クラス全員で、水中ビデオで撮った各自の泳ぎを見るというので、私はどっしりと構え、自信に満ちていました。さあ、私の番です。頭を上げ、プールの向こうを見ています。完璧な泳ぎ。しかし、インストラクターが、ビデオを一時停止しました。私の腰はどこ?全く信じられませんでした。他の人たちと同様に、私の腰は沈んでいました。数え切れない距離、年月の間、頭が上がっているために、体をバナナ状に曲げて、波を切って泳いでいたのです。
 「眉毛の位置に水面がくるように!」これが、若い競泳選手として何年もの間繰り返したマントラでした。そして、文字通り数え切れない距離の練習を重ね、この頭を上げた姿勢が体にしみ込んでいました。今まで水泳選手として、また現在トライアスロン選手としても、成績はまあまあで、自分の泳ぎに疑いを持った事はありませんでした。

 私たちは、最近トライアスロン選手を主に対象にした、マスターズのスイミング・グループを結成しました。多くは、素晴らしいサイクリストであり、マラソン選手ですが、中には、全く水泳の経験のない人もいます。長年の水泳の経験を買われて、彼らのコーチとして、従来のストロークをあらゆる角度から教えましたが、全く役に立ちません。トライアスロン選手たちは、私が今まで教えた競泳の選手と全く違って、足腰は、水面よりかなり下にあり、キックは激しく、疲労を伴うものでした。そこでコーチの方法を学ぶため、トータル・イマージョン・ティーチング・プロフェッショナル(TITP)コースに申し込みました。

 TITPになるに当たり、TIのウィークエンド・ワークショップに、まず生徒として、参加する必要がありました。クラス全員で、水中ビデオで撮った各自の泳ぎを見るというので、私はどっしりと構え、自信に満ちていました。さあ、私の番です。頭を上げ、プールの向こう際を見ています。完璧な泳ぎ。しかし、インストラクターが、ビデオを一時停止しました。私の腰はどこ?全く信じられませんでした。他の人たちと同様に、私の腰は沈んでいました。数え切れない距離、年月の間、頭が上がっているために、体をバナナ状に曲げて、波を切って泳いでいたのです。

 インストラクターはさらに付け加えます。「それから、アンが、反対側の手が頭を通り過ぎる前にストロークし始めているのがわかりますね。」最初の自信は、がたがたと崩れ落ちます。その時は、はっきり意識していませんでしたが、その瞬間から、私の古い水泳の模範は、新しいものへと道を譲り始めていました。

 ワークショップの後、6日間のTITPコースを受講しました。そこで私が学んだものは、スイマーとしての自分自身以上に、私のコーチする生徒たちにとって特に価値あるものでした。スイマーを今までとは違う目で眺め、全く違った方法で分析するようになっただけでなく、水泳がより上手になるために彼らを手助けする、私のアプローチの仕方も全く変わりました。以前はストロークの問題を部分的に直そうとしていましたが、TIには根本的に完治する道具があります。

パラダイムシフト1:テクニックが先、それから距離

テリー・ラクリンが「もがくのを練習してはいけない」と説明しているように、効率の良いスムーズなストロークを練習するに当たり、まずは、ストロークの技術をしっかり身につけて、それから距離を伸ばす事を考えます。

目標を高く持ったトライアスロン選手および元競泳選手は、距離を伸ばす事ばかりに根ざした練習に固執しがちです。実際にスマートな泳ぎや効率の良い泳ぎを経験するまでは、私にとってもなかなか受け入れ難いことでした。しかし今では技術を先に身につける必要性を痛切に感じています。

パラダイムシフト2:まず水の抵抗を減らし、それから推進力を考える

私のトライアスロン選手の生徒たちは、前のコーチに「足に向かってどのように水を掻くかを考えて、とにかく距離を泳ぐこと!」と教え込まれ、ストロークの腕の細かい角度をマスターすることに専念したようです。以前は私も同様に考えていましたが、今では、たとえばキャッチの手の角度を心配するのは、水の抵抗を避けるのに比べて取るに足らないことだと知っています。

水の抵抗といえば、良いストロークの基本である「滑るように水を後ろに押すこと」も、すべては体の姿勢に始まります。という訳で、今ではどんなスイマーを分析する際にも、まず観察する点は、手の掻きや足の蹴りではありません。その代わりに、自分に問いかけます。頭は隠れているか?ストローク前に腕は完全に伸びきっているか?全体の動きは繋がりがあり、優雅で、そして静かか?

バランスのドリル(背浮き、スィート・スポット、フィッシュ、スケーティング)は、これらの項目を完璧に表現し、スイマーに水との関わりを認識させます。

水の抵抗を減らす第2のステップは、水中でストリームラインの形をとることです。私が泳ぎを分析する際、テリーの言うように「空中を飛ぶ矢のように水中を動く」、すなわち、彼らが泳ぎながら、長くまっすぐなボディーラインで、リズミカルに体を回転しているかを見ます。私の所にやって来る多くのトライアスロン選手は、手足をばらばら動かして平たんに泳ぎます。実際には、首を回して、手を交互に体のセンターラインに入水しているのですが、体を回転させているつもりになっているのかもしれません。アンダースイッチドリルは、自然でシンプルな方法で、スイマーに体幹部の回転を身につけさせます。

パラダイムシフト3:「体を伸ばして泳ぐ」ことの重要性

長くストリームラインを保つことは、「体の前4分の1」のタイミングにすべて関わってきます。もう一方の手が入水する直前まで、「アンカーをかけた手」を我慢強く置いておきます。多くの人にとって、これは難しい観念です。「手の掻きをはじめるのを、先延ばしにして、いったいどうやって速く泳ぐの?」私の大学の専攻は、海洋工学で、海軍船や、船体の長さの詳細を学びました。船体の長さが長いほど、船が速くなるのは、明白な事実です。だから、クルーザーは細長く、タグ・ボートは短くどっしりとした形をしています。

同じ原理が水泳にも当てはまります。リカバリーの手が、外にある間に伸ばした手を引き始めるのは、のろくどっしりとしたタグ・ボートを意味し、伸ばした手を、リカバリーの手が入水するまでまっすぐにして、より細長い船体をキープするのが、クルーザーです。そして、さらにエネルギー調節の側面もあります。もし25ヤード(22.5メートル)を15秒そこそこで泳ぐのが目標だとすると、手をいくらでも速く?いてもいいのですが、800から1500メートルでの最も速い記録を目標とするなら、効率的な体幹部を回転させるストロークの方が、本能任せの手を速く掻くストロークよりも、最高のスピードをずっと長く維持することが出来ます。そして、これには、伸ばした手を「しっかり固定する(アンカーをかける)」ことが欠かせません。

アン・ウィルソンは、ご主人とアリゾナのフェニックスで、トライアスロンのコーチのビジネスを設立する以前は、海軍ヘリコプターのパイロット、および会社経営者でした。彼女はまたマスターズ・スイミング・プログラムを教えています。アンは、トライアスロンのコーチ兼選手で、TIに出会って今までになく水泳を楽しんでいます。
 ©Easy Swimming Corporation