動作を「言語化」することで正しく早く記憶する イージー・スイミング・ファウンダー 竹内慎司
2019年12月10日
どのように泳ぐか頭で理解して、ビデオを見たりレッスンに参加して正しい動かし方がわかったら、次のステップはその動きを記憶することです。記憶できなければ正しい動きを再現することができません。また記憶できないと旧来のクセが戻ってきます。
それでは正しい動作を記憶するためにはどうすればよいのでしょうか。その答えは「ライブラリ」と「言語化」です。
クロールには8つの姿勢や動作があります。逆に言えばこの8つを正しく行うだけで、クロールがラクにきれいに速く泳げるのです。
- グライド姿勢
- スイッチ姿勢
- リカバリー動作
- スイッチ動作
- キック動作
- 息継ぎ動作
- プル動作
- プッシュ動作
グライド姿勢→(リカバリー動作)→
スイッチ姿勢→(スイッチ動作:プル動作+プッシュ動作)→
逆グライド姿勢
そしてこれらの姿勢や動作を構成する、15種類の「部品」が存在します。
○部品を使った姿勢や動作の構成
例えばグライド姿勢を作るには「体幹による斜め姿勢」「わきの下を伸ばす」「肘を伸ばしたままにする」「胸で水を前に押す」「ひざを伸ばしたままにする」という5種類の部品を使います。
またスイッチ動作を作るには、「入水した肘を素早く伸ばす」「手首を締める」という水上の手の動きと、「固定した肘を曲げる(プル)」「肘を素早く伸ばす(プッシュ)」「手首を締める」という水中の手の動きと、「軸を意識した回転」という体幹の動きを組み合わせます。
一見ややこしそうですが、からだのある部位をどのように使うかということは、それぞれの姿勢や動作において同じ場合も多く、部品単位で見て組み合わせた方が、8つの姿勢や動作を早く憶えることができます。
この部品の総称を「ライブラリ」と呼んでいます。ライブラリは15種類の部品から成り、これら部品を組み合わせて8種類の姿勢や動作を再現するということです。
○ライブラリの言語化
からだの部位の使い方を憶えるのに、動きや状態を「内なる声」で表現します。カンタンに言えば、声を出して覚えるということです。
内なる声の種類は自分が覚えられるのであればなんでも良いです。
例えば肘を伸ばした状態を「肘~」と声を出して覚えるのです。
そしてグライド姿勢を作る度に「肘~」と声を出して、肘を伸ばした状態を再現します。
あるいは入水するときの手と水面の角度を「よんじゅうご~」と名付けて、手を入水する直前に「よんじゅうご~」と声を出します。
○オノマトペの活用
オノマトペとはフランス語で、擬態語・擬音語のことです。
漫画で動きを表現するときに使う言葉(文字)をイメージすればよいでしょう。
動きを表現するときにはこのオノマトペが適しています。例えば入水した肘を素早く伸ばすときに、「シュッ」という音に決めます。手を入水するたびに「シュッ」と声を出して、その声に合わせるように手を動かせば、手を素早く伸ばすことができます。
あるいはリカバリーの初動でわきを素早く開いて肘を前方に送るときに、「パカッ」にします。水中の手が水上に出る瞬間に「パカッ」と声を出せば、「わきを開く」「肘を前に送る」という2つの動作を一つの言葉で表現して記憶できるようになります。
○動作を組み合わせて言語化する
一つ一つの部品の動きについて正しく記憶できるようになったら、複数の動きを一つの言葉にしてまとめて覚えることができます。例えばスイッチ動作は入水する手、水中の手、体幹(さらにキック)の動きの組み合わせですが、それらを「スイッチー」として一つの言葉で言語化することができます。
こうすることで、スイッチ動作やリカバリー動作など、複数の部位を同時に意識しなければならない動きを正しく覚えることができるようになります。
○表の声から内なる声へ
からだの部位の状態や動きを言語化するときは、最初に必ず声に出して練ります。頭の中だけで練ると正しい状態や動きを表現することができません。声に出しながら、より適した言葉を探します。
泳ぐときやドリル練習でも、最初は水中で実際に声を出してみます。恥ずかしがってはいけません。誰も聞いていないので安心してください。声に出して水中で姿勢や動作を試すことで、記憶するのにかかる時間を短縮することができます。
声に出して確実にできるようになったら、心の中で声を出します。これを内なる声と呼びます。内なる声で姿勢や動作を再現できれば、あとは染み込むまで繰り返し練習するだけです。
運動ができる人は、意識的に、あるいは無意識でこのようなプロセスを行って動きを細分化して効率よく記憶しています。とても地味なプロセスですが、多くの方が成果を出していますのでぜひお試しください。
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