カンタン・息継ぎ
 サイクリングやマラソンの呼吸はとてもシンプルです。息を吸いたいときに吸えばよいのです。しかし水泳では、泳ぎながら呼吸するために息継ぎの技術が必要になります。息継ぎは初心者や初級の遠泳スイマーにとってはとても大切な技術です。息継ぎなくして人は長い距離を泳ぐことはできません。水泳をやるとすぐに疲れるという場合、体力の問題よりも息継ぎが正しくできない場合が往々にしてあります。
 特に初心者にとっては、息継ぎとバランスの改善が、ラクに、そしてきれいに泳ぐための二大障壁になります。水の中に顔をつけているときはどちらもあまり問題にならないのですが、やがて苦しくなって息継ぎをしようとすると状況は一変します。「泳ぎ」は「もがき」に変わり、スムーズで長いストロークが何分の一に短縮されてしまいます。しかし正しい息継ぎができれば、ストロークの邪魔をせず流れにのることができるだけでなく、推進力を増やすこともできます。

○息継ぎのポイント

 正しい息継ぎのポイントは、頭を動かすのではなく体全体を回すことです。このコラムを読みながら、次の実験をやってみましょう。

  1. ゆったりと座った状態で、首を正面から左右の肩の位置まで90度回します。頭は水平方向に回転するので目の高さは一定になります。首の筋肉に心地よい緊張感を覚えますか。
  2. 次に初心者が息継ぎするように、鼻を中心として顔全体をあごから回転させるように回してみてください。筋肉はさらに緊張し、不快感を伴います。このような間違った首の回転を左右、一時間に1000回以上も行ったとしたら、どんな人でも泳ぎのスタイルが間違いなく変形してしまいます。

 それでは従来のやり方ではなく、どのようにして息継ぎをしたらよいのでしょうか。ここで手早く息継ぎがカンタンにできるようになる5つの技術を紹介します。

1. 頭と体をまっすぐに。 体の回転を使って息継ぎができるようになる前に、頭頂部から足のかかとまでを軸として、スムーズに体を回転させる必要があります。そのために、長くまっすぐに体を伸ばすことが大切です。まずまっすぐ伸びている状態で頭を固定します。息継ぎをしていないときはプールの真下を見ます。レーザー光線が、頭の先からプールの壁にめがけて発射されていると想像してみて下さい。いつもそのライン上に頭があることを念頭におきます。

2. 丸太のように回転する。 頭と体をまっすぐにすることを学んだ後、次の練習をしてみてください。
1) 頭と体を伸ばした状態で立ち(レーザー光線のイメージを思い浮かべます)、右腕を頭に沿ってまっすぐ上に伸ばします。
2)上腕二頭筋を耳に押し付けて、あごも胸骨に沿ってまっすぐ一直線になるように(軍の左向け左をするように)左に90度体全体を回転します。
これが、クロールでの息継ぎの正しい動きのリハーサルです。回転する間も、頭と体が一直線上にあり、体が伸びてバランスの取れた状態であることがキーポイントです。回転の角度は、口で呼吸ができるところまで、十分に体を回す必要があります。実際口ではなく鼻から呼吸できるほどの位置に体を回転させることが目安といえます。

3. 回転する時も体を伸ばす。 長年にわたって身に付いた悪い息継ぎは、効率の良いストロークの学ぼうとするときに邪魔になります。例えばあごから頭を動かしたり、前を向いてしまうと伸ばした手が下がってしまいます。手が下がる動作は推進力に関係がなく、また水の抵抗を増やすので修正する必要があります。修正の方法はカンタンで、息継ぎをしている間は、水中で棒につかまるような感じで常に手を前方に伸ばしておきます。息継ぎが終わり、頭と体が下を向き始めてから手のかきを始めます。

4. リズミカルに。 ストロークのリズムは、体の回転のリズムでもあります。体を回転させて息継ぎをするので、息継ぎとストロークのリズムは同じになるはずです。初心者の多くは、息継ぎを長めにしようとして、横になった状態でほんの少し長くとどまりすぎるために、ストロークのリズムが狂ってしまいます。息継ぎに必要なだけ体を回転させた後、またすぐに体を戻し、回転のリズムを一定にします。ストロークを速くしたい時は、体の回転リズムを上げるので、それによって、息継ぎも速くなります。

5. 息を吐き出すことも大切。 肺に残った空気を吐き出すのも、とても重要なことの一つです。酸素不足になったような感覚は、体内の酸素が少なくなったから生じるのではなく、二酸化炭素が増加したために生じることは覚えておきましょう。なお空気と水の圧力が異なるので、水中では、空気中よりも意識して息を吐く必要があります。呼吸にかける時間の多くを、水中に息を吐くことに費やします。息継ぎ(吸気)が終わったらすぐに、息を吐き始めましょう。そして息を吐くうちの最後の20%は、口と鼻のまわりの水を取り除くことに集中します。

そして、もう一つ大切なことがあります。:

両側で息継ぎをすべきですか? ほぼすべてのスイマーが、同じ片側だけで息継ぎをすることを好みます。いつもと反対側で息継ぎをするのは、何か奇妙な感じです。片側だけで息継ぎをすることの問題点は、ストロークが左右対称で、調和のとれたものでなくなる傾向にあるからです。一時間の水泳で、1000回以上体を回転させるわけですが、体幹部の筋肉が一方だけに強く引っ張られることになります。これを何時間も積み重ねることは、アンバランスなストロークを体に焼き付けることになります。最良の改善法は、両側での息継ぎです。

両側での息継ぎには次のような方法があります。

  • 3回のストロークに1回息継ぎをするのが、もっともシンプルですが、毎回同じ方向で息継ぎをするのに比べて、ひとかきあたり3分の2の空気で力を出す必要があります。のんびりと泳いでいる時はこれでも構いませんが、スピードを上げるとなると、途端に息が切れます。
  • 私は、ゆっくり泳ぐ時には、ストローク3回に1回の息継ぎで、もっと長く、また速く泳ぐ時には、続くストロークで、同じ側の息継ぎを加えます。(反対側に変えて同じような数の息継ぎをする前に、2、3、または4回。)
  • 競泳の大会に出場するときには、行きに右側で毎回息継ぎをして、帰りは左側に変えたり、また湖などでのレースの際には、2かきで1回の息継ぎのペースで10回右側で息継ぎをしたあとに、息継ぎする側を変えて左側で10回同様に息継ぎをするようにしています。これで十分な酸素を取り込むことができます。8回から10回、慣れていない側で息継ぎをすることは、上記の5つの技術を集中して学ぶことにつながります。

 フィットネスを目的とした水泳を卒業して、プールでの競泳やトライアスロン、海や湖のレースなどに参加するときには特に、両側で同じように息継ぎができることがとても役に立つことを実感するでしょう。

 なおクロールの息継ぎについての練習方法は、カンタン・クロールDVDに詳しく説明されています。

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