水泳上達の法則:脳が手足に指令を出せれば上達する。 トータル・イマージョン代表 竹内慎司

 2019年8月10日

 水泳が上達するためには、何が必要でしょうか。
 一生懸命真面目に練習していれば、必ず上達するのでしょうか。
 これまでの練習経験や指導経験に基づいて、水泳上達の法則についてまとめました。
 自分に合った法則を選んで、実践してみましょう。
 上達することが実感できます。

 

脳が手足に指令を出せれば上達する。

姿勢や動作の正しい状態をイメージすることができても、手や足、からだに出す指令を作らないと手足はその通り動いてくれません。
指令があいまいだと、からだはこれまでの人生経験に基づいた動きに解釈してそれを実行します。

例えば「からだを回す」と指令した場合、これまでの人生経験では頭とからだを一緒に回すことしかないので、顔を固定してからだを回すという動作を「自然に」行うことができません。この場合、「からだを回す」という指令ではなく、「頭(または顔)を固定してからだを回す」という指令に変える必要があります。
ただ、この指令でも顔がからだと一緒に回ることがあります。そのような場合どうするのでしょうか。

答えは、「より詳細に指令を出す」です。からだを回す場合、

  • 頭を動かさずに、
  • 首の骨の○番目から下をゆるめて、
  • 肩を回すことでからだを回す

と具体的にするのです。首の骨の何番目をゆるめるかは、からだを固定して顔だけ横に向けるとわかります。顔を回すために使っている骨(あるいは周りの筋肉)がわかるので、それらを固定して、その下から緩めて肩を回すようにします。

またクロールで水中に手を入れて伸ばす場合はどうでしょうか。
「手を前に伸ばす」と指令を出すのが普通ですが、「前」の定義が甘い場合が多いのです。
手は5本の指があり、5つの方向が存在します。広い定義ではいずれも「前」となるので、手はどの方向に伸ばせばよいのか混乱します。
泳いでいて左右にぶれを感じるのであれば、「中指を進行方向と平行に伸ばす」と指令を出します。
また入水するときに手首を外側に曲げる傾向のある人は、「小指を進行方向と平行に伸ばす」と指令を出します。

手足やからだが誤解しない、正確な指令を出すためには、以下の点について決めます。

  • 指令の対象となる部位を決める(指/手/手首/肘/肩/首/頭/顔/胸/腰/腰骨/腿/膝/足首/かかと/爪先/肩甲骨/鎖骨)
  • 方向を決める(前/後/外側/内側/上/下)
  • 動作のスタート地点とゴール地点/姿勢を保つ位置を決める(からだの他の部位との相対的な場所/水面からの距離)
  • タイミングを決める(指令してから実行するまでの遅延も考慮する)
  • 動作の内容を決める(曲げる/伸ばす/ゆるめる/締める/回す/運ぶ/動かす)
  • 関連する動作を決める(同じ動きの中で複数の指令/異なる動きを同時に行う指令)

自分の思い通りに手足が動かないときは、これらの指示項目に欠けている点がないかを調べます。
またすでに指示済みの項目でも、具体的になっているか、数値で示せるかを検討します。
距離や時間は数値化できれば、指令通りに動く再現性が高くなります。