TIスイマー7つの習慣
 あなたがもし、平泳ぎのキックをカンタンにする「アヒルのような足」を持っていないのであれば、TIコーチのボブ・マカダムスが、キックをマスターするためのシンプルな練習方法を教えましょう。
 平泳ぎのキックは、膝を曲げて足を腰に近づける「リカバリー」、曲げた足を伸ばす「蹴り」、そして「伸び」、という3つのはっきりとしたフェーズから成り立っています。それぞれのフェーズについて、間違いやすい点と、幾つかの改善法を挙げてみます。

 まずリカバリーについて多くのスイマーがやってしまう間違いは、腿を下げてしまうことです。これは、カヤックを漕ぐ人がパドルを漕ぎ始める前に、ブレード(パドルの先の平たくなっている部分)を水中に入れたままパドルを前に動かすのと同じです。ブレードを前に動かすことは、ボートの推進力をひどく妨げます。したがって、足はできる限り自分の体の影に収まる範囲でリカバリーするのが好ましいでしょう。

 蹴りの時の間違いは、足を十分に外向きにしないことです。後ろに蹴る時に、両つま先が常に180度反対方向を向いている状態が理想といえます。しかしほとんどの人は、両つま先を180度になるように開いているのは難しく、これが、一般のスイマーと平泳ぎが生まれつき上手なスイマーとの差とも言えます。「生まれつき上手」でない場合は、少なくとも、つま先を外側に少しでも長く向けるように心がけてキックをして下さい。

 伸びの時の間違いは、伸びの最後のフィニッシュの時に、何となく足をそのままにしてしまうことです。足を後ろに蹴り終わったら、両足の間にたまった水を全部搾り出すように、両足をぎゅっと締めます。次に、つま先を揃えて足全体を一直線にします。これによって、わずかではありますがさらに推進力を得て、足は針のようなストリームラインになり、滑るように進みます。

以下は、上記の動きの各部分に焦点をあてた、幾つかのドリルです。

ドリル1 プールサイドに上半身を乗せるようにして、お腹と腰をぴったり壁につけた姿勢で、平泳ぎのキックを練習します。プールの壁があるため、腿は前に動く(水平の姿勢では腿が下がる)ことができなくなります。以下をフォーカルポイントとします。

  • リカバリーの際、膝をくっつけたままにします。それによって、ひざ下は腰の直径内に収まります。
  • リカバリーの際、腰に向かう時におこる足の抵抗を最小限にするために、つま先を伸ばします。
  • 後ろに蹴る時に、両つま先をできるだけ離します。
  • 蹴りが終わったら、両足をぎゅっと合わせて、足をストリームラインに伸ばして、更なる推進力をつくります。

ドリル2 仰向けで、平泳ぎのキックを練習します。仰向けでの練習の利点は、(a)息継ぎの心配がなく、(b) 膝が水面から出ないように気をつけることができます。そして、平泳ぎのスイムのときに腿が下がらないようにする効果があります。

 仰向けのキックの練習には、気をつけの姿勢とストリームラインの姿勢(手を進行方向に伸ばした状態)がありますが、気をつけの姿勢のときにはリカバリーの際に、手を腰の位置においてかかとで指先を触れるようにしてみます。またストリームラインの姿勢のときには、キックとキックの間は、両足を出来るだけストリームラインに伸ばして締め、滑るようにします。そして、できるだけ少ないキックで泳ぐように心がけます。さらに以下のことに意識してみましょう。

  • できるだけ力いっぱい壁を蹴って、最初のリカバリーの時には、推進力をなるべく失わないようにします。プールの底を見て、スピードを確認し、リカバリーの時に必要以上にスピードが落ちるのを防ぐようにします。
  • 蹴りの時に、両つま先をできるだけ離します。
  • 両足を揃えて、足全体でストリームラインをつくり、両足をぎゅっと押さえて、水中を切るように進む感覚をつかみます。

 スイムに戻るときには、上記で練習したキックをウェストを軸としたうねりの動きに合わせるようにします。かかとを引きはじめるタイミングと呼吸のために肩が上がり始めるタイミングは一緒です。そうしないとキックは水中を蹴らずに空中を蹴ってしまうことになるでしょう。

ボブ・マカダムスは、1999年2月にTIクロールのワークショップに参加して手応えを掴んで以来、TIディスカッション・ボードに熱心に参加するようになりました。また、2002年にはTIティーチング・プロフェッショナル・コースを修了しました。以降ボブは、TIキッズ・キャンプのコーチ、TIクロール・ワークショップのコーチ、そして、プライベートでTIコーチを務めています。ボブはまた、マスターズ・スイマーとして競泳にも参加し、自身の水泳の改善も図っています。
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