カイゼン・キック
 「以前は長いストロークで泳ぐべきだと考えていたのですが、スピードを出すために、とにかく腕を回すようにと言う人に最近出会いました。言われた通りにすると、体中がこわばり、息も絶え絶えになります。普通にしていても、水を飲んでむせたり、不安で心臓がドキドキしたりと、ちょっとしたパニックに陥ることがあります。水から上がれば、私はランニングなどで鍛えているので自信がありますが、水の中では、情けないほど無力です。どうしたらよいのでしょうか? ケリー」
ケリーへ

まずは、「水の中でもがくことを練習とはしない」と心の中で念じてください。水の中で不安に思うこと、これはあなたが間違っていたり特別なのではなく、1億2千万人のアメリカ人の大人(人口の約6割)が同じように感じているのです。しかし、誰もが時間をかければ、水中でリラックスして泳げるようになり、息継ぎもラクにできるようになります。

新しいスイム・スタジオを開設して以来、エンドレスプールで教える機会が増えたのもあって、以前は気がつかなかった現象を見るようになりました。それは、息継ぎがほぼすべての初心者にとって、一番の難関であるということです。

そして、息継ぎができるようにならない限り、他のテクニックを効果的に集中して覚えるのは不可能であることもわかりました。不安に駆られたり、心臓がドキドキしたり、水を飲んでしまうのは、すべて息継ぎにかかわることで、ストロークによって左右されることは少ないでしょう。そして、腕を回して速度を上げるという知人の忠告は、状況を悪化させるだけです。という訳で、ストロークのことはとりあえず保留して、息継ぎの基本に神経を注ぎましょう。息継ぎがコントロールできるようになれば、ストロークの技術もよりカンタンに身につけることができるはずです。

空気の通り道の確保

緊張する第1の理由は、「水が鼻から入って、気管を通り抜けるのではないか」というもので、初心者にバランスのとれた背浮きを教えるときによく目にする光景です。頭を持ち上げないようにすることが、バランスをとるのにとても重要ですが、これによって水面が鼻と口の周辺に極めて近くなります。また、息ができるところまで体を回転するかわりに、水を飲むのではないかという不安に駆られて頭を不意に持ち上げ、鼻と口を水から“安全”な距離まで移動しようとします。しかし、これによってバランスを崩し、不快感を増大することになってしまいます。

ここに、落ち着いて確実に息継ぎができるようになる、いくつかのシンプルなステップを紹介します。

1.写真でTIコーチのカリ・ラクリンがやっているように息継ぎの練習をします。ボールの中にぬるま湯を入れ(鏡があれば底に置く)、以下を行います。

  • 顎の先を水につけて、口から吸って鼻から息を吐きます。気持ちが落ち着くまで30秒以上繰り返します。
  • 次に、鼻と口をわずかに水面につけて、口角の小さなスペースで息を吸います。息を吐くときもおなじスペースから吐きます。息を吐くと水面がゆれ、鏡がぼやけます。約1分、ほぼ飽きるまで行います。
  • 今度はゴーグルを着けて、顔を水にすっぽりつけます。口は開けたままで息を吐かないでも、口の中にある空気の気圧で鼻や口から水が入り込まない様子を確認します。顔を上げて口から息を吸います。鼻や口の周りから水が滴り落ちている状態でもラクに息ができるのがわかります。これと同様にして、鼻の先がまだ水についている状態で、息を吸う練習もしてみましょう。
  • 上記と同様にしますが、今度は鼻からゆっくり空気を出します。鏡を見て、泡をなるべく小さく静かに出すようにします。泡を小さくすると、吐く息の量が減るので次に息を吸うまでの時間が長くなります。
  • 同じことを今度は口だけを使って(口から吸って、水中で口から少しずつ吐く)行います。

  • 鼻、口の両方とも落ち着いてできる様になったら、「リズミカルな息継ぎ」の練習です。顔を下げて空気を吐きながら、4拍のリズムで4か5まで数えます。(1−2−3−4、2−2−3−4、3−2−3−4、4−2−3−4)顔を上げて(1−2−3−4をカウントするあいだ)息を吸い、また顔を下げて繰り返します。さらには、口から息を吐くのと、鼻から息を吐くのを交互に行ってみます。鼻の先端がまだ水面についていて、口もまだ水面からほとんど上がっていない状態で息を吸えるようになるのが目標です。リラックスしてリズミカルになるまで繰り返します。

2.プールの浅瀬で最後のエクササイズをします。膝に手を当てるか、プールサイドにつかまって、吸った息を吐ききるまで水に顔をつけ、顔を上げて息を吸います。落ち着いてラクにできるようになるまで繰り返します。このリラックス効果が、息継ぎを気持ちよくコントロールして泳ぐのにとても役に立ちます。

3.上記のエクササイズを数分やって、顔をすばやく上下に動かす動作に進みます。髪の生え際まで、すばやく顔を下げ、常に息を吐いているようにして、徐々に深く長く顔を下げているようにします。さっと顔を上げて、水面が口元を過ぎたら速やかに息継ぎします。鼻や口の周りから水が滴り落ちている状態でも落ち着いて息ができるようにします。それから、またすぐに顔を下げます。

4.泳ぎを再開して、25メートルをゆっくり泳ぐことからはじめます。このときに、息継ぎを最優先して、泳ぎのスピード、ストローク・リズムを決めるようにします。4拍のリズムを使って息をすったり吐いたりするとよいでしょう。25メートルを泳いだ後の休憩として、何回か深呼吸をします。落ち着いてできるようになったら(深呼吸3回程度で次の25メートルが泳げるようになる)、今度は50メートル水泳に進みます。

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