記念すべき第1回目のカンタン・クロール ワークショップが、2005年9月24・25日に実施されました。台風の接近、通常より低めのプール水温、帰りは外房線の運休などさまざまな障害はありましたが、無事終わらせることができました。
宿泊を伴うワークショップは世界でも初めての試みであり、竹内を除くコーチも、これだけ多くの方を対象に一斉にトータル・イマージョンを指導するのは初めてなど、全てが初めてづくしのワークショップでした。
ワークショップに参加された14人の皆様、本当にありがとうございました。今回のワークショップについて、TIジャパンヘッドコーチの竹内が報告します。

1泊2日のワークショップ:初めての試み

米国や他国で開催される週末の講習会であるフリースタイル・ワークショップは、土曜日・日曜日のいずれも会場集合、会場解散となっていて宿泊を伴う形式ではありませんでした。しかし私はかねてから、目的や理由は異なるけれど、ラクに泳ぎたいと思う方が集まるワークショップこそ、宿泊形式にしてスイマー同士親交を深めることができてさらに楽しくなるのではないかと思い、スタート当初から1泊する形でワークショップの実施を考えていました。日本的といえば日本的ですね。

最初はアクセスに便利な都内のホテルに企画をもちかけてみましたが、米国のワークショップの模様やその効果をビデオで説明しても、「コースを貸したことがない」「(会員制)クラブの会員に迷惑」「撮影は他のお客様の迷惑」と、完全な邪魔者扱いです。ホテルにはホテルの事情があるのだということでワークショップ実施には時間がかかるかもしれないとあきらめかけていたとき、スイムサロンにお越しの一人のお客様から「ウチの近くにいい施設がありますよ」と紹介していただいたのが日本エアロビクスセンターでした。

TIのワークショップを行ううえでの必須アイテムである「コースレンタル」「ビデオ撮影」「会議室の使用」が全て可能であり、さらに「宿泊」「食事」と日本のワークショップで必要なものも用意されるということで、早速センターにコンタクトし、予約したのが6月下旬です。TIジャパンを始めてからたった1ヶ月での決断でした。

全てはワークショップのために

ワークショップを行うためには、コーチが必要です。しかもコーチは自らTIのドリルが完璧にできるだけでなく、TI独自の指導マニュアルに基づいたコーチング技術が要求されます。学生アルバイトで事足りる話ではありません。コーチの養成こそが、TIの根幹を成すといっても過言ではありません。米国のTIでも、テリーは頻繁にコーチとコミュニケーションをとっています。

幸いにもTIジャパンを始めてすぐ、大人を対象にした水泳のコーチ経験豊富な永瀬さん、酒井さんからコンタクトがありました。カンタン・クロールDVDを購入して、ドリルを生徒さんに練習してもらったところ、想像できないくらい効果があったといううれしい連絡でした。早速TIジャパンに来ていただき、今後のTIの展開やワークショップ、サロンでのビジネスについて説明し、TIのコーチになってもらうことにしました。コーチの研修は集中レッスンの参加から始まります。自らが生徒となることで、お客様の視点で考えることができるようになるというのが理由です。自身でマニュアルを作成し、クリニックや集中レッスンを手伝ってもらうだけでなく、地元に戻ってのレッスンを通じて、両者のコーチング技術は飛躍的に向上しました。

また時を同じくして、西村が社員としてTIジャパンに参加しました。私が日本滞在時に通っているフィットネスクラブでアルバイトをしていて、その後別のクラブに入社したのですが、若いわりにはしっかりしており、何よりTIに賛同していたのでスカウトしました。

スイムサロンは6月にオープンしましたが、当初はプライベートレッスンであるスイムクリニックのみ行っていました。これは米国と日本との教え方に違いをもたせるかどうかの判断を、まず個人レベルで把握する必要があったためです。エンドレスプールと4分割ビデオという画期的な仕組みにより、これまでのTIのコーチングでは見抜けなかった事象も発見しました。結果としてより短時間でお客様が上達できるティーチングノウハウを獲得することができました。ワークショップは2日間勝負ですが、クリニックは30分勝負です。30分で満足していただく(つまりラクに泳ぐ)ことができなければお客様はTIから離れてしまいます。

個人のレッスンによりティーチング技術を高めたことで、グループレッスンであるドリル集中レッスンを7月下旬から始めました。集中レッスンは泳力の異なる4人のお客様がドリルを5時間で学習するレッスンで、1つのドリルに10分程度しか時間をかけられません。しかもドリルの練習状況はお客様によって異なります。米国のワークショップではほとんどの方がドリルに初めて接するのですが、日本ではまずDVDを購入することが先になることを考え、DVDの購入時期によりドリルの習得状況が異なることを前提にワークショップを設計する必要があります。その場で各ドリルの重みを変化させてゆくことで、ワークショップでも臨機応変に対応できる体制ができあがりました。

募集8時間で第1回目は定員に、さらに増員

第1回目のワークショップの募集はスイムサロンのご利用経験のあるお客様を中心に行いました。どの程度の泳力かが把握済みであること、千葉県松戸市までお越しいただいたということで、同じ千葉県で行うワークショップも来ていただけるのではないかということがその理由です。5人ぐらいお申し込みがあったらいいなあと考えていたのですが、当時のサロンご利用者の4人に1人がお申し込みみになり、電子メールによる告知後8時間で定員になりました。本当にありがたいことでした。

