以前より50メートルほど泳ぐと、ひどく息切れして疲れるのは自覚していましたが、１時間のセッションを数週間こなしたあとも、ほとんど進歩がなかったのにはがっかりしました。息も絶え絶えに100メートル泳げるようにはなりましたが、日頃からスポーツで体を鍛えている自分が、どうしてなかなか上手く泳げるようにならないのか、不思議でたまりませんでした。

　その回答を見つけるために水泳を続け、また、２冊の本を参考に練習を重ねましたが、全く進歩はありませんでした。その後、2003年にはじめてトータル・イマージョンの書籍を購入し、ようやくスイマーとして、着実に上達することができました。それだけではなく、生活にもちょっとした変化をもたらしたのです。

　日頃のランニングの成果もあって、最初のドリルは、驚くほど容易に達成することができました。その後、改訂版の書籍を手に入れ、さらに頭と手のポジションを使って、バランスを改善しました。TIのウェブサイトにある、ディスカッション・ボードに頻繁に参加して、世界中のTIを愛好するスイマーたちと意見交換したり、テリー・ラクリン、ボブ・ウィスケラ、ボブ・マカダムスそして、ジャニス・ヌーナンから、ウェブを通して、直接コーチしてもらう機会も得ました。また、”カンタン・クロール”のDVDを購入して、今まで読んできた事を、目で確かめることもできるようになりました。

　こうして2004年8月、ノース・カロライナで週末のワークショップに参加しました。コーチ陣は全員とても素晴らしく、自分では気がつかなかった細かい動きを修正、改善してもらいました。

　トータル・イマージョンの練習を重ねるにつれ、効率的な動きに集中することから練習のプロセス自体に興味を持つようになりました。トータル・イマージョンの練習では、まずこれまでの泳ぎを忘れさせ、バランス、姿勢、体幹の動きなど重要な技術を単純なドリルとして練習することで新たな泳ぎを作り上げます。またこれらのドリルの基礎となるのがバランスです。バランスが取れれば、水中で落ち着いて泳ぎをコントロールでき、水と調和できるようになります。

　そこでこのTIのようなプロセスを使って、未知なる挑戦としてギターの演奏ができないものかと考えるようになりました。私は様々なスタイルのギター演奏を聴くのが好きで、趣味で弾けるようになりたいと思っていました。私の息子のジェフは、ピアノとオルガン、また交響合唱曲のコーラス・トレーニングを経て、独学でギターを弾いています。彼はまた、マラソン選手でもあり、TIに関する“効率”の概念も理解してくれます。こうして、ギターを「音楽的側面」よりも「体を使う側面」から学んでみようと話し合いました。時期を同じくして、「音楽と水泳の合流」というタイトル記事がTIニュース・レターに掲載されました。著者のニック・バンドゥジーは音楽教師で、私と逆のコンセプトである、TIドリルを音楽学習のパターンを使って、身に付けようと提唱しました。彼は親切にも、電子メールで、ギター練習を是非始めるように薦めてくれました。

TI方式を取り入れたギター学習
　TIディスカッション・パネルで、「水泳と音楽」についてコメントしたとき、クリストファー・ケラーが、ジェイミー・アンドレアスの「ギターの正しい練習の手引き」を教えてくれました。こうして、ジェフと私は、TIフレーバーの効いたアンドレアスの本２冊とDVD2枚をクリスマスにオーダーしました。

　実際ＴＩで行っているプロセスは、水泳に限られたことではありません。崩す（邪魔になる癖を取り払う）プロセス、正しいバランス学習、そして、段階を踏んだ練習を積み上げること、などは、人生の様々な状況に当てはめることができます。「バランス」学習一つをとっても、いろいろな局面でとても大切です。

　現在私は「三匹の盲目ねずみ」という曲を、足で拍子をとりながら弾き語りができるようになり、体を使った側面から、ギター演奏をマスターできる自信を持ちました。ギターの「コードとリズム」学習におけるリズムの感覚と、ストローク全体を使った水泳のリズムの感覚が、同時に価値あるものだと思っています。