「息継ぎ入門」3部シリーズのパート2です。パート1では口や鼻に水が入らないように、空気の通り道を確保することに焦点を当てました。今回パート2では、古い空気を新しい空気に換える最良の方法について説明したいと思います。なおパート3はクロールでの息継ぎのメカニズムについて説明します。

●呼吸と息継ぎ

呼吸は私たちにとって全く無意識に行われる動作で、それについて考えることもほとんどありません。頑張りすぎたときや、パニックに陥ったときに(水泳の場合、時には両方同時に)呼吸が乱れて多少意識する程度です。

他のどのスポーツをみても、水泳ほど幅広い呼吸の技術(息継ぎ)がある運動はないでしょう。水泳のトップアスリートは、世界記録並みのペースで泳ぎ、完璧なフォームを維持しながらラクラクと息継ぎをします。同じようにトップレベルのオープンスイマー(遠泳の選手)も荒波を顔に受け、大勢の波を蹴立てるスイマーたちに囲まれながらも、同様にラクに息継ぎをします。それとは全く逆に初心者は、顔や頭が水中にある時は不安でいっぱいで、空気を取り込むということにエネルギーの全てを費やし、フォームに集中するなどという余裕は全くありません。

息継ぎは水泳の全技術の中でも最も基本的技術であることは間違いありません。もし、普段の生活で呼吸をするように水中でも意識することなく自然に息継ぎができるようになれば、落ち着いて他の技術を習得することに集中できるようになります。また、息継ぎが正しくできれば酸素をとり込む容量が増えるので、長距離をそして最高のスピードで泳げるようになります。さらに水泳の呼吸法をマスターすれば、単に酸素を取り入れるだけでなくリラックスの効果や、自己認識を深める能力を高めることができ、結果として疲労から迅速に回復できるようになります。結局泳ぐのに息継ぎをしない訳にはいかないのですから、「水泳の呼吸法」を完全にマスターする選択をしてはいかがでしょうか?

●悪い空気を出して、良い空気をとり込む

殆どの人にとって呼吸は、「息を吸うこと」であり、「息を吐くこと」は二の次です。しかし水泳に限らず息切れを伴う運動に関して言えば、吐くことにもっと重点を置くべきなのです。息を吐き出すことに集中し、息を吸うのは自然に任せます。

その理由は次の通りです。一回の呼吸で肺に取り込まれる空気中、21パーセントが酸素、そして二酸化炭素はほぼ皆無です。息を吐き出す際は、14パーセントの酸素と6パーセント近くの二酸化炭素が排出されます。これが何を意味するかというと、吸って取り込んだ分のほんの3分の1の酸素しか消費しないことから、酸素不足が原因なのではなく血中の二酸化炭素量の上昇によって息切れ感が引き起こされるのです。

そこでリラックスして気分よく泳ぐためにも、主に「息を吐き出す」ことに集中して、肺にたまった二酸化炭素を完全に外に出すべきなのです。次のような「吐くことに集中する」練習を通して、吸うことに焦点を当てた場合と吐くことに焦点を当てた場合の違いがよくわかるようになるでしょう。コンピューターに座ってこの記事を読みながらでも練習できます。

  1. まず意識的に勢いよく息を吸って肺に空気を送り込み、無理に空気を外に押し出すのではなく、力を抜くように息を吐き出します。双方を鼻で行い、この呼吸を5,6回繰り返します。
  2. 今度は逆にして、意識して空気を出すようにします。「プラーナヤーマ」(吐く・吸う・止めるの3つの気息=プラーナの動きから成る呼吸)として知られるヨガの呼吸法の練習をして、前記の呼吸との違いを確認します。息を吐く際に、部屋の向こう側の人に届くような大声を出す時のように、喉をぎゅっと締めるようにします。何度か繰り返すうちに息が鼻からでなく、喉を通るのがわかるようになるでしょう。この呼吸を8〜10回繰り返します。
  3. 最後に、吐き出すことに焦点を当てた息継ぎを続けながら、吸うことをだんだん意識しないようにしていきます。より意識して息を吐き出すようになる前の掃除機のように吸う呼吸法で、肺にどのくらい空気を補充できたでしょうか。無意識に補充できるようになるまで繰り返します。
必要なだけ空気を吸うことが滑らかなストロークの鍵です

呼吸法に焦点を当てた練習

次回泳ぐ時には、動きを調整、コントロールする方法として、特に息を吐くことに重点を置いた息継ぎに集中することをお勧めします。3セットのシリーズを繰り返し、各セットは約10分行います。25〜200メートルの範囲で好きな距離を反復します。各セットの反復の間、3回から6回深くゆっくり呼吸して休みます。セットとセットの間は更に1〜2分休みを入れます。全体を通して2回から3回のストロークごとに1回息継ぎを入れます。

  •  最初のラウンドは、力を出し切らずに65%程度の力で泳ぎます。余裕を持った泳ぎを維持して、あるいは数分ごとに多少スピードを上げて泳ぎます。息を吸い終わったと同時に安定して息を吐き出すように集中します。セット練習を重ねながら、意識的に息の吸い込みをだんだん受け身にするようにします。
  • 2回目は75%程度の力で泳ぎます。息を吐くことで必要な空気を取り込み、それによって泳ぐ力を上昇させます。目標は、筋力に頼らず息を吐き出すことに重点を置いてスピードを上げる力をつける感覚をつかむことです。
  • 3回目は、より速度を上げ、85%程度の力を出して泳ぎます。今回は必要に応じて勢いよく息を吐きますが、今回は吐き出しの終わりに気をつけます。口が水面からちょうど出たとき、更に20%の力を加えます。次の息継ぎがスムーズになるように、口で水を噴くような感覚です。受動的に吸うことを目標に練習を続けます。こうして、空気をもっとたくさん、もっと速く取り込めるようになりますが、それが肺を空にした結果として完全にできるようになったでしょうか。

このセット、あるいはこのバリエーションを、週1回、数ヶ月間練習することをお勧めします。これに続く練習として、以下を含む、追加要素を加えた練習法を試してみてください。

  1. 最初のラウンドをコントロールされたストローク数で泳ぎます。これをNとします。2回目は、N+1、そして最後はN+2から、N+3で泳ぎます。
  2. 少なくとも最初のセットでは水中で鼻から息を吐いて、セットの後半は口から息を吐くのを目標にして、鼻から息を吐く量と、口から息を吐く量を比べてみます。
  3. 初回、これらのセットを行う時には、時計を気にしないようにします。主に息を吐くことに注意して、またストロークをスムーズにすることによりスピードを上げられる感覚をつかんだら、息継ぎとストロークの双方、あるいは片方でどのくらいスピードが上がるかを測定するために時計を確認するようにします。
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