その後千葉県市川市のフィットネスクラブでTIのイベントを行った際、1コース10人でドリルを練習するフォーメーションを作り実験したところ成功したため、ワークショップの定員を増やしました。それでもすぐに埋まったのには驚きました。TIを習いたいというお客様の熱意には、ただ頭が下がるだけです。

8月下旬には日本エアロビクスセンターに視察目的で宿泊し、朝一番でのプールの水温などもチェックしました。宿泊施設のタオルなどはスケジュール上使用できないことが判明したため、TIのロゴの入ったタオルも作成しました。また、無料送迎バスなどセンターへのアクセスが非常に限られているため、接続電車の時刻なども調べ、準備資料としてお客様にお送りしました。

いよいよ本番、台風接近の1日目

ワークショップでも最初にお詫びしましたが、私は「雨男」です。従って本番の日も台風が接近する不安定な天候になりました。結果として台風は関東を直撃せず、またスピードも遅かったためひどい状況にはなりませんでしたが、前日までの晴れとはうってかわってあやしい天気のなかワークショップはスタートしました。集合時間がお昼過ぎだったのですが、誉田駅やインターチェンジ付近には飲食店がなかったためほとんどの方が昼食抜きでプールに臨んでしまったのは大きな反省点です。

プールのセッションではセンターが主催しているアクアビクスと重複した時間があったり、天井がとても高く私の地声では隅まで届かなかったり、またフォーメーション(泳ぐ長さやコーチ配置)が当初デザインした通りには機能しない部分があったりしましたが、2日目にはできるだけ解決していきました。デジカメでドリルの水中ビデオを撮影しましたが、プールの水温が低かったため、その場で見ることは中止しDVDに収録することにしました。1日目はプールセッション開始直後にクロールを水上、水中の両方から撮影した後に、背浮きからトリプルジッパーまで、ドリルを一通り練習し、最後にトリプルジッパーを撮影しました。1日に2回プールに入って練習するのは結構大変なものです。お客様も大会などを除きあまり経験がないとおっしゃっていました。

夕食の後ホテルの2階にあるバーに行きました。水泳の目的がこれだけ異なる方達が、水泳という共通の話題でこれだけ盛り上がるのは楽しいものです。宿泊を入れてよかったと実感しました。コテージに戻ったのが深夜零時すぎ、それからコーチ4人で1日目の反省と2日目のフォーメーション変更を打ち合わせ、終わったのは3時前でした。翌朝は5時起きです。

2日目:プール全面使用

2日目は朝6時集合(荷物をまとめて)、6時15分よりプールセッション開始です。朝食はプールの後でしたが、空腹時のプールは寒いという前日の反省をふまえ集合時間の前に私が急いで事前に調べてあったコンビニエンスストアまで行き(片道12分!)、おにぎりと栄養ジェルを購入しました。このときほど「開いててよかった」と思ったことはありません。

プールは思っていたよりは暖かく、全面を使ってトリプルジッパーの練習から始まりました。早朝の静かなプールで、みなさんが静かにジッパースイッチを行っている様は、知らない人がみれば異様かもしれませんが、知っている人がみれば感動の一言に尽きます。

私は自分が生徒として参加した昨年6月のシアトルのワークショップでこの全面ジッパーの光景に感動し、「いつかは日本でこれを実現するぞ」と考えていたことを思い出しました。TIジャパン開始から4ヶ月で実現することができて、TIを支援してくださる皆様に対して感謝の気持ちでいっぱいでした。

今回のワークショップではドリルをご自分で練習されている方が多数いらっしゃったため、ドリルの内容を説明し、理解していただくことよりもドリルを磨くことにウェイトを置きました。また午前中2回目のプールセッション(2コース使用)は、クロールのビデオ撮影の後にオープンターン、クィックターン、ストロークカウントの練習の3つからお好きなものを選んでもらう方式にしました。私はストロークカウントの練習を担当しました。ストローク数を上下させることで伸びること、ピッチを上げることを両立させるギヤリングの練習を通じて、テンポを上げてストローク数を維持するか、減らすようにします。これができるようになると、「ゆっくりに見えて実は速い」泳ぎになります。

行きは台風で心配しましたが、帰りは外房線が変電所火災のため臨時運休となり影響を受けました。遠方より飛行機をご利用だったお客様は蘇我駅までお送りすることで事なきを得ましたが、鉄道や高速道路の情報入手が今後の課題となりました。

アンケートを通じてお客様からは様々なご指摘をいただきました。今後も内容を改善し続けることにより、日本ならではと言えるようなワークショップを開催したいと考えていますのでよろしくお願い致します。

トータル・イマージョン ビデオライブラリ
 
鮫の群
プール全面を使ってトリプルジッパーのドリルを練習しています。早朝のプール、みなさんが静かにジッパーを行う様は、まるでサメかイルカか、これまで見たことのない光景です。
 
 ©Easy Swimming Corporation