クロール改造計画:大山次郎さん トータル・イマージョン代表 竹内慎司

 2019年5月10日

スイマーの情報
氏名:大山次郎さん(仮名)
水泳の目的:トライアスロンをやりたい
現在の問題点:速く泳ぎたい

ビデオURL:https://tiswim.vids.io/videos/709dddb51110e3c7f8/

 

ビデオでわかるカイゼンポイント

○手でかく意識が強い
普通のクロールを泳いでいるように見えます。つまり、手でかく意識が強いということです。
手でかく意識が強いまま速く泳ごうとすると、

  • 手に力を入れる。
  • テンポを速くする。

をしようとして、長く続かないので速くならないのでしょう。
「手で水をかく」のではなく、「手で水を押さえてからだを前に出す支えにする」と考えれば、重心を前に移動するための動作に変わってラクに泳げます。またテンポを上げたり、1ストロークあたりの距離を延ばしたりすることもできるようになり、結果として速く泳げるようになります。

○水面を叩いている
写真1のように、入水する手は水面とほぼ平行で、水面を叩いて入水しています。
入水前に手を加速していますが、水面を叩くことで大きな抵抗となり、せっかくの勢いが削がれています。
入水する手は水面に対して角度をつけることで、入水の際のインパクトを最小にすることができます。
また肘の位置が高くなるので、位置エネルギーを運動エネルギーに変えて入水する手に勢いをつけることができます。

写真1

○グライド姿勢で下半身が下がっている
水中のグライド姿勢を見てみましょう。写真2のように、腰の位置が水面から10cm程度下になっています。
普通はこれで十分ですが、スピードアップを目指しているのであれば、余計な水の抵抗を減らす必要があります。
目標は腰が水面に達することです。そのためには、胸に体重をかける必要があります。頭や手に体重をかけると必要以上に沈むので気をつけましょう。胸に体重をかける技術が必要です。

写真2

グライド姿勢で肘が曲がっている
写真2では、グライド姿勢で肘が曲がっていることがわかります。
これから行う「手のかき動作」の準備をしているのでしょうが、肘が伸びていないと手を支えにして体重を前にかけることができなくなります。
肘を曲げ始めるのは反対の手を入水するときにして、それまでは肘を伸ばして手を支えに使います。

クロール改造計画
クロールを改造する手順は以下の通りです。

  1. より速く泳ぐために意識を変える
  2. 手や足に対して、具体的に指示するための「コマンド」を作る。
  3. 繰り返し練習して、コマンドを暗記する
  4. コマンドを実行することで効果が出ることを確認する。

○より速く泳ぐために意識を変える
速度を上げるということは、「平均速度を上げる」ことです。
「ピーク速度を上げる」ことではありません。
平均速度を上げるためには、「減速を抑える」ことと、「ピーク速度への到達時間を短くする」アプローチを採用します。
減速を抑えるためには、抵抗を減らすことが第一です。腰と足が水面に達するまで、胸に体重をかけます。
ピーク速度への到達時間を短くするためには、入水する手を水中で素早く伸ばします。水中の手は入水する手にタイミングを合わせて、入水する手が水中で伸びたときに、水中の手がももの前に達するようにします。

○「手でかいて足で蹴る」から「体重を乗せて滑る」へ
人間が歩くときに最初に行っているのは、足を前に出すことではありません。からだを前傾して重心を前に移動することです。
水中で移動するときも同じです。体重を前に乗せて、滑ることを基本にします。

○伸ばす手:支えにして胸に体重をかける
水中で手を伸ばすときには、進行方向ではなく斜め下にします。肩の位置から手を最低30度下げることで、背中がまっすぐになるだけでなく体重を前に乗せやすくなります。

水中で動かす手:支えにしてからだを前に送る
「かく」という言葉よりも、「てこにする」という言葉をイメージします。水中で手を動かすことで、水の抗力を感じます。その力を支えにして自分のからだを前に送ります。
水に当たる手の面積が大きいほど、水の抗力が大きくなってラクにからだを前に送ることができます。面積を増やすためには、手のひらと前腕を固定して、前腕を立てるように動かします。

○入水する手:自由落下の勢いを使う
入水するときの手の位置を、肘が耳の穴の前に来るようにして水面から45度の角度にします。こうすることで肘が高い位置に来るため、肘を自由落下させて向きを変えるだけで、入水する手の速度が上がります。

○ドライランドで動作を「暗記する」
上記のポイントをコマンドとして、陸上で練習して暗記します。脳が暗記しないと、からだはコマンドを実行することができません。暗記には繰り返し練習が近道です。陸上なら好きなだけ繰り返し練習できます。

○コマンドによる効果測定
これらのコマンドを使ったときに、ストローク数をどこまで減らすことができる測定します。
まず何も意識しないで泳いだときのストローク数を数えます。
次に1つのコマンドを意識しながらストローク数を減らすことができるか確認します。
複数のコマンドを使ってストローク数が3減らすことができれば、コマンドとして効果が出ていることになります。

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