階級的で独裁的な、「上から下」のマネージメントが時代遅れであることは、いまやビジネス界の常識です。優秀な企業は、製品などのデザインやサービスの提供において消費者に耳を傾けることで、競争力をつけて利益を上げています。さらにそのような企業は、自社で働く人達からも様々なアイディアを提供してもらい、より効率のよい生産や品質の高いサービスを実現しています。
しかし水泳の世界ではどうでしょうか。ほとんどの水泳チームは、いまだに「上から下のシステム」がまかり通っていて、コーチが練習内容をすべて決定し、全くと言っていいほど生徒からの意見を取り入れることがありません。コーチ陣は「たかが子供」と思い、厳しい戒律または指導なくしては、水泳チームとしてまとまりがつかないとでも思い込んでいるようです。

けれど生徒たちに練習の内容やメニューについてのアイデアを聞いて実践すると、彼らは驚くほど「大人の考え方」を持っており、練習も密度の濃いものに変化します。過去3年間、夏のトータル・イマージョン・キッズ・キャンプで、私たちは「もし今日1日自分がコーチになったら?」というテーマで45分間の「フォーカス・グループ」を作りました。(このセッションは4日間じっくりとテクニックや技術練習をこなした後のキャンプ5日目の朝に行われ、生徒からの多くの意見はその後のキャンプの練習内容に取り入れられます。)

生徒を6人から8人のグループに分けて、補佐役としてTIコーチを各グループにつけます。それから「もし今日1日コーチになるとしたら、練習内容をどう変えるか?」と題して、意見交換をしてもらいます。実際のコーチ達は司会役に徹して生徒全員がアイデアを出せるように配慮します。このような機会を何度も設けましたが、子供たちから出される意見は驚くほど一貫していました。以下、一番多く出された意見をまとめてみます。

練習体系について質問をすると、彼らは目的意識を高くもって練習するばかりでなく、本当に一生懸命に練習をしようという気になるようです。コーチやチームにとって、これ以上素晴らしい練習環境があるでしょうか?以下は生徒から集まった意見です。ぜひ皆さんも練習内容を考えるときの参考にしてください。

練習の方針

  • ウォームアップとクールダウンの時間を長くする。スイマーが気分よくストロークを練習できるように時間をもっと与える。
  • ウォームアップとクールダウンの際にドリル練習を取り入れて、ストローク練習の余韻を残しながら練習を始めたり、終えたりできるようにする。
  • 早いインターバルではドリル練習をしない。時間をかけてじっくり行う。ドリルをする目的と手順を細かく説明する。
  • 普通に泳ぐ前にテクニック練習を必ず行い、上手に泳げるように準備する。
  • 各スイム・セットでテクニックの細かいフォーカルポイントを与える。
  • 毎日ストロークを数えるセットと目標数を設ける。
  • キャンプ中の丸1日をドリル練習にして、体にしみ込ませる。
  • 細かなストロークの動きを習得する際には、ゆっくりしたペースの練習セットをもっと多く取り入れる。
  • 速度を上げるために、速いセットと遅いセットを交互に練習する。
  • 12歳以下の生徒たちは火曜日と木曜日にドリル練習をする。ゆっくり集中した泳ぎを月曜日、水曜日、金曜日に行い、練習の最後には速度を上げて泳ぐ。

コミュニケーションと動機付け

  • やたら難しいものではなく、容易にできる練習セットを増やす。
  • フォーカスを維持しやすい、もっと短いセットを増やす。
  • やる気をなくすので、スイマーを重ねて列に並ばせない。
  • 生徒に話を聞いてもらいたいのなら、怒鳴らずに話しかける。
  • 1ヶ月に一度は生徒全員を水中ビデオ撮りする。
  • いいテクニックやドリルを頻繁に録画して生徒に見せる。
  • 毎日練習の最後に、特に一生懸命練習した生徒に特別の水泳帽を渡して翌日それをかぶってもらう。
  • 生徒同士で組んでテクニックの学習をする。上級生が下級生を指導する。
  • ベストのストローク、ベストのドリル、少ないストローク数、静かな泳ぎ、ベストのターン、ベストのストリームライン、最長の壁キックなど、タイムを計って競うのではなく、泳ぎの質を競うコンテストを催す。
  • 練習終了後にはコーチに礼を言い、普段からもっとコーチを褒める。

●プールの外でのトレーニングとクロス・トレーニング

  •  プールに「出たり入ったり」する。25か50メートルを泳いだ後、プールサイドでしっかり5回腕立て伏せをする。
  • もっと創造的なトレーニングをプールサイドで行う。ヨガやバランスのエクササイズ(片足で立つ練習を忘れずに)を取り入れる。プールの中でも外でも神経系を刺激するトレーニングを考える。
  • 興味深いクロス・トレーニングとして、バスケットボール、ストリートホッケー、サッカーなどをしたり、ローラーブレードやミニ・トライアスロンも試してみる。
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