美クロのコツコツ:入水するまで水中の手を伸ばす イージー・スイミング・ファウンダー 竹内慎司

 2019年9月10日

美しいクロールを泳ぐために、身につけなければならない技術をご紹介します。
これらの技術は、知ったらすぐにできる「コツ」ではありません。意識をしながらコツコツと練習することで身につけることができます。

泳ぐときのスピードは常に変化します。
最も速くなるのは手で水を押した直後です。
その後は水の抵抗を受けて減速します。
この減速を抑えることで、平均速度を上げることができます。
減速を抑えるためには、2つの方法があります。

 a) 新たに加速する
 b) 水の抵抗を減らす

このうちb)の水の抵抗を減らす方が、よりラクに、効率良く泳ぐことができます。
それでは水の抵抗を減らすにはどうすればよいのでしょうか。

水の抵抗を減らすには、からだが斜めで手を伸ばした姿勢を、できるだけ長く保つのです。
船舶工学では、他の条件が一定であれば、「船の長さが長いほど、最高速度が大きくなる(船の速度は、船の長さの平方根に比例する)」というフルード則と呼ばれる法則があります。
この法則は水泳の世界でも当てはまります。船である自分の「長さ」を長くするには、手を伸ばした状態をできるだけ長く保ちます。具体的には、水上の手を入水するまで、水中の手を前に伸ばしたままにします。

この考え方だと、水中の手を前に伸ばしてから、水中の手をかいた方が抵抗が減らせるのではと思うかもしれません。
これを「キャッチアップ・クロール」と呼んでいます。
抵抗を減らして姿勢を安定させるという観点では、この方法で泳ぐことも理にかなっています。
ただし、以下の点において効率が悪くなります。

  • 手を入水して伸ばした時点でからだが平らになるので、斜め姿勢の切り替えに慣性が使えない。
  • 手で水をかく動作を単体で行うため、負担が大きい。

つまり抵抗は減りますが推進効率で見ると、キャッチアップ・クロールは両手を同時に動かすクロールよりも効率が悪いということになります。

水中で伸ばす手は、水上の手を入水する直前まで伸ばしたままにすることで、減速を抑えることができるだけでなく、両手を同時に動かして斜め姿勢を切り替えることで、推進効率を上げることができます。これが見た目の美しさにつながります。