本をあてて10秒間の脈拍を数えます。脈拍が20なら120、25なら150、30なら180です。最大心拍数は220から自分の年齢を引いた数で概算できるので、脈拍を最大心拍数で割れば運動強度が出ます。強度が75〜80%程度がレース仕様と言えるでしょう) つまり、スコア自体を良くするのと同じくらい、あるスコアでHRを減らすことは効果的なゴールと言えます。さらに効率良く泳ぐことでエネルギーの消費を抑えたり、あるいは別の種目とスピードと組み合わせることができます。スイミングゴルフを興味深く、創造的に行うことができれば、学べることがより多くなります。次に「ツアー・ゴルファー」になるための練習方法をいくつか紹介します。
- まず3〜4×50をベンチマーク(標準)のスコアを出すために泳ぎます。次に3〜4セットをフィストグラブを着けて泳ぎます。スコアはどの程度近づけることができましたか?さらにグラブを外してまた3〜4セット泳ぎます。手が大きく感じるフィストグラブの効果はスコアに反映されましたか?そうであればその感覚を覚えておきます。
- 何通りのスコアを出すことができますか?タイガー・ウッズは、他のゴルファーが想像できないくらい打ち方のレパートリーを持っているので群を抜いています。スイミングゴルフをしばらく練習して自分の「パー」がいくつかわかってきたら、少し高いスコアでどの程度多くの泳ぎ方ができるか試してみましょう。例えばあなたのスコアが77であれば、以下のような80のスコアの組み合わせを泳ぎます。
30 ストローク + :50秒
31 ストローク + :49秒
32 ストローク + :48秒
33 ストローク + :47秒
34 ストローク + :46秒
一連の練習の終わりには、どの組み合わせが一番ラクだったか決めましょう。この泳ぎ方を、あなたの筋肉の記憶エリアに蓄えます。
- ストローク数のバリエーションを増やして50メートルを泳ぎます。例えばあなたの50メートルのストローク数が40なら、以下のように泳ぎます。
3 x 50 @ 38 ストローク
3 x 50 @ 39 ストローク
3 x 50 @ 40 ストローク
3 x 50 @ 41 ストローク
毎回スイミングゴルフのスコアを減らすように努力して、ベストスコアと比較します。どのストローク数がスコアが低く、心拍数も小さくなりますか?そのストローク数を記憶しておきます。もっと究めたいときは、上記のセットを逆向き(ストローク数を減らす方向)で行います。減らす方向は増やす方向とは異なった感覚を養うことができます。
- 背泳ぎを組み合わせます。クロールと背泳ぎは「長軸の泳ぎ」に属し、組み合わせて泳ぐと軸を安定させる効果があります。私は次のようなセットを2〜3回繰り返すのが好きです。
3 〜 4 x 50
背泳ぎ:ストローク数を数える。ベストスコアを狙う。
3 〜 4 x 50 (25 背泳ぎ + 25 クロール):同上
3 〜 4 x 50 クロール:同上
このときのクロールのスコアと、通常練習するスコアを比較してみましょう。フィストグラブを着けて行い、次に外して行った結果も比較してみましょう。
- 様々な視点から自分の泳ぎをチェックするための、創造的なスイミングゴルフのメニューを自身の経験を活かして作成してみましょう。例えばスーパースローな泳ぎのスコアと、70%, 80%
または 90%の力で出したスコアを比較します。またフォーカルポイントを変えたとき(水の中を突き抜ける、レーザービーム、がまんの手、入水する手の位置など)にスコアがどのように変わるか、同じスコアの場合心拍数がどのように変わるかを確かめてみましょう。良いスコアや少ない心拍数になったときのフォーカルポイントを記憶しておき、練習に活用しましょう。
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